202:橋を架けるためにⅠ
「行くぞオラァ!!!!!!」
「「「「「「「「「「「「「オオオオオオオ!!!!!!!!」」」」」」」」」」」」」
掛け声と共に橋の周囲をうろついているモンスターへと突っ込んでいく俺たち。モンスターたちもこちらに気づき迎え撃つべくそれぞれ動き出す。
動き出したのを見て各員散開してそれぞれ見定めた標的めがけて向かっていく。巨人やオークの数は先程よりも増えているような気もするがこちらだって人数は増えている。
自分たちの得意とする武器と距離をとり、モンスター達と戦闘を開始する。報酬が高級部位での焼肉食べ放題ということもあり、全員食事前の大運動会とでも言えるような勢いだ。
俺は『艶姫刀:クヴァレイドル』を片手に文字通り巨人へと跳んでいく。そのまま刃を心臓へと突き立てて抉るように刃を動かす。痛みにより巨人は叫び声を上げるが、支援ジョブ持ちによる『咆哮耐性』を付与してくれたおかげで全然平気である。
ちなみにこれがないと曰く『三日は耳がジンジンする』そうだ。ソロの時はディアの機転によって耳の保護はなされたので勿論無事である。
「肉肉肉!!!!! スーパー焼肉タイム也ィィィ★★★」
倒れていく巨人の上から見えたのは、目が骨付き肉になりながらオークの全身を切り裂いていくのは『ああああ』ことシアだ。以前、ブリガンテより武器を取り返したことで真化したと思われる武器をまるで見せつけ煽るように戦うシア。
「スキヤキィィィィィィィ(☆∀☆)!!!!」
多分『隙アリ』と言いたかったんだろうけど、完全に思考が肉に染め上げられている。おちゃらけているように見えるのか、オークは怒りのまま動き、シアを叩き潰そうとするのだが、その攻撃をことごとく躱し、確実にダメージを与えている。
「おいシア、油断すんなよ?」
「大丈夫だもーん!! アールさんからもらったアクセちゃんとつけてるし!!!」
「「「「アール(君)後でちょっとお話があります(あるのじゃ)(あるから)」」」」
「仕事のアクセ!!!」
「「「「ならば良し」」」」
そういえば説明してませんでした。さっきまで上下がはっきりしていたのに共通のことがあれば即座に並行繋ぎになる仲の良さはアコガレルナァ?
倒れる巨人から飛び立ち、次の巨人へと向かいその命を断つ。
「いざ往かん!! 私が私であるために!!!私の『祈り』は皆を救うために!!私の『誓い』は皆を守るために!!! オォォォォォォオオオオオ!!! 私が行くぞォォx!!!!」
大地を震わせているのではないかと錯覚するほどの声を張り上げて、モンスターへと突撃するニコニーコさんの姿があった。握り締める拳を振るい次々とモンスターをダウンさせていく。武器は俺と同じ籠手のようで、近くにいるオークを殴り、投げ飛ばし、蹴り飛ばしていく。
『OOOOOOOOO!!!!!!』
巨人が一匹そんなニコニーコさんの元へと向かいながら大きく腕を振り上げた。標的は言うまでもなくニコニーコさん。手近のオークを殴り飛ばし、ニコニーコさんは己の拳を力強くにぎりしめ、巨人へと顔を向けた。
「これが私の全身全霊!! 全力全開の一撃だぁぁあああ!!!!!!!!」
巨人の拳とニコニーコさんの拳がぶつかり合う。体格差を考えればニコニーコさんが勝てる道理はない。少なくとも3倍はあるのだから。
しかし、この場においてそんな常識は通じない。ぶつかったニコニーコさんの拳はその衝撃を文字通り叩きつけ、巨人の腕を引きちぎるように吹き飛ばし、巨人の巨体すらその余波で吹き飛ばした。
それだけじゃない。殴った衝撃が殴った正面へ暴風となって吹き荒れる。その風は迫るモンスターを吹き飛ばし、その風だけで数匹のモンスターの一部を吹き飛ばしてしまった。
「ブレイブゥゥゥオネストォォォォスマァァァァッシュ!!!」
影響受けすぎだろニコニーコさん。でもあの平和の象徴さんをここまでリスペクトしているところはカッコイイわマジで。
多分これがワンシーンなら間違いなく強敵との最後の殴り合いでのワンシーン以外考えられないほどの威力だった。
「このニコニーコ!!! 人助けのためならばこの力を惜しむことはしない!! モンスター達よ!! 覚悟があるならかかってくるがいい!!!」
漢だねぇ。これはうん。ファンが出てくるのも納得だわ。俺も負けてられない。獲物に定めたオークに向けて一気に駆け抜ける。抜いていた『クヴァレイドル』を鞘に収め、獲物との距離を詰める。
「アール君!! もしよかったらあの技やりませんかっ!!?」
「ヴァンレイさんいいですね!! やりましょうか!!」
同じタイミングで駆けてきた『ヴァンレイ』さんと言葉を交わした。お互いにやろうとしていることが一緒だとわかるからな。
「行くよ!! 天匠流抜刀術重奥義!!」
重奥義。
同じ流派を学ぶ者が二人以上で同時に繰り出す技のコンビネーション。そして『天匠流抜刀術』でこれを使うならばもはやこの奥義以外には考えられないだろう。
そもそも天匠流抜刀術といえば通常『鏡雀』しかないのでコンビ技となれば自然と限られてくる。だからこそ、個々の熟練度、完成度がモノを言うんだ。
ヴァンレイさんから合わせるって誘ってきたんだ。それだけの自信があるんだろう。なら俺が乗らない理由はないんだぜ?
