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327:裏取引 Ⅲ

注意

少し、いいえ、かなり主人公らしからぬ発言が続きます。賛否分かれるのはわかっていますが、この展開が書きたかったので反省も後悔もしていません。


会話メインでの進行となります。





「契約成立だ」



「くっくっく・・・なんだよアンタ。こんな条件飲まない理由がないぜ」



「だろ? 実質お前にはなんのデメリットもない。それだけあんたの情報が欲しいんだよ。ディア、左腕も生やしてやれ」



腰を下ろし、ポーチから一升瓶を取り出し男に渡す。生えたばかりの左腕で瓶を受け取った男は、浴びるように酒を飲む。



「すまねぇな。もし他になにか仕掛けられてたら全部が無駄になる。だからちょっと色々やらせてもらったぜ?」



「そういうことかよ!! 最悪だなこのクズ!! 何か裏があると思ったが本物だった上に、変な記載もなかった。こんな高待遇逃す方が馬鹿だぜ。一気にアンタが俺の救世主様に早変わりだ!!」



「賢いアンタなら答えてくれると思った。しかしそんな風にした俺に対して随分といい顔をしてくれるようになったじゃねぇか」



「当然だ。これから俺の人生は絶対の安全とバラ色になったんだからな。五体満足で生きていられるなら身体程度いくらでも傷ついてやるよ!」



「それは何よりだ。それにこの条件なら簡単に通せる。察してるとは思うがこの国に対して俺はそこそこの権力があるみたいでな」



「がっはっは!! だろうなぁ!! じゃなきゃこんなことできねぇぜ!! アンタ俺以上のクズだぜ! あの妖精女もさぞかしアホだな! こんな男をかばってたんだからよ!」



「あんな女の方が扱いやすくていいんだよ。頼るフリしてれば簡単に使えるし。いい飲みっぷりだな。もう一本行っとくか?」



「おう! って言いたいがこれ以上飲んじまたら話ができなくなりそうだ。話してから貰うぜ」



「そうだったな。契約は知ってること全部話すことだ。頼むぜ?」



「任せな。まず俺は王国の人間だ」



「王国の? なんでまた王国の奴が帝国に?」



「仕事だよ。帝国騎士団の強い奴を一人、それも目立つ奴を殺してこいってよ。クソめんどくせぇ仕事当たっちまって連中から馬鹿にされてムカついたんだぜ俺はよぉ」



「連中・・・てことはどこかの組織なのか?」



「今じゃ元組織の人間だがなぁ? 人殺しを専門に扱う組織さ。殺人ギルドとでも言うか?」



「なんだよアンタ随分と物騒な組織の一員だったんだな」



「ケッ! それ以外に選択肢がなかったんだよ。生きるためには誰かを殺す。死にたくないから誰かを殺す。自然の摂理だろ。それこそあんたが連れてる化物と同じさ」



「それを言われちゃ何も言えねぇな。んで? その依頼主って誰なんだ?」



「それがよぉ、あのくそジジイ今回に限って依頼主の名前も何も言わなかったんだ。でも大体察してるぜ。間違いなく国王かそれに近しい奴からの依頼だ」



「なんで断言できるんだ? 帝国に恨みがあるやつかも知れないだろ? もしくはそのジジイの個人的な恨みとか、知り合いとか」



「それこそありえねぇ。あのジジイは例え自分の知り合いでも売りに出して金儲け、殺したい相手がいれば自分の名を出して誰かに殺させる! そんなゴミみたいなクズだ。そんな奴が何も言わないってこたァそういうことだ。あのジジイ、なんでも国に秘密握られてる上に、組織の存続を裏で取引してるみたいだからよ。この依頼聞いたときは最悪だったぜ。やっぱり酒くれや、飲まねぇとシラフじゃ話せねぇぜ」



