345:闇龍の眷属 Ⅴ
タコ戦そろそろラストスパートです。
「ドララァ!!!」
「いい加減に死ねっ!! 『クリティカルピアーズ』!」
マー坊の豪快な一撃とレイレイの急所を狙う一撃がタコを貫き引き裂いた。依然タコの動きに変化はない。しかし先ほどの『オクトリアスポイズン』が切り札だったのか、それ以上にやばい毒攻撃は繰り出されなかった。
それでも多種多様な毒攻撃は行ってきたが、既に俺の血がその全ての抗体を獲得し、更に解毒アイテムを生成可能であること、ソレをフィールドに拡散することができるリークの魔術によって実質無効化。
バフとデバフ、更に味方支援に妨害工作など、戦い方を徐々に把握してきた俺たちの動きも安定化してきた。だからといって慢心すると痛い目にあうのはわかりきっているので全力だ。
「マー坊交代だ!! 休みな!!」
「メス猫! 変わってやるからありがたく思いなさい!!」
「小弟子。お前も下がれ。余が前に出る」
「コヨミ、選手交代じゃ!」
このあたりで一旦前衛と後衛を入れ替える。隠れステータスでスタミナが存在しているこのゲーム。当然スタミナが減れば与えるダメージの量も減るし、動きも僅かに落ちていく。
前衛メインの連中は基本スタミナが多く、簡単にはへばらないが、それでも永遠に戦えるわけじゃない。だから基本プラクロの戦闘は20分以内の短期決戦が基本となっている。
だが、レイドモンスター系は基本的に超体力、あるいは超再生能力などを持ち、弱点を的確に付かなければ短期決戦にはならない。特に初回戦闘ではそうなることが多い。
故に、人数にある程度余裕が有るクランはそうなることを視野に入れて、前衛のスタミナ管理なども考慮し、パーティーを組むらしい。人数が少ないところは全力投球一択だ。
だが、クラン『剣星』は全員が前衛で、俺とリークは支援と後衛も兼ね備え、レイレイは斥候から遊撃まで器用にこなす万能アタッカー。マー坊も今は知らんが、真化前には支援も出来る器用なジョブ持ち。
「五分稼ぐからアイテム使って回復済ませな!!」
「頼むぜアール!!」
しかも俺含め全員高レベルで戦闘可能とくれば一人で数人分の働きが出来るわけだ。つまり、後衛が前衛になって、メインアタッカー連中のスタミナ回復までの時間を稼げる。わかりやすく言えば超会心痛撃攻撃見切り広域早飲み納刀術を全てMAXで備えたハ〇ターみたいなもんだ。
「ギルファーとジェクスはそのまま頭を食いつぶしててくれ!!」
『このクソタコ風情が・・・硬いぞ!!』
『けどこの味が癖になりそうッス・・・!!!』
例外としてギルファーとジェクスがいる。こいつらは本当にタフなのでまだ戦えるだろう。んでもって今二匹には回復と妨害を司ると思われる頭を食いつぶし、押さえ込んでもらっている。
しかも無限再生(仮)なので、ついでに餌やり的な意味合いも兼ねていたりする。普通なら振り払って終わりになるんだが、そこはギルファーとジェクスのクロニクルモンスター。迫る足を鋼剣で切り落とし、自分に触れた瞬間、その傷をタコに押し付けて自分はほぼ無傷。
その二つを押さえ込まれているせいでタコは俺たちへの対応が万全にできない状態だ。ザマァ。
「先手貰うよ。『ブラッドホールメガスロート』!」
リークの広範囲魔術による一撃がタコの足元から襲いかかる。地面より現れた牙がタコの身体に牙を突きたて飲み込もうとする。タコは当然暴れてその牙を次々と破壊していく。
こっちに目を向けないでいいと思ってんのかよクソタコ!
