326:裏取引 Ⅱ
続きます。少しブラック風味そのに
「話してくれれば、お前の切り落とした四肢を元に戻してやる」
「ざ・・・・ざっけんな!! そんなことできるわけがねぇ!! あの時俺の腕も足もテメェの訳のわかんねぇモンスターが食ってたじゃねぇか!!!」
《『失礼ダナ。私ハ食ベテナイ。クレイダケダ』》
《『LAa〜LAaLAa〜LAa(特別翻訳:そーだそーだ)』》
モンスター業界の話はしらんがな。けど事実、切り落とした手足はあの後、クレイが触手で器用に残らず平らげてしまった。痛みで苦しんでいてもその光景は覚えていたらしい。
「それでもだよ。元に戻してやる。嘘でもなんでもねぇぞ?」
「んなこと信じるか!! 死ね!!」
「ったく、仕方ねぇ。ディア。”生やしてやれ”」
『ヨヨ!』
ピョインと頭の上に乗るように、ディアが顔を出す。そしてディアは”賊にくっつけたまま”の分身を再生に利用して、失われた四肢を男に与えた。
「はがぁっ!!?」
驚く男。だがよく考えろ。この状態で今もまだ生きていたのはディアがくっついていたからこそ。そして既に数日経過している。ディアの分身がその間ずっと寄生していたんだ。生態情報くらいはもう完全にモノにしている。
「お・・・俺の・・・手足・・・!!!」
ディアの分身は完全に男の体となり、男はそれを確かめるように男は生えた手足で立ち上がる。その手で顔を触り、その足で何度も足踏みをする。失った感覚を確かめるように何度も。
「どうだ? 信じるか?」
「は・・・ははっ!! ははははは!!! 戻った!! 俺の手足!! 戻ったぞォォ!!」
「わかったから。早く話せ」
「話すかバカがっ!! 戻ろうとテメェに対する恨み怒りは消えねぇ!! それに手足さえあればこっちのもんだ!!」
「あっそ、ならまた斬らせてもらう『初月』」
「あぁ・・・!?」
『艶姫鳳戦刀:コンゴウ』を抜刀。鉄格子の間を縫うように斬撃を飛ばし、生えたばかりの四肢を再び切り落とす。同時にディアの分身を新しく生み出させて断面にくっつける。
《『LAaLAaLa〜(特別翻訳:ごはん〜)』》
落ちた手足と吹き出た血はミニマムクレイがまた顕現てその触手を使い、血は吸い取るように、手足は味わうようにボリボリと音を立てながら食べていく。
「いだいぃぃ!!? いだいぃぃぃ!! ぐっでるぅ!!? おれのうでぇぇぇ!!?!?」
『LAaLaLAa〜』
まるで『おいし〜』とでも言うかのように美しい歌声を奏でながら肉を食らっていくクレイ。今度は痛みで転がらず、叫びを上げるだけにとどまった男は、間近で、その目でしっかりと生えたばかりの手足が食われていく光景を見てしまう。
クレイはその全てを食べ終わると、可愛らしく手を合わせてお辞儀をした。その後一瞬男に満面の笑みを浮かべると、男は恐怖で顔が歪み、涙を流していた。
そんなことなど気にせず、クレイはフヨフヨと浮かび俺の肩に座った。まだ食べられると言わんばかりの笑顔だった。
「話す?」
「うでぇ・・・おれの・・・おれのうでぇ・・・!!!」
「はぁ・・・ディア。片腕だけ生やしてやれ」
『ヨヨ』
にょきにょきと植物のように生えてくる男の右腕。男は生えてきた腕を庇うように俺から距離を取るため這いずった。
『LAaLAaLaLala〜?』
「ヒィィィィィィ!?!?!」
そんな男の股関節に、クレイの伸ばした触手が絡みつく。離れた男を引きずり寄せるクレイ。男の脳裏にはきっと、今食われた手足の光景が蘇ってるはずだ。
そんなことなどお構いなしに、クレイの触手は男の体を拘束していく。そして触手はそのまま生えた腕を撫ぜるように、舌で舐めるように巻きついていく。その顔は『食べてもいい? たべたいな〜』とでも言ってるみたいだ。
普通に怖いと思う。雑食である『クヴァレイドルクイーン』。クレイはその中でも結構食べるのが好きな個体なんだろうか? イドルは興味なさげに出てこないし。いや興味あったらめちゃくちゃ怖いけども。
《『私ハ『コンゴウ』トシテノ側面ガ強インダ。イドルハ『クヴァレイドル』トシテノ側面ガ強イ。ダカラ捕食欲トデモイウカ? ソレガ強イダケダ。力モ強クナッタカラソノ反動ダロウ』》
ってことは定期的にこれから食べ物あげたほうがいいのか?