「だと思ったよ。ほらよ」



「サンキュー・・・おっ?さっきのよりうめぇなこれ。どこの酒だ? お天道様の下に出たら毎日飲むぞ俺は」



「知らん。城の酒かっぱらってきただけだからな。後で調べとくよ」



「酒の持ち出しまで自由かよ!! ホントアンタ俺と同じくらいクズだぜ! いや、善人ヅラしてるから俺よりもクズだな!」



「褒めるんじゃねぇよ。ほらついでにツマミだ。魚は食えるか?」



「いいじぇねぇか! 牢屋で酒盛りができるとは思ってなかったぜ!!」



「それで? この依頼を受けたアンタは帝国で騎士を殺そうとしたが失敗した。それで一回捕まったろ? なんで出られたんだ?」



「そりゃお前、殺人組織だぜ? 捕まった時の脱出手段はいくらでも用意してらぁ。こんなのとかな。この魚うめぇ!!! なんだこれこんなに美味い魚まであるのかよ!!」



「うおっ!? 魚食いながらなんてことしやがる!? おぉ? 皮膚剥がれるのかよ」



「魔術で作った合成皮膚ってやつだ。そんでこの皮膚の裏にはこんなのがあるんだよ」



「魔法陣か」



「そういうこと、これと同じ魔法陣を別の場所に置いておけばあっという間に転移できるって寸法よ。使いきりだがな! いやぁちょろかったぜ! その後あんたにボロボロにされたけどな? ギャハハハ!!」



「信頼を得るには人殺しもするってもんだ。アンタなら理解できるだろ?」



「だなぁ!! 同類だったからこそよくわかるぜ! 俺たちみたいな奴は信用と信頼は絶対だ! だから組織に入る前に契約もすることが原則だ」



「それがあんたの秘密だったのか」



「あぁ、組織のことを話したら死ぬっていう契約だ。たったそれだけ、でもそれだけである程度の仕事に金まで手に入る。どうせ組織に入らなきゃ待ってるのは死だ。どっちも変わらねぇよ」



「でもさっき抵抗してたじゃねぇか」



「そりゃそうだろ! 死ななきゃ何があっても負けじゃねぇ! 生きるためなら邪神だろうと俺は魂売るね!」



「・・・じゃぁ俺は?」



「アンタは外道だが俺にとっては神様みたいなやつだぜ!!」



「くっくっく、嬉しいねぇ。俺が神様かよ」



「そりゃそうだ! 俺にとっては好条件、アンタも約束さえ守れば痛くも痒くもない! 適当に話をして飲ませれば後は自由! 本当にクズいぜ! ギャハハハハ!!」



「殺人ギルドに王国からの依頼か・・・でもなんで王国はそんな依頼したんだ?」



「あぁ? んなこと簡単だぜ。うちの王様は『帝国と魔国なんてぶっ壊せ!』って平然という奴だぜ? 戦争したくてしょうがないのさ! 人間種こそこの星の支配者だとか言ってるほどだ。あの王様も相応クズだぜ。俺はこっちの亜人種の方があれよりよっぽどましに見えるね」



「??? でも今回会合があったが、王国からもちゃんと使者が来てたぜ?」



「んなこと知らねぇよ。どうせ動揺してる帝国になんか吹っかけるか、やらかすように陽動でもして大義名分でも得ようとしてたんじゃねぇのか? 知らねぇけどよ」



「・・・なるほど、だからあの公爵あんなに・・・なぁ、ジキイド公爵って知ってるか?」



「おぉ知ってる知ってる! 王様と同じく人間種至高主義者だ! なんだよあの公爵が使者だったのか? 大荒れだったんじゃねぇのか? あぁ読めたぜ! 公爵に騒ぎ起こさせてそれをあれよこれよと言い換えて『帝国死すべし慈悲はない!』『魔国は野蛮! 平和のために討伐せよ!』ってか!? 三流過ぎだが悪くねぇ!!



