263:始まりの始まり
と言いわけでアールが運営サイドで参加。つまり、そういうことですはい。
運営側として参加することになった今回のワールドシナリオ。リーク達にも伝えていなかったのである意味ドッキリでもある。
少し心配なのは二人が暴れださないかどうかということだ。まぁなんだかんだ言いつつ節度ある二人だと信じたいので心配しないでおこう。
「しゅにーん。あちこちからまぁまぁ来ますぜいろんなご意見が」
「どれもつまんないものばっかりなんで担当AIに任せてマース。いいデースよね?」
「どうしても嫌だって言う奴がいるならログアウトさせてやりなさい。注意書きで後悔しても知らないぞってちゃんと大きな文字で入れときなさいよ?」
「「「「はーい」」」」
イベント開始から30分、凄まじい量の問い合わせにも関わらず、主任さんたちは他愛ない日常会話でもするようにのろのろと、けれど凄まじい処理能力を披露して捌いていく。どうしてよそ見しながら対応できているのか、ぜひ教えて欲しい。でも的確な返答だったりするのですごい。
俺たちの前に映し出されているモニターには大勢のプレイヤーの姿がある。けれど全員が全く同じ装備で、顔つき以外はほとんど似たような格好。否、似たような格好ではなく、正確に言えば同じ装備なのだ。
全員初期装備なのである。誰もが同じものを持っている初期装備。この空間へと転移した全ての生命が初期装備状態でこの世界へと転移してきたのだ。
さて今回のイベント、もとい特殊ワールドシナリオだが、先日俺がモーションテストを行ったあの環境に調整を加えた特殊環境を採用している。
限りなく現実であり、非現実でもある。そんな物理法則が適応された世界なんだ。まぁ特殊な法則なので肉体的に習得していればどんなことでも出来るというトンデモ空間である。
「トップ陣営はどんな感じかしら?」
「さすが適応が早いっすわ。攻略に乗り出してたり、街の混乱収めるのに尽力してます。こっちの理想に限りなく近い状況なんで攻略もいい感じに進むんじゃないですかねこれ」
「主任、早速死者出ましたわ。とりあえず収容所に意識しまっとく感じでいいですよね?」
「概要読まずにイキったバカの末路ね。それで構わないわ。ついでにまだ生存してるプレイヤーに『概要読め』って再通知しときなさい」
「おっ? さすが数少ないエクストラ選択者。適応してやがる」
「マジで? マジじゃんしかも雷華さんやん。やべー動きしてんなぁおい」
「この人200歳超えてる仙人説あるしこれくらいは寧ろ出来て当然じゃね? という訳で熟女好きの俺は懐刀目指して潜ってきます」
「俺は蒼牙くんを推すぜ!! 孤高の荒武者って感じがたまらん!! ライバルポジ目指して俺氏凸って来ます。後任せたぜ!」
「痛みに耐えかねて引きこもり選択してる奴はけーん! 盗賊そそのかしたろ。んじゃ盗賊の長唆しにイッテキマース」
「「「逝ってらっしゃーい」」」
自由すぎる運営陣。と言うか完全に私利私欲で運営ほったらかして自分もイベントに参加し始めているし。これだけ聞くと無責任な人たちだと思われがちなのだが、今さっき『逝ってらっしゃい』といった運営の方々も既にリラックスモードで人間観察に勤しんでいられる。
こんな状態にも関わらず、バグなどの事象が一切発生していないのですごいと思う。まぁこの人たちならあとは見守るだけの状態なんだと思えるので俺も気にしていない。
たぶん一般人ならやれ真面目に仕事しろだの、やれ真摯に取り組めだの言うに違いない。と言うか絶対に言う。
『マスターへ進言。一部プレイヤーによるPK計画を発見』
「アイちゃんナイス。警告通知よろしくね」
『承知。無視された場合は如何しましょうか?』
「‘‘豚箱‘‘に叩き込みなさい。一年もいれば更生するでしょうし」