《『別ニ食ベナクトモ死ナナイ。クレイハ単純ニ食ベルコトガ好キナダケダ』》
《《普通に怖いわよ!!? アタシ達まで食べないでよね!!?》》
《《食べられちゃうんですか〜?》》
多分ズイカクきっと涙目だろうな。なんだかんだ怖がりっぽいし。オーバーロード相手に泣きそうだったの忘れてないぞ。
『La? LAaLaLAaLaLAa〜La?』
「なぁ、こいつまだお前のこと食い足りないんだってさ。どうする?」
「やめっ!?!? やめっ!!? いだっ!!? ちが・・・!?!?血ぃ!!?!?」
『ヨヨヨ(特別翻訳:イっちゃいそうだから治しとくね)』
おそらくディアが分身に命令してなにかしたんだろう。錯乱しかけていた男の様子が少し落ち着いた。けど恐怖はまだ消えてない。
生態情報を得たということはこういうことだ。生命も精神もディアの思いのままに操作できる。実際やろうと思えばこいつに勝手に話をさせることもできる。けどしないのは万が一があると、情報源を失うからだ。
狂いたくても狂えず、死にたくても死ねない。拷問以上のモノだと思う。こんな光景普通に見せられない。
「俺ならこいつを止められる。話してくれるならやめさせるし、ちゃんと手足も元に戻す。どうだ? 話してくれないか?」
「い・・・・いやだ!! 話したら殺される!!」
「殺さないよ。約束する。望むなら逃がしてやってもいいぜ?」
「いやだ!! 絶対に話せば殺される!!」
「だから殺さないって。ギアスロール使ってもいいぜ?」
「違う!! あいつらに殺されるんだ!!」
「・・・ふむ。話せる範囲で話してくれるか?」
「あいつらは裏切りを許さない!! 関係することを話せば絶対に殺される!! 話した瞬間俺は死ぬんだ!!!」
「ここは城の地下にある牢屋。しかも出入り口はひとつ。それも専用のアイテムがないと開かない徹底ぶり。それと今この場にいる奴は人の気配を絶対に見逃さない。誰かいれば即座に反応してお前をまもってやる。これでもまだ話せないのか?」
「っーっーっ!!!」
息を荒げて何度も首を縦に振る男。嘘じゃないみたいだ。おびえているが本気で懇願するように何度も首を振る。
「クレイ。離れてやれ」
『LAAa〜?(特別翻訳:食べちゃダメ?)』
「いいから離れろ。今度美味しいもの食べさせてやるから」
『LAaLAaLAa!!』
シュルリと男から触手を離し、そのまま引っ込めたクレイは、頭に花を咲かせるようにウキウキしながら綺麗な唄を歌っている。場違い感がすごいが気にせんでいいや。
「ちょっと独り言するかもしれないが気にしないでくれ。でも気になったら手が地面を叩くことがあるかもな」
「っー!!」
男に背を向けて少し大きめに呟く。
「ギアスロールってスゲェよな。一度契約すれば何があろうとも絶対だ。どこに行こうがどこまで逃げようがその契約は絶対に消えない。すごいよな〜」
地面を叩く音が聞こえた。
「約束を破ったら死ぬとかそういうことも契約でできるんだからスゲェよな。」
地面を叩く音がさっきよりも大きい。
「そう言えば、ギアスロールに詳しい奴から話を聞いたんだけど、上位のギアスロールになればなるほどその契約は強く残るらしいぜ。しかもそれより下級の契約を破棄しちまうほどに。一番下が5、それから上が4、3、2、1っていう風にランクづけされてるとかされてないとか言うらしいなぁ。まぁ1はかなり貴重らしくて世界に数枚しかないって話だけど」
音が二回。十分だ。最高ランクのものだったらどうなるかわからなかったけど、それなら問題ない。事前にもらったアイテムを取り出し、ウィンドウを操作して契約を書き込む。
「済まないな。独り言が過ぎたぜ。さぁ話を続けよう」
「っ!!?」
――――◇――――
『契約の印書 type0』発動
契約内容
・契約者2が契約者1に知っていること全てを偽りなく告白、その後契約者2を契約者1が牢屋から解放する。
――――◇――――
契約完了後の誓約:契約者1
・契約者2に対して、アイテム『スケープゴート』を毎週供給する。
・契約者2に対して帝国が500万Dを毎月支給することを確約させる。
