271:記憶の塔攻略を掲げて
キンクリキンクリ。
長々と修行シーンとか似たような状況になりそうだったのでカット。書いてるうちに諄くなったので許してください。
「みんな! いよいよ世界の中心にあるあの塔! 考察部隊のおかげでわかった正式名称『記憶の塔』の攻略に着手するよ! 各地で共に頑張る仲間たちも塔で合流する手はずになっている!! ここが正念場になるだろう!! みんな! 全力で行こう!」
「「「「「オォォ!!!」」」」」
最初に街に来た人数の約半数となってしまったルクシント。しかし残った彼らの戦意とやる気は高かった。心半ばで散っていった仲間たちの遺志を継ぎ、過去のシ者から受け継いだ戦うためのチカラ。
その二つが相乗効果を生み出して彼らの意志をより強く、より強靭なモノへと昇華させたのだ。人数こそ減ったものの、彼らのやる気は十分だった。
街のシナリオ参加者をまとめあげ、今日まで先導してきた『ルシオン』の号令の元、彼らは『記憶の塔』攻略を目指し、最後の戦いに望む。
――――◇――――
同じ頃、アセンシードでも似たように多くのシナリオ参加者が集まっていた。ルクセントと同じく数は減っていたが、ルクセント以上に熱意は高かった。
「野郎ども!! いよいよだ!! 俺らが見ている記憶の終着を見に行く覚悟はあるかぁ!!」
「「「「「「「「「「応っ!!!」」」」」」」」」」
それというのも、やはり先導している彼女、『チーザー紫』の影響もあるだろう。力強い覚悟、そしてカリスマ性が相まって、街中にいるシナリオ参加者の気迫は高まっている。
「覚悟が出来てる奴は腕を上げろ!! 進むべき道を自分で決めろ!! 出来てねぇ奴はいるか!!」
「「「「「「「「「「否!! 断じて否ッ!!」」」」」」」」」」
「なら行くぜ!!! テメェらが背負ってるもん全部!! 最後まで手放すんじゃねぇぞ!! 出陣だ!! 行くぜぇ!!!!」
――――◇――――
同時刻、ラクメツでも全く同じようなことが起こっていた。先導者の名は『ニコニーコ』。またの名を『再誕した平和の象徴』、『不滅の勇者』。
その圧倒的カリスマ性と、この世界で過去より授かったチカラを持って、そこに住んでいたならず者たちをも更正させた彼が、集まったシナリオ参加者の前に立った。
「・・・ついにこの時が来た」
「「「「「「「「「「・・・・・・」」」」」」」」」」」
「今日まで私が私でいられたのは、私を信じてくれた皆のおかげだ。本当に感謝している!!」
「「「「「「「「「「・・・・ッ!」」」」」」」」」」
「だからこそ!! 皆にもう一つお願いがある!!」
太い腕で塔のある方向を指さし、ニコニーコは高らかに宣言する。
「私についてきてくれ!! 全ての謎を解き明かし!! 私たちは元の世界に戻る!! そのために私と共に戦ってくれ!!!」
「「「「「「「「「「応っ!!!」」」」」」」」」」
「さぁ行こう!!!! 出撃だ!!!」
ニコニーコ率いる一団も、ルシオン、チーザー紫の出発宣言と同時刻に塔へと向かって歩きだした。それを見た各町の人たちは後の世にこう残した。
『まるで世界を救う勇者達のようだった』と・・・・
――――◇――――
ラクメツ、ルクセント、アセンシード。そしてもう一つ存在している町がある。サムライの町と誰かが言ったアマツテン。
この街でも決起集会のようなものが起きていたのかと聞かれれば、全員が口を揃えてこう言うのだ。『そういうのはやっていない』と。
残念ながら、ほかの街に散らばった三名のトップ陣のように、カリスマ性を持つ人材はそう都合よくは存在していない。
だがこの街にいるシナリオ参加者はバラバラだったのか? そう聞かれるだろうが、そんなこともない。寧ろ全員が協力していたという点で言えば、このアマツテンが一番だろう。
四つの街がある中で、最も脱落者が少なかったのがこの街アマツテンのシナリオ参加者なのだ。その理由・・・というよりも、そうならざる理由がこの街にいた参加者にはあった。
「さてと、他の街は出発してる頃だね。剛リキ、全員の準備は?」
「問題ねぇぜ。これまでで最高のコンディションだ」
「ブラック。物資状況は?」
「同じく全く問題ない。一ヶ月だろうと戦える用意はしてきたつもりだ」
「ミラファ。塔までのマッピングは完璧?」
「道にある木の数まで覚えてます陛下」
サムライの町、サムライといえば常に冷静に敵を討つ。そんなイメージもあるだろう。この街にいる参加者が纏うのはまさにそんな気迫だった。
「そろそろ先に出した斥候が戻るから、確認が取れ次第私たちも出る。異論がある者は?」
