366:EX-Sシナリオ『その恩恵は他が為に、その力は主の為に』Ⅱ
EX-Sシナリオ『その恩恵は他が為に、その力は主の為に』Ⅰの裏側。
扉の光に包まれて、気がついたら以前EXダンジョンに入った時みたいに中の空間にいた。
「いつものことだけどこの演出もう少し変わらないのかしら」
眩しいから少し変えてくれると個人的には嬉しいんだけど。まぁEXシナリオ自体限られた人にしか挑戦できないわけだし仕方ないといえば仕方ないか。
「うわぁすっげぇ・・・なにこれ?」
『ヨヨヨ!』
「キュルァ?」
そう言えば初めてだったわね。ルークがこの仕様のダンジョンに挑むのは。
「ルーク、一応ステータスの確認と装備の状況を確認しなさい。後それからアイテムとかも念入りに」
「わ・・・わかった!」
EXダンジョンもEXシナリオも仕様はすべて『エクストラモード』になっているし、他にも装備やアイテムが強制的に変えられていることもある。
アールの受け売りだけど。私の状態は・・・特に問題なし。装備に関しても特に問題なしね。
「アール。私は問題なかったけど、アールは?」
前にいて周辺を見回しているアールにも確認をする。多分今回EXシナリオになってるのはアールだから何かあるとすればアールが最も可能性が高い。
「・・・ナニコレ?」
そんなアールの両手足首には壊れた枷のようなものがつけられていた。鎖が音を立てているし少し邪魔そう。
「ねぇアール。説明にはなんて書いてるの?」
『随分と愉快な姿ではないか』
この犬、アールのこの格好を愉快そうで片付けるんじゃないわよ。
「とりあえずギルファーは黙っとれ。なぁリーク、お前ら・・・は・・・あれ?」
「ねぇアール? もしかして私アールのこと怒らせた? 謝るから無視しないでよぉ・・・」
謝るから許してよぉアール・・・ゅっ!!? 嘘どうして!!?
「リーク姉ちゃん僕は特に問題なかったy・・・っ!!?」
触ってるはずなのに感触がない!? いいや違う!? 触れない!?
『なんだ? あやつ等どこいった?』
「キュルァ?」
「いねぇよな・・・?」
『ヨヨヨヨ!!?(特別翻訳:嘘でしょ!!? ここにいるよ!!?)』
それからアールはフロアを隈無く歩いて私たちを探していた。目の前にいるのにアールには認識されていないの?
隣にいる狐はちゃんと認識しているのに、ディアとバンデは先ほどと変わらずアールノ頭の上にいる。それなのに気づかないなんてありえない。
「ちょっと師匠!! 冗談にしてもひどいよ!!?」
「いねぇな・・・マジで」
おちつけ私。アールに無視されたわけじゃなさそうだから落ち着きなさい。こういう時はアールの臭いと触感を思い出すのよ・・・よし。問題ないわ。回復できた。
「おいこらバカ師匠!! 泣くぞ!!? 無視されると僕泣くぞ!!?」
「ガキンチョステイ。そういう仕様なのよここ」
「え? 仕様?」
仕方ない。EXダンジョンに関して知ってる限りで説明してやるか。
――――◇――――
「うわぁ・・・鬼畜難易度じゃん・・・」
「それをクリアしたからとんでもないジョブ能力ゲットできたのよ」
知ってる限りの説明をすると、ルークはドン引きしていた。まぁそりゃそうでしょうね。タダですらきついエクストラモードなのに、更に追加で制約あるんだから。
「じゃぁ今回のバカ師匠についた条件は僕らのこと認識できないってこと?」
「他にもあるとは思うけど大きなことはそういうことでしょうね」
なんか昔あったわね。ケロローんな宇宙人が出てくる映画の三作品目で似たような現象になっていたの。あの時は自分以外だったと思うけど、それに似てるかも。
「じゃぁ僕らは僕らで攻略したほうがいいってこと?」
「そうとは言い切れないけど、そういう事になるとは思うわ」
『ヨヨヨ』
「キュルァ」
認識されていないならこっちも独自に動くしかない。アールの頭に乗っている二匹を私とルークそれぞれに載せ替えて今後の動きを確認している。
因みに私の上にはディア、ルークの上にはバンデが載っているわ。
『ヨッヨ!』
「あっ!! リーク姉ちゃん師匠先進むみたい!」
「っ・・・私たちも行くわよ」
「キュルァ!」
一緒に行く理由はないかもしれないけど、気持ち的に一緒にいたかったしいいでしょ。アールには認識されていないから死にたくなるほど運営を殺してやりたい気持ちになるけど我慢。
認識されない・・・見てもらえない・・・結構くるわねこの状態・・・持つかしら?
