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269:過去と未来の遭遇

過去はアール。じゃぁ未来は?

――――◇――――



「ちょっときゅうけい・・!!?」



「もう少し頑張ろう。大丈夫さ。君たちならできる」



「要求値が高すぎませんかねぇ!!?」



――――◇――――



「ふっ・・・はっ、やぁ!!」



「いい感じだ。気を抜かずにそのまま続けていこうか」



「はいアール殿!!」



――――◇――――



「シィィ!!!」



「甘い」



「チィッ!!」



「まさか死んでから決闘を挑まれるとはな。まぁこれも一興」



「まだ・・届かんのか!!?」



――――◇――――



「アール!!  アール?」



「ま・・・まさか出会っていきなり抱きつかれるとは・・・不思議な体験だ」



「・・・・?? ・・・・あ、そういうことなんだ。ごめんなさい。”知り合い”に似てたのでつい」



「そうか・・・その知り合いはそんなに俺に似ているのか?」



「はい。とっても似ています。貴方と彼はまるで写し身なんじゃないかてほどに」



「そうか・・・一つ教えてくれ。その人は、強いか?」



「強いですよ。だって、私の恋人は強さの頂きに名を連ねていますから」



「そうか・・・ならば聞こう。君はそんな人の横に立つための力を欲するか?」



「はい。私はあなたの力が欲しい。あの人と一緒に戦うために」



――――◇――――



「こうです?」



「うーん・・・もう少しキレが欲しいな」



「ですよね〜。しかし盾でもこんな風に戦えるんですね」



「受け流すことを主体にしたのがこの流派なんだ。応用はいくらでも出来るさ」



「盾ここだと痛いし重いし正直諦めかけてたんですけどね実は」



「でも貴方は持ち続けたんだ。その覚悟、俺は素晴らしいと思うよ」



「あはは、アールさんに言われるとやっぱ嬉しいね。続きお願いしますよ! 大先生!」



――――◇――――



全員が共にするゲーム内時間で一週間が経過した。レベルの概念が存在しないため数値での強さは一切不明な今回のイベント。



それでもプレイヤーの皆は環境に適応し、どんどん強くなっていく。身の丈にあった武器選びや連携攻撃、自分の立ち回りなどを事細かく確認し、死なないための戦い方を着々とモノにしていった。



そんな中、俺が特に強くなっていくと思うのはやっぱり『アールの弟子』たちだ。まぁ実際積み重ねた質と時間が大勢とは違う。



「主任。アセンシード民ですけど塔までのマッピング完了したみたいですよ。犠牲者も結構いますけどいいペースですわ」



「アマツテンは逆に一番遅いですわ。けど犠牲者も一番少ないのは評価できます」



「ルクシントは町をまとめあげて堅実に行ってますね。やっぱり指導者としてのカリスマあるとヤベェわ」



「ラクメツは個々の強さがヤバイデース! 特に『蒼牙』と『雷華』がずば抜けてマース!」



「なかなかいいペースじゃない。こっちの想像をいい意味で超えてきたわね」



一週間も経過すれば強くなる秘訣、掲示板でコテハン獲得条件もかなり特定されてきた。まぁ初日からほとんど核心をついていたのだが・・・



今回のイベントで運営が目指していた真の目的。それはプレイヤースキルの強化である。システムに頼らずに戦う強さと、これから実装するモンスターと戦えるようにするのが目的らしい。



まぁそのままの状態だと強くなるためには一年ほどかかるので意識に少しだけ干渉して学習能力を底上げしているとか。



それって脳科学の分野なのでは? いや、でもここの会社あらゆる分野のエキスパートがいても不思議じゃないしそういうこともあるのかも?



「アールくん次の出番きましたよ。今度は学生さん達だね。よろよろー」



「了解」



ちなみに俺も『月光征流』を教えた時間もたぶん二年ほど経過していると思う。プレイヤーの数だけ教えてるから基礎だけでも凄まじい練度になっているとは思う。



おかげで最初にマイとミヤコ教えた時よりも技と動きに磨きがかかった。教えている内容は同じだからあとはその人の努力次第ではあるけどな?



さて、今度の人はどこまで強くなるのやら?





