330:老人とサブシナリオ
問題、何が起こるでしょうか?
「お兄さん。アンタはきっと他のやつとは違うね。普通よりもずっと強い。そんな気がするよ」
老人、声からして男性だろう。俺たちが前に来ると、老人男性は俺に向かってそういった。普通よりも強いってことはUtSか? それともEXジョブか?
「まぁな」
どちらにしても否定する理由もなかった。隠してるわけじゃないし。
「それにお兄さんひとりじゃない。お兄さんに付き従う奴がいるね。それもかなりの実力だ」
ギルファーとディアのことだろう。従者という意味ならこの二匹だ。そうじゃないにとしたらイドル、クレイ、ヴェノの三人。武器に宿る意思モンスターとでも言えばいいのか?
《《アタシを忘れるんじゃないわよ!!》》
忘れてないから。ズイカクはモンスターじゃなくて武器そのものでしょ?
「確かに従えてるが・・・よくわかったな」
「これでも長生きしとるからね。そういう者は見れば分かるのさ。そんなアンタにいい物があるんだよ」
「いいもの?」
老人はポケットに手を入れると、何かを取り出した。ルークも興味津々らしく、老人の手元に視線を向けていた。
「これは儂が昔見つけた不思議なペンダントでね。今のところ誰にも売ったことがない。だがお前さんになら売ってもいいと思えたんだよ」
なんだ急に。セールスにしたって下手すぎる。けど、そう言われて嫌な気はしないよな。俺になら売ってもいいとか言われたらなおさら。
紐だけは見えるのに、肝心のペンダント本体は手を握ったままで見せてくれない老人。随分と焦らすなぁ。
「お爺さん早く見せて! 気になるよ!」
「ダメだね。見せてそのまま持ち逃げされちゃたまらないからね」
見せてきたのはアンタだろ。とか言いたくなったがグッと我慢。マリアーデは気に入らないらしく顔をしかめていた。聞いたルークも『はぁ!!?』と言いそうな雰囲気だ。
「・・・わかった。買うよ。いくらだ?」
ここまでされると気になって仕方がない。ゴミアイテムならそれはそれでいいし、何かのイベントのキーアイテムになるならラッキーだ。
「そうだね。100万Dでどうだい?」
「高っ!? お爺さん師匠にモノ売ろうとしてそれはひどくない!?」
ルークありがとう。まさにそう思う。桁がおかしい。モノ売るつもりがないとしか思えない。完全に詐欺だろ。
「言っただろう。これは今まで誰にも売るつもりが無かったんだ。それを売るんだこれくらいの値段は付けるさね」
「この糞ジジイめが・・・愛弟子、行くぞ。どうせ詐欺だ」
「・・・マー坊、いくらある?」
「えっとちょい待てよ・・・今の手持ちは62万だ。ほらよ」
「僕12万あるよ。はい師匠」
――――◇――――
『俺はマー坊』より『620000D』が譲渡されました。
『ルーク』より『120000D』が譲渡されました。
――――◇――――
すべてを言う前に二人は特に何も言わずに所持金を譲渡してくれた。本当に助かる。今度絶対返すから、ちょっと借りとく。
「ありがとよ二人共。今度返す。んで俺が24万だから・・・二万足りねぇ・・・なぁ師匠」
「・・・ハァ、仕方ない。ほれ」
そう言ってマリアーデ
「まったく、その代わりどのようなものでも大声を出して後悔するでないぞ?」
――――◇――――
NPC『マリアーデ』より『20000D』が譲渡されました。
――――◇――――
所持金:1,009,657D
――――◇――――
『所持金:1,000,000D』を老人に差し出しました。
――――◇――――
よし、これで100万Dだ。ありがとう三人とも。本当にありがとう。
「じいさん。これでいいか?」
手元に出した100万Dを老人に差し出す。今確認してくれてるんだろう。じっと老人は俺の手元から目を離さない。
「・・・ふん、足りないな。だが買うのだろう? 今回だけは特別に待っているから100万D貯まったらまた来な」
「「「「はっ?」」」」
「ではな」
一体何を言ってるんだ? そう言おうとした時には、老人は俺たちが何か言う前に街の喧騒へと消えてしまった。
「あんのジジィどこ行きやがった!!?」
「ちゃんとあったじゃん!!?」
「チィ!! 完全に見失った!! 余ともあろうものが・・・・!!! あの老害目は節穴か!?」
「腐ってんじゃねえの?」
おかしくねぇ? ちゃんとあるじゃん。表記もちゃんと100万Dってなってるじゃん。足りないっておかしくねぇ?
