264:参加者たちの様子
全員は書ききれないので彼らに代表してもらいました。
それではどうぞ。
「あらよっと!!!」
男が振り抜いた槍が狼型モンスター『ビルウルフ』を吹き飛ばした。吹き飛ばされた『ビルウルフ』の射線上にはもうひとり、軽装の女性剣士が構えていた。
「ぞうもつ行ったぜ!」
「略すな教祖!!」
教祖・・・ライーダに言われずともわかっていると言いたげに、ぞうもつまるはすれ違いざまに一閃、『ビルウルフ』を切り裂いた。
それが決め手となり、『ビルウルフ』はピクリとも動かなくなった。
「・・・・・・今ので最後?」
「だと思うけどなぁ」
「周辺を見て回りましたけどとりあえずは今のでラストでしたよ」
「流石お二人さん。私たちが見回りしてる間に一匹仕留めたんだね」
集まったのは五人のパーティー。今まさにモンスターを仕留めた二人とは別行動をとっていた三人が合流した。その手には食べられそうな果実や竹水筒があり、彼らも食料を探しに出ていたらしい。
「山田さん。それ食えるの? 見るからに毒々しいけど?」
「大丈夫ですよライーダさん。毒がないことは確認できてます。口に入れても問題なかったのであとは調理しだいです」
「凄かったよ山田さん。流石サバイバルの達人って感じで」
「サクラさんだって目がいいです。この果物だって半分以上はサクラさんの手柄ですし」
「私は水汲んできただけだけどね」
「いえいえ彩花さん。水はサバイバルにとって最も重要なものです。水を確保出来たということはそれだけ生存率が上がることを意味しています」」
彼らは常日頃からサバイバル生活をしている『フリー団』の実働部隊。今回のイベント前にもサバイバル生活真っ最中であり、ここに来た時も五人揃っていたのである。
サバイバルの達人と呼ばれていた『山田さん』は食べられる物を見分け、『サクラ』が多くの果実を発見する。最も大切な水に関しては『彩花』が河川を発見し、即席で作った竹の水筒で全員分を確保していた。
『フリー団』で最も戦闘に向いていた『ライーダ』と『ぞうもつまる』は『ビルウルフ』を一匹誘い出し、仕留めるつもりだったのだが、残念なことに群れを引っ張ってしまったために、逃走と誘い出しを何度も行いようやく、一匹だけを誘い出し、仕留めていた。
「ねぇ、それもいいけどこいつの解体手伝ってくれない? 流石に一人だと辛いんだけど」
「頑張れーぞうもつまるー! ぞうもつだけにー」
「うっわ教祖うっわっ!」
「ライーダさん。ともかく手伝いましょうよ。今日の夕食なんですから」
「はいさ。でもステータス初期に戻された挙句、装備も初期、ステータスの身体能力アシストもないのってかなり辛いな」
今回のイベントでは、ステータスが全て初期に戻された挙句、ステータスによる身体能力上昇もない。そのため未だ多くの参加者たちはまともに動けず、各町で状況の整理と自分に出来ることを確認している真っ最中だった。
そんな中で、彼らの様にいきなりフィールドに出てモンスターと戦っているのは異常であるとも言えた。しかし彼らはそんなこと気にせず、いつものように、今の現状を楽しんでいた。
「これカレイさんならどんな風に調理してくれるかな?」
「ヤイチさんもいますし『なんちゃってオカルト焼き』みたいな感じで上手く調理してくれると思いますよ」
実にのんきなものだ。しかし現状に即座に適応するその能力は素晴らしいものである。全員で狩った『ビルウルフ』の解体を行いつつ、周辺の警戒を怠らない。
慣れているからこそできる芸当であった。
「ところでなんで二人共この『なんちゃってリアルハードモード』状況でそこまで動けるの?」
今更ながらの疑問を問う『サクラ』に、『ライーダ』と『ぞうもつまる』はさも当然のように返答した。
「「だってリアルハードモードより軽く動けるしエクストラモードよりも楽な感じだし(からね)」」
何を隠そうこの二人、数少ない『リアルハードモード経験者』であり、『エクストラモード』に最近変更していた二人である。ちなみに変更したことを誰かに言ったりはしていない。
「え゛っ? 初耳なんだけど? でもなんで?」
「私はルーク君に尊敬されたくて」
「エクストラモードならルークきゅんを合法的に触っていいとおもって」