――――◇――――





「・・・人の気配がするとは珍しいな」



「っ!!? その声・・!!?」



そこにいたのは軽めのアーマープレートを身につけた学生くらいの青年だろうか? 他にも戦い慣れていない感じはするが、訓練だけはしてきました的な雰囲気を持っている人がチラホラといた。



マジで団体様御一行じゃないか。Kさんは学生の一団と言っていたから今日まで戦い抜いた仲良し組なんだろうと思ったけど、なんか大人も混じってるし。



ちなみに今回は斬撃が一切通じない装甲を身に付けたリザードマンの長『キングリザードマン』の住処で俺の意思が眠る祠にたどり着いた人たちという設定である。



「最近はいろんな人の意思を感じるな。だがそれがとても嬉しい」



「・・・どなたでしょうか? あなたの目的は? ここは一体どこです?」



初老の男性。けど強く握られた刀と、俺に向ける警戒心はほかの者よりも一段階大きく強い。守るという強い意志を感じる。



警戒心を解いてもらえるように言葉を選びながら話していく。この場所のこと。何故ここにいるかということ。そして、俺の名前を。



「アール・・・? それがあなたの名前なんですか?」



「そうだよ。といってもここにいる俺はもう死んでる人間だ。言うならば過去の人間だ」



「この人がアール・・・でも思ってたイメージと違う?」



「・・・そうか。最近は沢山の意思と出会ったから、俺のことを知っている人も増えたのか・・・嬉しいねぇ」



「な・・・なぁあんた!! あんたなら俺たちを助けてくれるって聞いたんだ!!」



「ちょっと帳くん!?」



帳、そう呼ばれた青年が俺にすがるように俺のそばまでやってきた。その顔色には余裕がない。ここに来る経緯もかなりの物だ。そうなっても仕方ないか。



「頼む!! 助けてくれ!! 助かるならなんだってする!! だから頼むよ!!」



「ちょっと帳! 落ち着けって!! 確かに噂では助けてくれるらしいけど信用していいのかまだわからないんだぞ!?」



「けど今のままじゃこのまま全員死んじまうんだぞ!? 生き残るためなら悪魔にだって媚びてやるよ俺は!」



「まぁ負ける勝負には乗りたくないな。私は帳くんに賛成するわ」



「草奈ちゃんまで・・・あぁもう!! 私もこうなったらヤケクソってやつよ!! 悪魔だとしてもやってやろうじゃないの!!」



「・・・そうだな。みんなでここまで生き残ったんだ。可能性がまだあるなら俺も最上たちと同じ考えだ」



「悪いけどアタシは完全には信用できない。情報操作がされている可能性だってありえるんだし、今までだってこの世界の人を信頼出来た試しがないよ」



「えとその・・私も氷川さんに・・・賛成・・・です」



なんかよくわからないが俺のことを警戒する派と、生き残る為に悪魔だとしても頼ろうとする

派に別れかけてる。



集団生活のしすぎで精神的に辛いようでなんか分裂しそうなんだけど? まぁこういう時のケアも俺の仕事になるわけだし。俺に関わって人間関係がぐちゃぐちゃになるのは嫌だしな。



「俺は・・・こいつを信頼できる人だと思う。いや、信用してもいい」



「剣部くん!!?」



口を開こうとしたとき、最初に俺の声を聞いて驚いていた青年が全員に聞こえるように声を上げた。



「理由は上手く話せない。けどこいつは・・・この世界に来て初めて、いや、この世界で誰よりも信用できると思ったんだ」



剣部青年の言葉に絶句している者もいる。きっとかなり過酷な環境で戦い抜いてきたんだろうな。アセンシードは強者が偉いと言っている街だしそれなりの辛い思いもしてきたんだろう。



それでも俺を信用できると明言した彼。感覚的に思うんだが、俺も剣部青年に関しては信用してもいいと思える何かを感じた。そう。まるで魔剣聖アルトスと話しているような感じがした。



隠し事はするが嘘だけはつかない真っ直ぐな奴。言わなきゃいいのにバカ正直に話すから時々問題も起こすけど、誰よりも信用できる幼馴染。まさかここでそんなことを思い出すなんて。