「・・・くっそつまんねぇシナリオだな」



「だが俺としてはそうなれば仕事がもらえる。戦争だろうと簡単に言えば大人数の殺しだ。殺せば金がもらえる。偉い奴を殺せば英雄にだってなれる。そうだ、もし戦争が起きたら王国の連中殺せば俺は帝国の英雄に早変わりってか? 国賊から英雄に! 悪くねぇ!!」



「ふっ、そのときは俺の手柄をあんたにやるよ。いい話を聞かせてもらったしな」



「マジかよ!? いいのか!?」



「俺はもう英雄扱いだからな。新しいのはいらねぇよ」



「アンタやっぱり俺にとっては神様だぜ!! 仲良くしようぜ兄弟!!」



「ふっ、単純なやつ、だが嫌いじゃねぇ。他にも教えてくれるか?」



「おうよ! 組織の連中の話ならいくらでもしてやらァ! 仕事に出る前に俺のこと散々弄りやがってあの野郎ども!!」





――――◇――――





「いやぁー!! 全部話してすっきりしたぜ!! 楽しいなぁ兄弟!! こんなに楽しい酒は初めてだ!!」



「そう言って貰えて嬉しいよ兄弟。かなり有意義な時間だった」



「しかも兄弟! お前と話してると本当に楽しいぜ!! あぁ最高だ!! 貧乏くじ引いたと思ったら神引きだぜ!! 生きてるって最高だー!!」



「そうだな。命あってこその人生だ」



「ヒック・・・あぁ、酒回ってきちまったぜ、眠てぇ」



「そろそろ切り上げるか。流石にこんな時間までここにいたら馬鹿な兵士でも不審がるだろうし」



「そだなー、兄弟が捕まると酒が飲めねぇ。それに兄弟が捕まる姿は見たくねぇぜ」



「やさしいねぇ兄弟。一度は憎しみあって殺し合った間柄じゃねぇか」



「だからこそだよ。人となりを見たしこんなに楽しい思いまでさせてくれたんだ。これからもずっと俺たち兄弟の絆は永遠だぜ・・・ふぁ〜・・・なんだ急に酒回ってきたぜ、やっぱり飲みすぎたか・・・クソねみぃ」



「永遠か・・・そうだな兄弟。そんな風に言われたら泣きそうだ。また明日もくるよ」



「おぉ〜・・・待ってるぜきょうだい〜・・・また・・・あしたなぁ〜・・・・・」



「・・・きょうだい」



「・・・・・・」



俺のことをきょうだいと呼び、楽しそうに、本当に嬉しそうに話してくれた男は気持ちよさそうに、それはとても嬉しそうに、満面の笑みを浮かべながら、”永遠の”眠りについていた。





――――◇――――

・NPC『レリック』が死亡。それにより『契約の印書type0』が破棄されました。

――――◇――――





ひとつだけ。『契約の印書type0』の契約違反を回避して破棄する方法がある。それは契約者の片方が契約完了前に死ぬことだ。



「・・・死んだよこの人。毒が全身に回った。話していたことに嘘もないみたい。本当にアールのこと信じたんだね」



「あぁ。レイレイもありがとな。こんな嫌な役割に同行させちゃって」



閉ざされたこの空間から、そっと姿を現したのはレイレイだ。レイレイはずっと俺のそばにいた。レイレイの存在こそ、俺が『人の気配は見逃さない』と力強く行った理由でもある。



「気にしないで。こういうことは私の専売特許だから。それに、アールのおかげできっと・・・ううん、間違いなくこの人は最後に幸せだったはずだよ。アタシじゃこんな風に最後に笑顔になるようには殺せないから」



レイレイの持つ『UtS:アークメモリー』はそこに何があっても、誰がいても瞬時に把握する超高性能マップとも言える存在。さらにレイレイ自身が暗殺者ジョブを持つため、同業者対策も完璧だ。



だからこそ、この空間には”俺たち”以外には誰ひとりと断言できた。そして酒と一緒に出したあの魚。食べると文字通り気分もろとも天国まで連れて言ってくれる魚。この世のものとは思えないほどの美味さを味あわせてくれて、代金として、食べた相手の命を受け取る。



