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313:皇帝と女王

皇帝アルベルト、女王カイラが一足早く会合。



「いやぁごめんねアルベルト皇帝? ちょっと早く来すぎちゃったよ」



「構わぬよ暁の女王。我らの仲だ。気にする必要はない。しかし女王自ら来るとは思わなかったぞ」



「最初はうちのリザードマン派遣しようと思ったんだけど、アールに会いたくなったから私が来たの」



「なるほど。確かに剣聖殿に会いたくなったのであれば仕方がない」



「でしょ?」



『でしょ?』じゃねぇよ。そんな俺の心の叫びを知ることなく、突然やってきたゼアリードの大使、と言うか女王ことカイラが一日早くやってきた。



にも関わらず、アルベルト皇帝はまるでいつもの事だと言わんばかりの対応速度で、こうしてカイラとの会合をしている。明日の準備とか色々あるはずなのに。



謁見の間とは違う、テーブル越しに対等の位置で顔を突き合わせて話す議会のような場所で、アルベルト皇帝と暁の女王と呼ばれているカイラは話を進める。



お互いの最近の話などといった、本当に一人の人として、モンスターとしての何気ない会話だ。同席しているのはミカルド将軍とドドドラ。そして俺とマリアーデ。



リークたちには申し訳ないけど、城の手伝いに回ってもらった。流石にこの場にほとんど他人の彼らを入り込ませる訳にはいかんだろうし。



俺? 俺も最初入る気はなかったんだけど、両者から指名されてしまったのでこうして同席させてもらっている。そして当然のようにマリアーデもついてきた。もちろん誰も文句も意見も言うことはなかった。



そんな風に思っていると、他愛ない会話の空気から一転、両者の空気が引き締まる。



「暁の女王よ。国民の様子はどうなのだ?」



「時代人が来たこともあって皆心に余裕が出来始めております。しかし、先のゴブリンが帝国に及ぼした多大なる被害の件もあり、王国との関係は悪化の一途です。ですから此度の申し出は我らにとっては大変ありがたいものでした」



「そうか。やはり時代人の存在は大きいのだな」



「えぇ。我らモンスターを恐れず、歩み寄ってくれた時代人の存在は、我らが此処に居ても良いと肯定してくれていると同義です。それにいくつかの時代人のクランは我が国に拠点を構えましたので、それも大きな要素では有りましょう」



「時代人。新たな時代を作る新種族。人であり、亜人であり、不滅のモンスターでもある。そんな彼らだからこそ我らの架け橋となりうるのだろう」



「私も同じ思いですアルベルト皇帝。此度の会合、彼らが共にあることが、良き方向に向かうと我らは信じております」



すげぇ。俺が知っているカイラとはまるで違う。纏っている雰囲気も、口調も王の気品とでも言うのだろうか。堂々としているカイラを見ると、本当に女王様になったんだと感じる。



「アール殿。これは剣聖アールに聞くのではなく、一人の時代人に対して意見をもらいたい。諸君ら時代人は此度の三国会合に関して、どう思っているのだ?」



アルベルト皇帝から俺への指名質問。その内容は軽いようで実に重いと感じる。ぶっちゃけ言えば時代人、大半のプレイヤーは今回の会合は大きなイベントの前振り。簡単に言えば大きな戦の合図になると考えている。



掲示板では既にゼアリードに渡っているプレイヤーたちから多くの情報がもたらされ、海を挟んで向かい側にある王国の様子も当然流れている。



緊迫した状況で両者はにらみ合い、いつ戦争になってもおかしくないと言う。幸いといえば幸いなことに、時代人の陣営は今のところゼアリード側についている。



聞けば未だ誰ひとり、王国の領地へ足を踏み入れることが出来ないことも大きな理由だろう。なんでも入ろうとしたら襲われただの、追い返されただの、あまりいい話は聞いてない。



今話していたように、プレイヤー、時代人は死んでも泉で蘇るある種モンスターのような存在だ。人間至高を掲げる王国にとって、俺たちほど危険な存在はいないということだろう。



そんな状況が続いているんだ。今回の会合で何かが起こり、ワールドシナリオが進行する可能性を考えないのは無理がある。そもそも今回の会合も、俺個人が進行させた特殊なワールドシナリオだ。