そんなこっちのことなんて知らぬ存ぜぬでギルファーと二人で歩いているつもりのアール。ぐぬぬ・・・今はギルファーが羨ましい。私と変わりなさいよ駄犬!
「リーク姉ちゃん荒れてるね・・・」
「キュルァ・・・」
「駄犬コロスダイヌソコカワレコノヤロウマジデイイカゲンニシナサイヨホントマジデ・・・」
『ギギギマママイイイイララララ』
「うるさいわよ!!」
いきなりなによ!!? こっちがムカついてるときに変な叫び声させてるのは!!?
「なんつう鳴き声だよ。雑すぎんだろ」
そんなアールの視線の先にいたのは気味の悪いモンスター。巨大な顔面に足を付けただけの雑なモンスター。とろくさそうだしホント邪魔。
『? どうしたアール? 顔が愉快なことになっているぞ?』
「あぁすまん。ちょっと思い出を食われた思い出を思い出した」
多分だけどこのまえリマスターされたゲームのこと考えてたんでしょうね。ネットでかなり荒れてたから私も少なからず知ってる。と言うかアールと昔一緒にやってたこともあるからね。
蘇生魔法のアーティファクト取るの大変だった記憶があるわ。
『??? まぁいい。あの程度なら貴様で十分だろう。さっさと殺ってこい』
「そこはお前がいけよ・・・いいけどよ」
『クォン!!』
『クゥーン・・・』
今元に戻ったらダメ犬に麻痺毒入りの物を食わせて苦しめることを決めたわ。アールは許したけど私の躾カウンターは絶対に今のを忘れないわよ。
『ギギギマママイイイイララララ!!!』
と言うかアールに相手させる必要ないわよね。私でも触れられさえすれば倒せそうだし。
「『ファイアボール』」
ステータス変わってなかったし初級魔法だけで十分でしょう。アールの前に出て適当に一発。あ、もしかしたら魔術なら認識してもらえるかも。
「・・・チィ!!」
「モンスターにも干渉できないんだね僕ら」
放った火球は雑なモンスターの身体をすり抜けてしまった。アールに火球すら認識されなかったし気落ちしそう。
でもアールならこの程度のモンスター相手に苦戦は「よtt《ジャラリッ!》はへ?」
『ギギギマママイイイイララララ!!!』
「ゴバァッ!!?」
アールの首に、雑なモンスターの角が突き刺さり、真っ赤な血の花を咲かせていた。
――――◇――――
目の前でアールが刺されて、気が付くとアールは泉の水面に浮かんでいた。
『何をやっているのだお前は・・・』
そういう犬達はアールの近くに泳いでいくと刺された首を心配するように鼻でさすっていた。私も触れられないけど、泉に入ってアールの首を見ては触れるように摩る。
「いやぁ・・・どうも今回は俺戦力外通告受けてるみたいだわ」
『は? つまらん冗談はやめろ』
本当にそうよ。今のだってきっと油断しただけなんだから。本当に勘弁してよ。
「いやいや本気。これ・・・お、やっと説明出てきた」
――――◇――――
特殊アイテム『他が為に捧げる御身』
・この装備は外すことができない。
・この装備は破壊できない。
・この装備を装備している場合、モンスターとの距離が一定以上に達した時、装備者は行動できなくなる。
・この装備は自分と従者一人を除き、他の人物のいる空間から次元がずれた場所に移動する。この効果は装備者と装備者に寄り添う従者以外でなければ確認できない。
――――◇――――
「ね・・・ねぇ。今の師匠の状態って・・・」
「戦闘行為全否定って感じ・・・かしら・・・」
装備者に戦いを禁じ、味方との連携も封じられた状態。それが今のアールだ。言うならば荷物。護衛対象といっても過言じゃないかもしれない。
幸いなのは戦いで無類の強さを持っている犬がアールのそばにいることかしら。犬が戦うならアールの安全は確保されたも同然だから。
その説明をアールがギルファーにしている。
『つまりだ。この洞窟を超えるには我がすべて貴様のかわりに戦えと?』
「んだんだ」
『・・・はぁぁぁぁ』
『・・・はぁぁぁぁ』
『クァン!』
『ワフ!』