「剣聖流派十二宮抜刀術『風瓶十二閃:天津激翔』」
「剣聖流派極星十二宮抜刀術『天瓶:激翔雀』」
同時に踏み込んだ俺とマリアーデ。マリアーデが駆け抜け、足を止めた場所めがけて俺も着地する。僅かに鳴り響く納刀音を除き、全ての音が、タコの動きと共に静まり返る。
「ふん、ちと硬くなったがその程度だったか。これなら余と愛弟子で蹂躙でも良かったかもしれぬな」
「サラッと極星使ってその涼しそうな顔はスゲェわ」
マリアーデがサラッと使った『天瓶:激翔雀』だが、『天津雀:激翔』に、極星十二宮奥義『天瓶エリシオン』を組み合わせた奥義。俺でもまだ、しかもスキルの効果で一日一回使えるだけの極星奥義を容易く織り交ぜるあたり、超えるべき壁の大きさを感じる。
いつか絶対越してやるけどな。
「血の牙に飲まれて消えろ!!『ブラッドホールファング』!!」
「オマケじゃ持っていけ!! 『初月雀』!!」
『GKYOOOOO!!!!?!』
タコが動き出す前にリークの一撃が発動し、その身に牙を突き立て、ギンの放った斬撃が足を切り裂く。次の瞬間、牙と斬撃による一撃がトリガーに変わり、斬られたことを認知していなかったその身体が、斬られたことを理解して崩壊する。
切り裂かれた部位は魔術によって生まれた黒く赤い牙により噛み砕かれて消滅していく。俺とマリアーデは身を翻し、再度タコへ駆け出し未だ残る身体を切り裂いていく。
リークは中距離での攻撃を継続し、タコの足が迫った時には携えた刀を抜き、的確に捌き、ギンが根元から足を切り落とす。俺とマリアーデは半分鉱物となった足を次々と切り落としていく。
当然のように再生するのだが、リークによる魔術が今だ効力を残しており、再生速度は通常よりも遅い。更に再生部分は他よりも肉質が柔らかく、斬り易いので新しい弱点部位となる。
「愛弟子、伏せよ『初月雀:激翔』」
通常の『初月雀』よりも早く、鋭い斬撃は身を屈めた俺の上を通過し、深々とタコの身体を切り裂いた。傷口はまるで鳥のが激しく羽ばたいた後の地面の様に広がっている。
今更だけど、これこそマリアーデが得意とする剣の形『激翔』だ。広範囲に浅い一撃を刻み込みつつ、その中で一点のみより深く、より鋭利に傷を刻み込む剣術。
一撃でもモロに受ければ一瞬でマリアーデのペースに飲まれ、気づいた時には死んでいるなんてザラにあった。『魔剣聖ルート』では本当にめちゃくちゃ強いんだよなマリアーデ。下手すると邪神より強いんじゃないかって思ったくらいだし。
そのめちゃくちゃ強い状態のマリアーデがこうして味方になる『アフターストーリー』、ひいては今の『プラクロ』ってめちゃくちゃ高待遇なのでは?
「回避できなかったらどうすんだよマリアーデ」
「とかいいつつちゃんと回避した上に、師匠も一発タコに入れとるではないか!」
ギンが言うように、斬撃が俺を通り越したのを確認してから『コンゴウ』でタコの体をなぎ払うように切り裂いた。おかげで体中タコの体液でビチャビチャだ。
だがそこはリーク。すぐに浄化系の魔術で地面の肉片ともどもタコから出た物を消滅させる。
「アール待たせた!! 回復完了だ!! あとは俺たちが引き受ける!」
「女狐も下がりなさい! 手が滑ってアンタを殺すわよ!」
「師匠!! ありがとう!!」
「発情ギン子も交代です。アール君の護衛任せますからね?」
「ルーク以外全員サラッとフラグ立てるのやめろや!!」
発言が完全に『ここはいいから先に行け』感半端ないのやめてくれないかな!!? 運営ってそういうの聞くとハッスルする人ばっかりだからここからさらに難易度上げてくるかもしれんぞ!?