――――◇――――
サブシナリオ『老人のペンダント』が開始されました。
クリア条件:老人が持つペンダントを購入する。
購入金額:1,000,000D
現在:-3,012,438D
――――◇――――
頭の中が真っ白になった。
「キュー」
「愛弟子!!?」
「師匠!!?」
「アールっ!!?」
――――◇――――
「・・・・あれ・・・ここは・・・」
「アール!! よかった!! 目が覚めたんだね!!」
「リーク・・・?」
俺は確か・・・っ!!? そうだシナリオが発生してそれで・・・!!
飛び上がるように体を起こし、ウィンドウを呼び出して進行中のシナリオを確認する。確か確認できたはずだ。
と言うか有無を言わさずにシナリオ始まったことは取り敢えず置いといてだ。今はあの金額が夢だったんじゃないかという願いも込めて・・・
――――◇――――
サブシナリオ『老人のペンダント』:進行中
クリア条件:老人が持つペンダントを購入する。
購入金額:1,000,000D
現在:-3,032,438D
――――◇――――
「あばばばばばばば」
「ちょっ!!? アール!!?」
まいなすさんひゃくまん? え? まいなす? なんで? あれれーおかしいぞー? つかれてるのかなー?
「なぁリーク・・・ちょっとこの画面みてくれない?」
設定を操作して他者にも見える様に変更する。
「僕にも見せて!」
「俺もだ」
「余にも見せよ」
気づいていなかっただけでルーク達もみんないた。心配かけたとか言わないといけないことも色々あるけど、まずはこれについて何か言って欲しかった。
「「「「「「「は? -300万?」」」」」」」
「幻覚じゃないのかぁ〜・・・グスン」
俺誰かに借金してないよ? いやさっきマー坊たちから借りたけどさ。それでも100万いかないよ? 戦闘で壊したりしたモノもあったけどちゃんと修繕したよ?
それなのに・・・
「・・・・・・ヤバイ本当に泣きそう・・・」
「ま・・・愛弟子!! 泣くでない!! きっと何かの間違いだ!!」
「そ・・・そうだよ師匠!! 待ってて!! 僕ちょっと運営に連絡してみるから!!」
みんながそう言ってくれるが、確かに俺の表示には『-』の記号がある。自分でも記憶がない。連帯保証人みたいなこともしてないし、それに関わる契約もしてない。
本当に記憶がない。一応もう一度確認してみる。
――――◇――――
サブシナリオ『老人のペンダント』進行中
クリア条件:老人が持つペンダントを購入する。
購入金額:1,000,000D
現在:-3,059,438D
――――◇――――
「・・・ねぇ、今増えてなかった?」
「ふえた・・・ように見えた」
今増えた。うん。念のためもう一度確認。
――――◇――――
サブシナリオ『老人のペンダント』
クリア条件:老人が持つペンダントを購入する。
購入金額:1,000,000D
現在:-3,062,872D
――――◇――――
全員が俺から目をそらした。うん。間違いなく増えてる。これは俺の借金で間違いない。それも現在進行形で増えてる。
借金。
増える。
周囲。
いない。
QED
ナゾハスベテトケタ。
「クケ・・・クケケケケ・・・ナァリィクゥー?」
「ひゃ・・・ひゃい!!?」
俺ってば似たような経験したことあるんだよなァァ? 不思議だなァァァ? あの街中でのバイトの日々が思い出せるのはフシギダナァ・・・?
「どォこぉいィッたカ知ラなイィぃカぁ?」
「わ・・・・わかりましぇん・・・」
「レイレイィ?」
「ジェ・・・ジェクスもわかりゃない!!」
――――◇――――
サブシナリオ『老人のペンダント』:進行中
クリア条件:老人が持つペンダントを購入する。
購入金額:1,000,000D
現在:-3,072,932D
――――◇――――
「ギャハゲャヒクケキャキャキャァァァァ!! カリヲハジメヨウカァ!!」
答え
アールに多額の借金があることが判明して、SAN値チェックに失敗して発狂でした。
感想お待ちしています。




