343:闇龍の眷属 Ⅲ
クラン総員戦闘可能状態へ
「なんだお前らもう動けるのか? 案外回復早かったな」
「えぇ、ちょっと腑抜けが過ぎてごめんなさいアール君。だからここからは私たちが前に出てもいいですか?」
そう言いながら、俺が答える前に俺とマリアーデの前に立つコヨミ達。ダメといっても戦うつもりだろお前ら。
「どうする愛弟子? 余は愛弟子が休めるのならば此奴らに任せてもいいと思うが?」
「というか殺らせて? 流石に苦手でキモいからって腑抜けすぎて自己嫌悪すごいの。アール、ダメ?」
静かな怒りを浮かべて、可愛らしくリークが俺に問いかける。
「何かあれば手出しするから好きにしな」
「うん。そうするね」
「弱点みっけ。あの少し大きな頭の右3mの部分に核がある。それが一つ。後は頭の中央から下に6m31cm下に血管みたいなのがの集まってるからそこが心臓。優先度は頭」
「なら速攻頭をぶっ潰してやる。ルーク、お前はその後動けや」
「わかったよゴリラさん」
殺る気満々だ。多分止めようとしても止まらないだろう。殺意しか感じない。人間やっぱり嫌いなもの苦手なものはそう簡単に克服できないからな。特に不快感は拭うことは無理だ。
だからこそ、それが無くなったらその鬱憤が一気に爆発するもんだよな。今のリーク達はまさにそれだ。
「ギン。お前は俺たちの直衛頼むぞ」
「そのつもりじゃ。師匠に手を出せるとは思わんことじゃ」
『KYOOOOOOO!!!!!』
同時に怒りの叫びを上げるタコ。叫びに合わせて第二ラウンドの火蓋が切られた。
「怒り狂ってるのはこっちなんだよ糞が!!!」
『GKYOOOOOO!!?!?!』
マー坊が上から振り下ろした方天戟。何もない真正面に振り下ろしたはずのそれは、巨大な一撃となり、目をつけていた回復する頭を一撃で、風船でも割るように吹き飛ばした。
それだけに終わらず、更にもう一撃、上から振り下ろし、隣の中途半端に甲冑化した頭も同様に吹き飛ばす。
だがまだしぶとくタコは吹き飛んだ頭を再生していく。起点となっているだけで、再生自体は体さえ残っていれば可能ってことか。厄介だな。
「もうお前を私は生かさない」
再び放たれるリークのジョブ『星術師』の魔術と思われるそれは、地面から再び光の柱を呼び出し、タコの体を貫いた。柱はそのまま宇宙へを上り、うお座を作り出していた。
「『アル・レーヴァテイン』の効果は状態の固定。私が許可しない回復・再生・形状変化はこれ以上出来ないと思いなさい」
なにその超性能。回復無力化って強くない? さっきのからくりはこれか。再生が止まったタコは中途半端に再生したせいで余計な傷を生むことになりもがくように悲鳴を上げる。その間にもマー坊の攻撃は次々と襲いかかる。レイレイも傷口に塩でも塗るかのように、毒を撒き散らし、タコの体を蝕んでいく。
地味ながらも活躍しているのはルークだ。レイレイが腐食させた部位から次々と切り裂いていき傷を着実に増やしていく。タコも反撃するのだが、レイピアのように鋭くなった足はコヨミにより全て捌かれ、ルークを仕留めること叶わず。
ならばとレイレイを狙うのだが、その速度を捉えきれず、逆に的となってしまう。
「『星読み』開始『流星』の光よ集え」
空間が流星の視える星空に変わり、光がリークたちの元に降り注ぐ。ステータス値がランダムで三項目上昇し、更にこの戦い限定で特殊状態付与。今回は『攻撃力+Ω』『HP回復Ω』か。効果はえっと・・・なにこれ? 『俺のステータス攻撃力分+:持続時間45秒』『毎秒2000回復:持続時間30秒』ってやばない? 実質HP全回復やん。
「『星読み人』とやらの力か」
「そ。時代人に許された力ってやつだ。援護任されたんだ。使ってもいいだろ?」
「余は構わんさ。こうして動かずに愛弟子が休めるのならばな」
それにしてもマー坊の無双乱舞具合がやばいな。怯みスタン無効は卑怯だよな。しかも今回はヒーラーであるリークによる援護もある上に、俺がバフかけてるから更に凶悪度は増している。
二発目撃っとこ。今度はなんだ?『命中率×1,2倍化:持続時間120秒』『MP上限+100:戦闘中永続』。地味だけど強いの来たな。クリティカルアタッカー大歓喜だなこれ。
「ナイスだアール!!」
「おう、頑張れー」
マー坊大歓喜だった。素で攻撃力クソ高いのにクリまで乗ったらそりゃ馬火力だわな。何だろう。久しぶりに『プラクロ』感味わってる。とか思ってたらタコめ余裕が出来たのか、こっちに足を伸ばしてきたぜ。突き刺す気満々な動きだ。
「ギン」
「妾の抜刀、俗物如きに見切れるものなら見切ってみせよ! 『天照都燕』!!」
俺の前に立ち、迫る足を峰打ちでへし折ったギンの抜刀術。『天津雀』の峰打ち版というのがしっくりくる『天照都燕』。ギンも強くなったもんだ。
軟体動物にへし折るといってもピンと来ないかもしれないが、あいにくこのタコはその軟体を捨てて、現在は骨のような芯が通っている。基本的には血が嫌いなギンでも、切らずにへし折れるというわけだ。
「コヨミ!! もっと注意を惹きつけぬか!! こっちにまで攻撃が来るではないか!!」
「寧ろそれくらい対処してくださいよギン。アール君守るんでしょ?」
「それは当然じゃ! しかし妾たちの方へ寄せ付けんくらいの気合をいr『GYOOOOOO!!!!』
「「うるさい (のじゃ)!!!」」
哀れタコ。ふたりの会話を邪魔したせいで、見事に足をへし折られ切り飛ばされテーラ。ギンに関してはへし折った足を蹴飛ばしている。
「状態更新だよ『星術:天地星『アル・レーヴァテイン』』」
再生能力を封じているというのに、更に現状が最良の状態であると上書きを加えるリーク。星術師のスキルえげつねぇな。
基本的に星術師のジョブスキルは攻撃系ではなくステータスに何かしらの影響を与えるデバッファーよりなんだな。俺としては、攻撃手段は自前のがあるからその方がありがたい。
「アール、ちょっと手を貸して欲しいんだけど、あのタコモドキのステータス弄れるよね?」
リークがいつの間にか隣に来ていた。それはいいけどタコのステータスいじれるかどうかか。
「対象とって発動するのが『星読み』だから出来ないことはないが?」
「どのくらい上がるか覚えてる?」
どれくらいか。毎回ランダムだけど俺の今のステータスが大体平均して200ちょいあるからそこに最低値25%だとして。
「大体一つ50くらいだな」
「50ね。結構上がるのね。うん。じゃぁお願い出来る?