皮肉めいたこの魚の名前が『天送魚』。文字通り天国へ送る魚。苦しむことなく、最後の最後まで優しく楽しい気持ちを持ったまま天国へと送る毒『天毒』を持つ唯一無二の魚。



レイレイに頼んで用意してもらったアンタの為の一品だったんだ。



「なぁきょうだい。今から三時間後に、アンタは処刑されることになってたんだよ。口を割らずとも、城に潜入して騎士団を殺そうとしたアンタは、どうあれもう死ぬことが決まってたんだ。国賊のアンタをこうして生かしていたのは会合が終わるまで騒ぎを起こしたくなかったからなんだとさ」



「今王国と帝国、魔国はアンタが話していた未来とは異なる道を歩もうとしている。それにアンタが話してた殺人組織だけど、帝国は存在を知ってたんだぜ? 帝国も馬鹿じゃなかったんだよ」



冷たくなったレリックの顔に触れながら、真実を教えるように話していく。



「それを知った上で戦争を回避するために今回の会合に挑んだんだ。なぁきょうだい。今話してくれたことのおかげで帝国も魔国も今以上に王国に関する情報を集められる。アンタは平和を作る為の英雄になったんだ」



「けど歴史はきっとアンタのことを語らない。本にもきっと書かれない。ただの国賊と書かれればいい方だ。だからこそ・・・・・・だからこそ・・・・・・」



「アール・・・」



あぁ、騙されてるって気づかないまま、心から楽しそうに話してたアンタを見て、自分がクズだと思ったよ。



なぁきょうだい。その通りだった。俺は本当にクズだ。だからさ。



「同類の、きょうだいと呼んでくれたアンタを、レリックを俺は忘れない。だから、来世は幸せに、今生みたいな世界じゃなくて、さっきみたいな笑顔で笑える世界に生まれてくれよきょうだい・・・クレイ」



『LAa』



「血の一滴も残さず、全部喰ってくれ。クヴァレイドルクイーンのお前なら『天毒』は効かないだろ?」



『LAa〜』



クレイは歌いながら、優しく溶かすように冷たくなったレリックを捕食していく。生きるためには誰かを殺す。その命の上に命は成り立っている。本当に、その通りだ。





――――◇――――





「アール殿・・・」



「全部話したよ。内容はレイレイが全部聞き取った。死体の処理も済ませたよ」



「・・・貴方にこのようなことをさせてしまい。申し訳ありません」



牢から出ると、グルドールが出迎えてくれた。そしてその近くには牢屋に向かう前に辛そうな顔で送り出してくれた兵士も一緒だった。



「気にしないでくれ。あの場では殺さなかったのも、最後は俺が始末を着けるといったのも俺自身だ。それに人殺しの経験くらいはいくらでもあるよ」



「・・・はい」



「さてと、俺も少し飲み過ぎたからちょっと寝かせてもらうわ」



「わかりました。ゆっくり、休んでください」



こうして、少しだけ長かった夜が終わった。寝る前に聞こえたのは、嬉しそうに自分の話をする男の声だった。どうか、安らかに。


せめて死ぬのならば、偽りであろうとも幸せに、そしてこちらの有利な情報を吐き出させてからから殺す。拷問よりも、幸福の中で人は重要なことを簡単に口にしてしまうものです。


そしてそれはゲームを”楽しんでいるユーザー”には絶対に見せられないあまりにも現実みの強い部分。しかしアフターの理不尽さを知っているからこそ、その全てを糧としてアールは明日もゲームを続けていきます。ゲームであろうとも、その命を奪うのならば、その命を背負い糧として。


感想お待ちしています。

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― 新着の感想 ―
[一言] クズ同士でも分かり合える瞬間があるもんだ。 それは、まるで星が壊れる瞬間に放つ最期の煌きの様に、美しいものなんだ。
[一言] うわあ、えぐい。このことを知ったら 「ゲームにここまでのリアルを求めてねえんだよ!ここまでリアルになっちまったら楽しめなくなるじゃねえか!」とか言って反発する層が一定数いるだろうことが予想で…
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