「なぁアール。あんたは俺たちの今の状況を知ってるか?」



「わからない。ただ君たちの状況と言動。それから立ち振る舞い。そして絶望の中にあった確かな強い意志。それらがあったからこそ、君たちをここに呼べたんだ」



「っ!!? なんでそこまでわかったの!? まさか貴方全部見てたの!?」



デカイ男・・・いや漢女? リアルボンちゃんみたいな人が驚いているがどうやら正解したらしい。ってことは『キングリザードマン』と遭遇してるみたいだ。



見渡せば装備はそこそこ。けどどれも相性悪く『キングリザードマン』の装甲を破れそうな物は持っていない。



「言ったろ? 君たちを”視て”予測した。眼はいい方なんでな」



「眼で”視て”・・・か。うん。やっぱり俺はお前を信用する。みんな。俺を信じてくれるならコイツのこと信用してくれないだろうか? 頼む」



剣部青年が俺のとなりに来ると、みんなの方に振り返り頭を下げた。その光景も珍しいものだったんだろう。みんな驚きと困惑の表情だった。



「零司が信用できるって言うなら私はこの人のこと信用するよ。だって零司のこんな姿見るの久しぶりだし」



「綾子が信用するなら私も信用してもいいわ。綾子も眼が良いし、その綾子が見定めた剣部くんが信用するなら信用できる」



「先輩が信用するなら私も! それに剣部くんがいたからなんだかんだ今日まで全員無事でしたから彼の直感を信じることにかけましょう」



「えと・・・やっぱり剣部くんと・・・鈴原先輩が・・・・信用するなら・・・・信用します」



反対と言っていた人たちも、剣部青年の言葉を受け止めていく。このパーティーの中心的存在なんだろうな剣部くん。まぁ謎のカリスマ性をヒシヒシと感じるし。俺がリアル剣聖なら、彼はリアル魔剣聖って所だろうな。



そんなことを思いながら待っていると、パーティー全員の意志をまとめたようで、代表して剣部青年が俺に向かって口を開いた。



「話はまとまった。頼む。俺たちは生きて帰りたい、だからアンタの力を貸してくれ」



「・・・・」



「アール?」



「俺は君たちに力を貸せない」



「っ!!? そんなっ!!? だって貴方さっきっ!?」



「最上落ち着け。すまない。続けてくれ」



「あぁ、俺は死者だ。ここで何かをしても現世への干渉は、今こうして君たち意識に触れる、この空間に呼ぶことくらいだ。意識が肉体に戻ってもきっと数秒程度の時間だろう。だが、俺が生涯をかけて磨き上げたことをこの空間を使って教えることはできる。運命を切り開くことは自分でしか出来ない。自分の意思だけがどんな運命にも立ち向かえるんだ」



「っ!!? やっぱり・・・あぁその通りだ。悪かった。言い方を変える。生きて帰るための力を俺たちに教えてくれ」



やっぱり俺剣部くんのこと結構好きだ。かなりアルトスに似てるし、なんか放っておけない。



「もちろんだ。生きる意志を持つ者たちよ。五代目剣聖の名を授かった者として、過去を生きた者として、未来を生きる君たちに教えられることを教えよう。時間は有限だ。早速始めようか」



ちなみに修行内約

素振り、回避訓練、月光征流の基礎訓練及び模擬戦

これを飲み食い睡眠無しで、休憩はするけど一週間ぶっ続け。精神だけなので三大欲求も存在しません。なので修行三昧。アール(完全RPモード)にとっては理想的空間。


まぁほかの人も時間の概念がわからないため永遠と続けてるんですけどね?

ちなみにこのトンデモ空間に入り込むと、是が非でも基礎が固まるまで逃げられない。時間制限とは?


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― 新着の感想 ―
[一言] この物語は、動き出した。 2つの星の邂逅とともに。 いや、あるいはもう動き出していたのかもしれない。
[一言] 運営………良くやった(^^)b
[一言] おお!やっと!ついに!剣聖と魔剣聖が出会った! 魔剣聖君のこと好きだからかなり嬉しいです! アールさん!魔剣聖みたいじゃなくて本人だから!気づいて!
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