「女帝様よ、ここにいる時点でアンタに異論なんてあるわけねぇだろ?」
「そう、ならいいわ・・・・戻ってきたわね」
女帝、そう呼ばれたのは元いた場所でも『魔術女帝』のジョブを持つリークだった。彼女が纏うカリスマ性は、他の三人を先導者と言うなら、彼女はまさしく女帝。
圧倒的強者のみが纏うことを許された特別なもの。そんな彼女が一からまとめ上げたアマツテンの参加者たち。
一つの国であると錯覚しそうなほど、彼らのまとまりは凄まじい。
「戻ったわよリーク」
「ありがとうレイレイ。状況は?」
「特に異常なし。モンスターが少しいるけど、油断さえしなければ倒せる奴がほとんどだったわ」
「そう。なら問題ないわね。剛リキ。出陣よ」
「了解。諸君!! 出陣だ!! 立ちはだかる全てを蹂躙して陛下の道を開け!!」
剛リキの言葉に全員が気迫を纏う。既に臨戦態勢は整っている。そんな彼らに振り返ることなく、リークが口を開いた。
「誰ひとり抜けることは許可しない。その命は既に私のものよ。必ず全員生存してこの戦いに勝利を」
「「「「「「「「「「イエス、ユア・マジェスティ!!」」」」」」」」」」
そして、どの街よりも静かに、どの街よりも大軍勢の一団が『記憶の塔』へ進軍を開始した。
「待っててねアール。今の私を貴方に魅せるから」
――――◇――――
「ほげぇ・・・・」
「やっぱりどの街も個性あるけど、アマツテンはずば抜けてるわね」
「女帝やべぇ。この人マジで女帝だこれ」
「人心掌握も何もかも別次元だわマジで。今回対人シナリオにしてたら間違いなくここが勝つわ」
運営モニターにて、俺は運営のみなさんと一緒に『記憶の塔』攻略に乗り出したプレイヤー達を見ていたのだが、戦意がどこも凄まじい。
社員の皆さんが言うように、身内贔屓を抜いたとしても、リークが率いているアマツテンのプレイヤーが一番強そうだ。
連携だけじゃなく、生き残るための戦いを徹底した事で生まれた生への執念が生み出した戦い方。一撃必殺、戦後離脱。どれもが凄まじいことになった彼らは間違いなく最上階へとたどり着くだろう。
そんな彼らが最後に戦う相手が、務まるだろうか?
「主任。この進軍ペースだとあと三日でアマツテンから順々にラクメツ、アセンシード、ルクシントの参加者が集まります」
『報告します。既に原生するモンスターでは彼らの足止め程度にしかなりません。それほどの強さと覚悟を持っています』
「うんうん。プラクロユーザーもついにアールくんの最初の域へ足を踏み入れたってことね」
冗談やお世辞ではなく、俺は正直もう彼らの覚悟は俺に近いと思っている。少なくともあの『アール』としての俺ならば間違いなく彼らは共に戦う戦友になり得る。
「でも彼らはまだ知らないわ。そびえ立つ絶対的な壁の存在。本当の死の恐怖。それを乗り越えない限り君と並び立つと私は認めないわ。妥協は君に対する侮辱よ”藤宮くん”」
「・・・そうですね。少なくとも彼らはあの『アール』にとっては戦友となり得るでしょう。老いて甘くなった彼にならばね」
「君のそういう厳しい評価。本当に好きよ私たち。だからこそ、私たちは君に惚れ込んだの」
運営陣のみなさんの視線が俺に集まった。全員の期待に満ち溢れた思いを受けて、俺も覚悟を入れ直す。五代目剣聖アールは今一度眠りにつく。
「総員最後の仕上げよ。希望と未来への覚悟を持った彼らのプライドをへし折るわ。それでもなお立ち上がる彼らの覚悟を、私たちは期待する。各員手抜きも妥協も許さない。全力で”戦いなさい”」
「「「「「『・・・』」」」」」
無言のまま力強く頷くエクスゼウス社員一同。そして綾地さんに背を押され、俺も皆さんへと言葉を紡ぐ。覚醒したもう一人の俺が表舞台に再臨する。
「諸君。ここから起こるのは正義の行いじゃない。俺たちのエゴから生まれた戦いだ。だが純粋な欲から生まれた戦いだ。胸を張って誇れ、戦え。例え散るとしても最後まで胸に刻んだその思いを貫き通せ」
「「「「「『・・・』」」」」」
「勝利を疑わない彼らを、俺たちのエゴのために殺せ。蹂躙しろ。全てを奪って我らが悲願。必ず成し遂げる。お前たちの覚悟をもって、奴らの生ぬるい覚悟を殺し尽くせぇ!!」
「「「「「『オオオオオォォ!!!!!』」」」」」
勝利を目指す彼らに立ちはだかる敵の名は『魔剣聖』。その残り続けた破滅の意思が真っ向から迎え撃つ。
次回はついに運営陣営とプレイヤーによる全面対決が始まります。
今回のイベントボスはつまりそういうことですはい。