『おい狐ども。やらんとは言っていないだろうが。しゃしゃり出てくるな』
『『クァン!!』』
『アール。今回は我がやってやる。だからそこの狐どもには手出しさせるな』
『『クァンクァン!!』』
「はいはいわかったよ。卯月、弥生。お前らは俺の直衛を頼むよ」
『『・・・クゥアーン』』
態度はアレだけど、この犬相当焦ってるわね。私にはわかる。目の前でアールを殺されて焦らないわけがない。照れ隠しだ。
そう言っとけばとりあえず面目は保たれるでしょうね。この犬アールの言うことには言葉とは裏腹にかなり忠実だからある意味忠犬よね。
狐ちゃんたちもアールが従者枠残ってたらアールの従者になってた子達だし、この先アールが殺されることはなくなるでしょうね。
――――◇――――
『ギギギマママイイイイララララ!!』
『失せろ俗物』
『ギマァァ!!?』
“よくもアールを殺したな貴様”と言わんばかりの攻撃でギルファーはモンスターを串刺しにしていた。狐‘sは口から火を吐いて燃やしてるし。
よくやったわ犬。これで躾カウンターを一つ取り除いてあげる。感謝しなさい。
「容赦ねぇな」
『雑魚に時間をかける趣味は我にはない』
『『クォーン!』』
死体蹴りで何度も何度も念入りに刺すのはポイント高いわ。もっとやってしまいなさい。
「うげぇぇ・・・ぐちゃぐちゃ音出てる・・・うげぇぇ・・・」
『ヨヨヨーヨ?』
「キュルァ?」
「うん・・・へーき・・・」
「慣れておきなさい。こっからのモンスターは全部こうなる定めよ」
今回だけはこの犬を信じて任せる以外にない。ちょっと悔しいけど仕方ないわね。
『行くぞ。まさかまだ動けんなどとは言わぬだろうな?』
「ん? いや問題ねぇわ」
アールってば結構考え事しながら歩いたりするからちょっと心配になるときって結構あるのよね。そこがまた好きなんだけど。
『ギギギマママイイイイララララァァァン!!』
あ、二匹目出てきた。ほら出番よ犬。さっさと串刺しにしなさい。
『しかしあれだな。この程度の雑魚とも戦えんお前を見るのは中々に愉快なものだ』
おいこら犬!! 何してるのよ!!? さっさと殺しなさいよ!! アールも呑気しないで早く指示出して!!
「うっせ。そういう仕様らしいからしかたな・・・」
『・・・どうした? 急に黙るっ!!?』
っっ!!!
「ア・・・・ガヘ・・・?」
『『クォアン!!?』』
――――◇――――
この短時間にアールが二回も泉送りにされたのは初めてじゃないかしら。
『おい、説明しろアール。何が起きた?』
「悪いけど俺にもさっぱりだ。何が起きたか全然わからん」
そう話す二人だけど、私たちからははっきりと見えていた。二匹目のモンスターの存在。けどアールたちにはそれが認識できていなかった。
『ちっ・・・少し気を抜きすぎたか』
「おいこら」
『お前に言ったのではない。我に対していたのだ。気にするな』
えぇ、そうね。私もその意見には同意するわ。気を抜きすぎた。
「あ・・・そう・・・でもあんまり気にすんなよ? 流石に何か居たら俺だって気づく」
『わかっている。我の気持ちの問題だ。気にするな』
うん。アールが認識出来る範囲のモンスターなら問題ない。けど、アールが認識できないモンスターの存在が、私たちには認識できた。
「ルーク、やることはわかったわね?」
「うん。理解したよ」
今更だけど、アールの死で私たちも初期エリアに戻されている。つまりこのダンジョンクリアのためにはアールにゴール地点に無事到達してもらう必要があるのよ。
そのためには表と裏からアールを守り進むしかない。裏側を知らないアールを全力で守る。それが今回私たちの役目だ。
『ヨヨヨ!!』
「キュルァ!!」
二匹ともやる気は十分みたい。
「やるわよアンタ達。私のアールはこの先絶対傷つけさせたりするもんですか・・・!!!」
アールとギルファーが認識できない場所からの暗殺。こればっかりはどうしようもないのです。
次回からリークたちも本格的に戦います。