どんな形であれ、間違いなく何かが起こる。俺も含めてみんながそう考えている。



「和平にしろ、条約にしろ、無事に事が収まるとは思っていない。言いたくはないが必ず何かが起こると考えてるはずだ」



だから俺はそれを隠さずに発言する。将軍とドドドラの雰囲気が一瞬強張るが、直ぐに平常心を取り戻した。



「この城で、いいや、世界の何処かでゴブリンや旧時代の邪悪な巨人のような何かが起こる。そう考えているのだな?」



「あぁ。ほぼ確定だと俺も思っている。俺が確信したのはアルベルト皇帝。貴方が俺に『時代人にも会合に関わって欲しい』と依頼したことだ」



「・・・やはりか。時代を先に進めると呼ばれている諸君らの存在が時代に波を起こす。いいや、これでは諸君ら時代人に全ての責任を押し付けるかのような言い方だな。すまぬ」



「否定はしない。俺たちの存在はある意味で時代の転機になる。それが繁栄・衰退・平穏・戦火のどれになるのかは、その時が来るまで俺たちにもわからない。けど、いつか必ずこうなる道でもあった。俺はそう考えている」



「そうだね。私たちは常に進んでる。永遠に続く時間なんてものはない。だからこそ、私も、皇帝も、アールもそう。理想の明日を手に入れるために前に進むしかない。だから今回の会合に私たちは国の命運を懸けている」



そんなカイラの瞳には強く輝く紋章。カイラが暁妖精と呼ばれる所以にもなった『暁の紋章』と呼ばれる力が具現化したモノ。心の意志が強いほど強く輝きを放つそれを、俺は久しぶりにみた。



「あの時、アールや皆と世界を救うために戦った時と同じ。今私の背中にはゼアリード皆の命がある。私が望むのはただ一つ。ゼアリードの平和だけ。そのために私はこの席に来たんだ」



「私も同じだ暁の女王よ。我が民草が不安なく過ごせる日々のため、存在する要因を廃することが私の望みだ」



それぞれの王が隠すことなく、力強くそれぞれの思いを口にする。そこに『その為ならばなんでもする』と、発した言葉の影に潜ませてはっきりと。



「やっぱり私は貴方のそういう所が気に入ってるよアルベルト皇帝」



「私もだ暁の女王。だからこそ我らは王でありながら友になれたのだ」



そう言って互いにこぼした笑み。作ったものではなく、互を心からそう思っているからこその表情なんだと俺は思う。『しかし』と、アルベルト皇帝は言葉を漏らした。



「来るならば来ると言って欲しかったぞ」



うん。それは正論だ。



「今日では宴の用意が間に合わないではないか!」



うんうんその通り・・・・うん? 宴?



「いやぁ〜ごめんね? 本当に急に思っちゃったからさ! 変わりに明日の会合にかかる経費はこっちで持つからさ! 許して?」



「しかたないなぁ! だが今度からは一週間前に言うのだぞ!」



「はいはーい。でも前回急に来てウチの子達に迷惑かけたこと私は忘れてないからなー!」



「・・・覚えていたか・・・忘れてると思っていたのに」



「『皆でゼアリード産の採れたてキノコが食べたくなったのでキノコ狩りに来たついでに寄った』ってセリフまで一言一句全部覚えてるんだからなー! しかも本当に突然!」



「くっ! 分が悪い! 将軍!」



「陛下。諦めたほうが良いかと。ジールド宰相もあの時に関してはノリノリでしたので何も言い返せません」



「と、いうわけで今回のことは根に持たないでね?」



「よかろう! それで前回のこと含めてお互い水に流そうではないか!」



「「アッハッハッハッハ!!」」



「ねぇマリアーデ?」



「こんなものだ愛弟子。だがお主も嫌いではないだろう?」



確かに腹の中真っ黒の王様とか、邪神の素体とかよりはずっと良い。



それにこの光景を見て、少なくともエリュザクトとゼアリ-ドの関係はかなり友好的なんだと思えたし。だからこそ、ゴブリン事変の時にエーテリアの人々が直ぐにオーグを受け入れることが出来たんだとも理解できたから。



『今日そっちのご飯食べたいんだけど遊びに行ってもいい?』

『いいよーお土産期待してるからよろよろー』


くらいにはこの二人の王様仲がいいです。当然国同士も交流は頻繁に行われています。

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― 新着の感想 ―
[一言] こんなに仲の良い王様達を見るのは初めてだw 仲が良いだけなら、いろんな作品で見てきたけどここまでノリが軽くてもOKな王様たちはいない。 そりゃ、人間至上主義の国からは疑われちゃいますね。 …
[一言] 王国の剣とやらが不審だけどアール+クロニクルモンスターのアフター時代の仲間達だったら戦争になってもワンサイドゲームになりそう...
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