どちらも『ルーク』に熱狂的な信徒である。片方は謎の宗教すら立ち上げているが、今は置いておくとしよう。そんな理由(彼らに言うと語りだすため黙っているが)でモード変更した二人に呆れつつも、今回においては助かったと思うサクラであった。
ちなみにこの日の夕食は『カレイ』お手製『獣肉のオカルトソース仕立て。果実を添えて』であった。かなり美味すぎて、ライーダとヤイチがうるさかったと、街でたまたま居合わせた『ハク』は後日語るのだった。
――――◇――――
「いきなり始まったからちょっと不安だったけどよく考えたら不安要素なかったよね」
「だよね〜。元々エクスゼウスなら何しても不思議じゃなかったし寧ろ今までよくおとなしくしてたよねって感じかも」
彼女たちはエクスゼウス信者とも言えるプラネットクロニクル初期勢。いきなり始まった新規シナリオにもすぐに対応し、早速街の散策と、自分たちが出来ることを確認していた。
「でも、やりやがったって感じ。まさかエクストラモード強制なんてね」
「違和感がないのが違和感って感じだよね。武器も短剣くらいしかまともに使えないのが不満といえば不満だよ」
「スキルもステータスも一切なし上に、リトライ出来ないのは鬼畜難易度。リアルハードモードの再来だよねこれ」
二人組の彼女たちが言うように、今回のワールドシナリオでは『擬似リアルハードモード』とでも言うべき状態だった。痛いものは痛いし、重い物は重い。普通のゲームではありえない生身と変わらない感覚に戸惑ったものの、こうして探索をしているあたり図太い精神の持ち主である。
「でもどうしよっか? たぶん出てくるモンスターの強さもわからないし、このまま出てったら絶対に殺られるよね今」
「間違いないよ。でもだからって引きこもりになるのは嫌だし。だからこそ探索してるんだしね〜」
彼女たちは死なないために、情報を集めつつ、何かいい方法がないか街中を探索している。同じ考えを持ったプレイヤーたちも徐々に動き始めてはいるが、彼女たちが一番早いだろう。
そんな彼女たちは街の外れまで来ていた。街での情報収集では出遅れると思った彼女たちは
多少の危険は覚悟して、町外れの探索に挑んでいた。これで何もなければ骨折り損の草臥れ儲けだし、最悪モンスターに襲われて殺されるリスクも出てくる。
幸いにも未だモンスターとの遭遇は0で、安全な探索ができている。だが現実は非常である。
『――――!!』
「「ヤバッ!!?」」
彼女たちの目の前に現れたのは成人男性よりも少し大きな熊型のモンスターだった。名前を『モンスターベアフ』という。名前など彼女たちが知る由もないが、彼女たちが勝てる要素がないことは経験上すぐに理解した。
そして『モンスターベアフ』はその表情から飢えているのがまるわかりで、ようやく見つけた獲物を逃さんと、既に臨戦態勢だった。
「逃げるよマイ!!」
「命を大事に!! 戦力的撤退!!!」
『――――!!!!』
二人が踵を返し逃げ出す。『モンスターベアフ』も逃さんと追いかけていく。幸いしたのは実際の熊のように時速50kmではなく、学生陸上選手が走る程度の速さだったことだ。それにしたって速いものは速い。
逃げることに集中している彼女たちではあるが、身につけている装備の重量と、ここまで歩いてきた疲労感により徐々に距離を詰められていく。
「ヤバイヤバイ!!! どうするミヤコ!!?」
「囮作戦生贄差し出すのは無しだからねマイ!!」
「それは当然!! けどヤバイ!! っ!!? ミヤコあそこ!!」
マイと呼ばれている女性の視線の先には丁度人が一人通れるような洞窟。どうやら今まで歩いてきた道から外れて逃げていたらしい。だが地獄に仏とはこの事だと言わんばかりに彼女たちは即決した。
「マイ!!」
「OKミヤコ!! 遅れないでよね!!」
元々二人で組んでいる彼女たち。最低限の言葉だけで互いの言いたいことを理解して、彼女たちは縦に並び、洞窟の中へと入っていった。
後ろを走っていたミヤコが洞窟に侵入すると、直後に『モンスターベアフ』が入口に激突。腕を伸ばしミヤコを掴もうとするが、ギリギリ腕が届くことはなかった。
「あっぶなぁ・・・マジで死んだと思った」
「私も・・・でもさミヤコ・・・悲報あるんだけど・・・」
「マイ・・・言わないで・・・マジでどうしよう・・・」