そう言いつつ、俺たちは素直に後ろに下がる。既に発情ギン子(今の状態ではそうとしか言いようがない為否定できない)呼びが定着しつつあるギンも、不満タラタラで俺とリークの直衛に戻る。
当然のようにマリアーデも俺の近くに身を置きいつでも動けるようにスタンバイしている。
「あっやば・・・アールごめんMP回復のアイテム分けて。切れちゃった」
「あいよ。闇龍戦の余力残ってるか?」
「それは平気。けどやっぱり星術はMP消費大きいね。一発分が普通の魔術三発分だもん。しかも『MP節約』とかの軽減系スキルも効果無いみたいだし」
ポーチから取り出したMP回復のポーションを受け取ると、豪快に飲み干すリーク。かなり連続して使ってたし当然といえば当然だ。スキルでMP自動回復がある状態でこうしてアイテムに頼る所を見るとその消費量がよくわかる。
「無理はするなよ? 『星読み』開始、『流星』の雨よ。我らに降り注げ」
対して俺の『星読み人』のスキルはMP消費がそこまで大きくない。初級と中級の間くらいの消費量なのでMP自動回復スキルで十分に補える。『星の錬金術師』の方も、MPよりも集中力が必要なのでそちらに関しても問題なし。
ルークに重点をおいてバフを付与しつつ、タコの動きを観察する。大体視えたけど、観察するのは大事だ。どこを起点として動いているかわかるだけで、次の動きを予測することが容易になる。
「そこだぁ!!」
それが出来るようになると、今のルークのように、少し動きを見ただけで攻撃を回避できるようになる。わずかに動いた足から動きを予測し、それを踏まえてカウンター型の『神斬雲雀』を叩き込んでいく。
しかもさっきよりも動きがスムーズだ。少し休憩して集中力戻ってきたか。そいつは結構だ。
『GKYOOOOOOGOOOOOOO・・・・・・!!』
――――◇――――
・『オクタアムスデキム』を撃破しました。
・生存者:時代人『アール』『リーク』『レイレイ』『俺はマー坊』『ルーク』
・生存者:従者『銀狐族のギン』『剣豪コヨミ』『鋼牙狼ギルファー』『ディア』『鎧翼鳥ジェクス』
・生存者:NPC『四代目剣聖マリアーデ』
――――◇――――
・黒の巨塔特殊階層『闇龍階層』ボス一覧
・『オクタアムスデキム』:撃破
・『闇龍の眷属達』:戦闘中(マスクドライバークリムゾンGX他)
・『闇龍』:待機
――――◇――――
・『オクタアムスデキム』戦:各種MVP
・最多攻撃回数:『剣豪コヨミ』
・ダメージ総数:『俺はマー坊』
・ラストアタック:『ルーク』
・ステータス変動:『リーク』
・アイテム使用数:『レイレイ』
――――◇――――
・『オクタアムスデキム』を撃破しました。
・レベルアップ!:アールは『レベル75』になりました。
・UtSレベルアップ!:『UtS:天刻Lv3』になりました。
・報酬:『闇蛸の足』『闇蛸の嘴』『闇蛸の毒素』『闇蛸の肉』『闇蛸の半鋼肉』を入手しました。
・賞金:380000Dを獲得しました。
――――◇――――
ラストアタック持っていったなルーク。あと『UtS:天刻Lv3』に上がったし、レベルも70から75まで一気に上がったな。
他にも各種MVPとか、おそらくこのダンジョン特有の評価も出ていた。名前がなかったのはちょっと悔しいけどそういう時もある。
「ししししししょう!?!??! どどどどどうしようぼくぅxちゅ!?!」
とりあえず熱暴走起こしかけてるルークを落ち着かせてから先に進むとしよう。
トドメは我らが初代可愛い系男子ルークでした。本人もまさかラストアタック取れると思ってなかったためかなり動揺しています。
可愛い。
感想と、評価、あとルークに対する愛をくれると嬉しいです。よろしくお願いしますm(_ _)m