『承知しました。闘罰場への収容の実行を準備します』
「あらら、警告無視したのね。しゃーない」
アイちゃん。エクスゼウスが生み出した超AI。プラネットクロニクルの運営にも関わっており、メタ的発言になるが、生息するモンスターの知能を自然のままに再現したり、特殊な環境化で生まれたモンスターたちの知能を創生している。
今回のシナリオでもプレイヤーの人間観察・・・じゃなかった。監視や心身状態の管理などを全面的に行っており、正直アイちゃん一人でも十分な処理能力がある。
何でも以前の学者ゴブリンの知性も担当していたらしい。あそこまで下衆な知性も生み出せるとか恐ろしいと思う。初めて出会ったとき、人間に対して反旗を翻したりしないのか少し不安になったのだが・・・
『質問します。藤宮様。何か飲みますか?』
「気にしないでいいぜアイちゃん。のんびりしてるから」
アイちゃんかなり人懐っこく、初めて会った俺ともすぐに打ち解けたのである。VR空間での肉体も持っているのだが、今回は声だけである。
『了解しました。一生懸命美味しい紅茶の入れ方を勉強したので味わってもらいたかったのでしょんぼりします』
「ちょっとアイちゃん!? 私が大丈夫っていった時はしょんぼりなんてしなかったじゃない!!?」
『返答します。マスター達はいつでも会えますので。しかし藤宮様は毎日のようには会えませんのでしょんぼりしています。』
「あはは・・・アイちゃんやっぱりもらえるか? 砂糖多めで」
『了解しました。嬉しさのあまり小躍りしながら手元が狂いそうです。キャッキャ』
「むぅ!! アイちゃん!! 再教育するわよ!?」
『ごめんなさい発言を撤回しますからそれだけは本当に許してくださいなんでもしますから絶対に許してください本当にごめんなさい許してください絶対に不正や問題など起こしません私の全てをかけて約束しますので許してくださいマスター』
「仕方ないわね。じゃぁ私にも頂戴?」
『喜んで』
主従関係がはっきりしているのである。何でも以前バグってやらかしたらしく、その時に人間(社員の皆さん)VS超AIのアイちゃんとの全面戦争が起こったらしい。勝者となった社員の皆さん、主に綾地さんがその後アイちゃんを再教育したためとのこと。
それがトラウマになったようでそれ以降暴走することはなくなったらしい。でもイタズラくらいは今でもするみたいだが、『可愛い我が子のお茶目』ということで見なかったことにしているらしい。
なんだかんだ言っても自分たちが生み出したアイちゃんには優しいのだ。まぁアイちゃんも綾地さん達が好きみたいなのでいい関係なんだろう。
人間ってAIにも勝てるんだなぁとか思った人。俺もそう思う。やっぱりここの技術力やべぇ。
「あ、主任。トップ駆け出してる二人組が祠に近づいてますわ」
「あら早いわね。アールくんお願いできるかしら?」
主任Xさんはじめとするみなさんの視線がこちらに集まった。全員が全員期待した顔でこっちを見てくるんだもん。アイちゃんもウィンドウを展開して顔文字で『((o(´∀`)o))』とたっぷり表示している。
「そのために俺がここにいますからね。任せてください」
「「「「「「「「「「「「「「「『キタァァァー!!!』」」」」」」」」」」」」」」
という訳で早速俺の出番です。何をするかというと、ぶっちゃけいつもやってることと同じだ。俺がしている。と言うか俺がやりたいことをいつもと同じようにやるだけ。
相手がプレイヤーということを除けば何も変わらない。さて、最初のプレイヤーは一体どのくらい頑張れるだろうか。楽しみだ。期待に胸を躍らせながら、俺の体は用意された別空間へとシフトしていく。
全国のエクスゼウスファンの皆さん。ここからサービスタイム開始です。
運営サイドをアール視点で書くの楽しいッ