「りょーかい。『星読み』開始。我敵に降り注げ」
タコを対象にして発動したのはステータスランダム上昇の効果がある『星読み』。さて何が上がったかな?
珍しい。攻撃力が二重で上がってる。あとオマケみたいに防御力も上がってるじゃん。
「おいこらアール!! 何タコにバフかけてんだこら!!」
「ちょいやりたいことあるんだってよ! リーク、運良く攻撃力に二回乗ったから100以上いったっぽい」
「ホント? ラッキーさすが私のアール! 愛してる!」
「こら女狐!! イチャつく暇あるならデバフ撒きなさいよ!!」
「今やるわよ!! そいつの攻撃力0にしてやるから感謝しなさいアンタ達!!」
は? 攻撃力0にするの? マジで? というかできるのそんなこと?
「始まりは炎、終は虚無。汝の力は空へ降る!!『星術『火天星:アウストラリス』』!!」
『KGYOOOOOOOOO!!?』
よくわからん雄叫びをあげて、突如として体を硬直させたタコ。その身体からは赤く燃え上がる炎のような光が出現していた。次の瞬間。炎は空へと登る柱となり、タコの体から完全に消失していた。
その炎は空の先でいて座を描いていた。
「星術『火天星:アウストラリス』はどれかのステータス数値が通常状態から合計数値200以上変化してる場合にだけ発動できる星術。効果はその数値を+1000するか、0にするかのどちらか。アールが攻撃力を100あげてくれたから、私が下げた数値も含めて200以上変化したの。だから条件クリアよ」
「おぉっ!! スゲェぞアール!! 攻撃受けてもダメージ0だ!! アハハ!!これはもう蹂躙だぜ!!!」
「よっしゃぁ!!! 攻撃力0ならダメージ気にしないでこいつを切れる!!」
「じゃぁ私も攻撃に回りますね。ルーク、油断しないように」
「チッ! 悔しいけどやるじゃないの女狐!!」
えげつねぇ・・・攻撃力0にするとかマジだったのかよ。見てみ? さっきまでコヨミが守っていたからダメージ0だったって言うのもあるけど、ルークに攻撃当たってるのにHP減ってねぇみたいにピンピンしてるぜ。
このタコなら一撃でルーク仕留める攻撃力持っているのが当たり前っぽいのに。
「永続で0だから全員全力でやりなさい!!」
これ負ける要素逆になくない?
「なぁリーク。その効果強すぎないか?」
「強いよ? けどEXジョブでの変動っていう条件あるよ? 『星術師』のバフデバフ一回でも、精々±5が限度だから結構大変なんだよ。リキャスト時間もあるしMP管理もあるから簡単には行かないよ。多分EXジョブは他のEXジョブとの共闘か、全部習得して始めて最大限の力を発揮するんだと思う」
あぁ、なるほど。それなら納得かも。『星読み』だってランダムだし、『エクストラモード』だとステータスってあんまり戦闘面で機能してないからあげないしで、そういう数値を参照することは滅多に無い。
無論『AS』『UtS』にはステータス値を参照にするものがあるし、全く上げないわけじゃないけど、優先度は低い。って考えればランダムとは言えどれか一項目平均値50上昇出来る『星読み』はそれだけで相性が良いことになる。
いずれ俺も『星術師』取るし、装備も少し見直すべきか? でもこの装備かなり気に入ってるんだよな。
「という訳でアール。次は防御力0にしてやろう? 手伝ってくれる?」
「お前本当に容赦ないな」
「どうせあのタコHP一億とかあっても不思議じゃないじゃん。やれることはやんないと」
「それは同意する。おいお前ら!! 俺とリークで全ステータス0にするからそれまでこっちに攻撃寄せ付けんな!!」
「「「「「了解 (じゃ)!!」」」」」
あくまでも特異個体に劣らない強さであって同様の強さではありません。それに世間一般的な感想ですしアレ。