彼女たちが逃げ込んだ洞窟だと思った場所は、洞窟ではなく、横穴だった。広さはそこそこあるが入口から入る光で全貌がわかる程度の多少広い空間。入口であり、出口でもある場所には『モンスターベアフ』が陣取っており、逃げ場はない。
「誰かに助けてもらうか、熊が諦めるまでここで過ごすしかないよねこれ・・・」
「助けてもらうのはたぶん無理だよね・・・やり過ごすにもやりくりしても三食しかないよ・・・」
「「どうしよう・・・」」
逃げ込んでしまった故に絶望感しかなくなってしまった二人。幸いにも入口は硬い岩盤だったらしく、『モンスターベアフ』が入口を崩そうと暴れているがびくともしない。しかし時間の問題であることを二人共察していた。
「ごめんねマイ。私が街の外行こうなんて言ったから・・・」
「気にしないでいいよミヤコ。私だって同じこと考えたから反対しなかったんだもん。死ぬときは一緒だよ」
「マイ・・・ありがとう」
見る人がみれば白百合が咲き誇り、健全な人が見れば美しい友情な一場面。諦めからか少し心にゆとりが出来たのだろう。それが彼女たちの運命を変えた。
「あれ? ねぇマイ?あれってもしかして祠じゃない?」
ミヤビが指さした先には、既に朽ちていたが小さな祠があった。丁度光が差していない日陰の部分ではあったが、暗闇に慣れてきたこともあり、偶然発見出来たのだ。
「本当だ。でもボロボロだね・・・不謹慎だけどかわいそう・・・」
「うん。きっといろんな人に忘れられてこんなにボロボロになっちゃんたんだろうね」
「・・・そうだミヤコ」
「マイ。私も同じこと考えたよ」
入口では今だ暴れる『モンスターベアフ』の声が聞こえる中、達観した彼女たちは持ち合わせで祠の掃除を始めた。といっても苔を取り除いたりするくらいしかできなかったのだが。
三十分ほど時間をかけて二人は丁寧に祠をきれいにしていった。とても綺麗とは言えないが、それでも最初に比べればマシである。
「よし満足。綺麗・・・かな?」
「出来ることはしたからよし! でも、もし生き残ったらもっとキレイにしてあげるからね」
「それ賛成! こうなったら最後まで頑張らないとね!! 立て篭ってでも生き残ってやるわ!」
こんな時でも掃除をすることで、彼女たちは心にゆとりを取り戻し、生き残る為の希望を見出した。
「そういう訳なのここにいる神様。もう少しお邪魔しますね」
「喧しい二人ですけどよろしくお願いします」
祈りを捧げるように、そして神様に話すように二人は祠に手を合わせ目を閉じた。
「よし! じゃぁぁぁああああああ?!?!?!?!?!」
「うるさっ!!? ミヤコいきなり叫ばなぁぁあああ!!?」
目を開けたふたりは目の前の光景に驚きを隠さなかった。それはそうだろう。先程まで居た場所は少し広い横穴だった。光も入口から差し込む程度。
しかし目を開けた時広がっていたのは水平線の先まで真っ白で広大な平原。二人以外の誰も存在せず、何もない。目を開けたらこんな光景が広がっていたら誰だって驚く。
「嘘ちょっとどうなってるの!!?」
「ここどこ!!?」
流石に状況を飲み込めないふたりは取り戻した冷静さを殴り捨てて慌てふためく。そんな時だった。誰のものかわからない声が聞こえた。
「・・・久しぶりだ。ここに人が来たのは」
「っ!!? 誰!!?」
流石はトップを歩く初期勢。声に反応し、即座に背中合わせで全周囲を警戒して声の主を探し始めた。声の主を探す二人の周囲に、青い光の粒子が漂い始める。
粒子はやがて形を成していく。それは人の姿だった。
「えっ!!? 嘘!!?」
「ちょっ!!? マジで!!?」
そこに現れたのはひとりの男。そしてエクスゼウス信者であれば、信者でなくとも、『剣聖物語』という作品を一度でも目にしたことがあればしている人物がそこに現れた。
「ヴァ・・・ヴァン様ッ!!?」
「様付けか・・・・・・リーラにはよく様様って言われてたけど初めて会う人に言われるとなんかむずがゆいな」
剣聖物語での看板キャラ。キャラメイクを施してはあるがそれはまさに『五代目剣聖』と後の世に伝わる『ヴァン』その人だった。
前半のフリー団ですが、彼らが本編に最初に登場した募集キャラだったので今回お願いしました。
後半二人はオリキャラです。何故かって? たまたま思いついたんです。とあるゲームやってたら。
ついに隠さなくなった過去作の主人公の登場。何するかは次回をお楽しみに。