・帝国での生活の保障と護衛を常に配置し、必要なもの、欲しいものは常に帝国から供給させる。
・契約者2が契約者1に対して話したこと、ここでの話全てを他言しない。
――――◇――――
契約完了後の誓約:契約者2
・金輪際、この契約以外の全ての契約を無効にし、破棄する。
・契約者1に対して話したこと、契約者1のことを他言しない。
――――◇――――
誓約違反の代償
契約者1が違反:今後発生する契約者2全ての罪は契約者1の罪とする。
契約者2が違反:この契約を無効にし、牢屋で一生を過ごす。
――――◇――――
契約者1:アール
契約者2:
――――◇――――
契約の印書 type0
・この世界に存在する絶対の契約書。Type0での契約は絶対であり、type0以外の『契約の印書』による契約を全て破棄させる。
――――◇――――
アイテム:『スケープゴート』
・所持者が負う全ての傷を、その直前に触れた相手に移す。対象とした相手が『瀕死』あるいは『死亡』場合、対象の近くにいた別の誰かが対象になる。
――――◇――――
レイレイが相手との交渉を無碍にされないように常に所持している『契約の印書』。その中でも絶対遵守を誓わせるのがこの『契約の印書type0』。
入手方法は企業秘密らしいが、その効果は唯一無二。一度書けば例えどんな手段を用いても破棄できず、ほかの契約を強制的に破棄させてしまう絶対服従の契約書とも言える。今回のためにもらっておいて正解だった。
そしてもう一つ。プレイヤー間では既に『禁忌アイテム』として使用禁止と定めたアイテム。使い方次第で簡単に誰かを殺せてしまう非道なアイテム。ターゲットに触れてから自殺まがいの行動を起こせば簡単にPKも、そしてNPC殺しも出来てしまう恐ろしいアイテム。
その誕生はあるPKが生み出したことが始まりで、その影響力は凄まじかったそうだ。しかし非道外道を許さないニコニーコ、そして意外なことに『PKは直接手を下してこそのPK』と、PKとしての誇りを守るために立ち上がったレイエル達による有志により、その存在自体を消された。
現在ではその製作方法、材料、そしてそれに関わる全ての情報は当時のプレイヤーからの署名により運営からなかったものとして扱われている。
しかし、実は裏があった。裏で暗躍するNPCである『闇商人』が現在も闇に紛れるようにこの『スケープゴート』を所持、販売していることがレイレイの情報に入っていた。
例えNPCだろうと禁忌アイテムを持っていればプレイヤーである時代人はその人を悪として裁く。簡単に言えば処刑する。『これは禁忌とされたアイテムだ。持っているだけで罪』『つまりそれを裁くことは罪にはならない』という一種の狂気とも言える。
勿論全員が全員ここまで極端ではないが、少なくとも嫌がらせの対象、そのNPCを陥れるという行為に罪悪感を抱くことなく、平然と行うのが大多数だろう。そういう理由で処刑、あるいは人生を狂わされ自殺したNPCも多いという。
レイレイはそのスケープゴートを所持、販売しているという情報を時代人に流さない。流させないことを条件に売上金額の一部を献上。及び情報屋として彼らと契約をしている。さらに『スケープゴート』の販売もレイレイが許可した相手にしか許可していない。
こういう裏、もしくは影や闇といった部分があることも、人々を虜にする要因の一つにはあるんだろう。綺麗事だけじゃない。それがこの『プラネットクロニクル』の魅力なんだ。
「さて、話してくれないか? もう痛いのも苦しいのも嫌だろう?」
「ふざけるな! 絶対に話さねぇ!! 俺は死にたくねぇ!!」
男は笑顔だった。あくどい笑みを浮かべていた。きっと俺も似たようなもんだろう。否定しながらも、男は喜々として差し出した『契約の印書type0』に署名し、指を噛み、血印を押した。
――――◇――――
・『契約の印書type0』が適応。NPC『レリック』との契約が成立。
・NPC『レリック』がしていた他全ての契約が破棄されました。
――――◇――――