ヴァンレイさんが跳び上がり。そのまま横薙ぎに『鏡雀』を繰り出し、その直後に、跳んだ俺が縦に『鏡雀』を繰り出す。
ヴァンレイさんはそのままオークの後方へと着地して鞘に刀を収めていく。俺も着地と同時に少しだけ刃を抜いた状態で留める。
「「天匠流抜刀術重奥義『鏡十字雀』」」
『鏡十字雀』は『鏡雀』で行う十文字切りなのだ。タイミングよく音が鳴るようにカチリと鞘に刃を収める。次の瞬間、オークが骨ごと十字に切り裂かれ、切断面からは全身の体液をまき散らしながら地面に崩れ落ちていく。
「「ナイスタイミング!!」」
なにげに俺以外でこうしてスキルなしで鏡雀使うプレイヤーと合わせるのルーク以外では初めてなんだよ。
しかもルークと違い、前作『剣聖物語』からのファンなのでお互いに何をしようかは言わずとも見れば分かるのだ。タイミングは先出ししてもらい俺が合わせればいいのでとても楽しい。
「それじゃぁまた後で!! この感情!! まさしく感動だ!!!」
「ヴァンレイさん、そこは『愛』って言っとこうぜ?」
「それは恥ずかしいから無理だよ!!!」
次の獲物に向かいながら、迫るオークを切り裂いていく『ヴァンレイ』さん。あっという間に遠くに離れていくと、俺が油断していると勘違いしたのか巨人が大きく持っていた棍棒を振り下ろしてきた。
「余計なお節介だったかな?」
「いえいえ、そんなことないですよ『クロサカ』さん」
巨大な盾を片手で持ち上げ、振り下ろされた棍棒を涼しいカオで受け止めたのはクラン『タンクウォーリアーズ』の『クロサカ』さん。巨人はそのまま押しつぶそうと両手で押し込むが、『クロサカ』さんはびくともしない。
「あ、そうだ。アール君、僕にも『星読み人』のバフってかけてもらえる? 一度体験してみたかったんだよねアレ」
「構いませんよ。助けてもらったお礼ということで。『星読み』開始、降り注げ『流星』」
――――◇――――
・『星読み』及び『流星』発動。効果対象『アール』『クロサカ』
・『防御力』『魔力』『HP』上昇
・『特殊効果:全反撃(60秒)』『特殊効果:ディフェンスアタッカー』付与
――――◇――――
『特殊効果:ディフェンスアタッカー』
・防御行為を行うと、攻撃力が上昇する。
――――◇――――
「おぉ!!?他のジョブスキルでしか発動できない特殊効果も得られるんだね!! うわぁ!これは凄いね!! シロマサが毎回『ディフェンスアタッカー』発動させるのも納得の感覚だよ!!」
盾で受け止める行為は勿論『防御行為』という判定となり、ただ押し込まれる棍棒を受け止めているだけなのに『クロサカ』さんの体から攻撃力上昇を示すエフェクトがキラキラと輝き続けている。
「吹き飛んでいきな!!『シールドバスター』!!」
そして、その上がった攻撃力が全て乗った状態で『特殊効果:全反撃』の一撃も乗ったであろうスキル攻撃が炸裂した。
攻撃を受けた巨人は一瞬で空へ打ち上げられて、そのまま空の彼方へと消えてしまった。流石に俺でも見えなくなるまでモンスターを吹き飛ばしたことなんてない。
「うひょぉ!!? 今の見た!!?」
「これは間違いなくK点超えましたね」
「だよねぇー! 他のみんなにも見せつけて自慢してくるよ!!」
そのまま盾でモンスターを押し込むように突進していくクロサカさん。ちゃっかりと周辺にいるプレイヤーの援護と支援もこなしていく。流石守りに定評が有る『タンクウォーリアーズ』の兄貴分だな。
――――◇――――
『クロサカ』より『特殊効果:マジックオブライフ(120秒)』の効果を受けました。
――――◇――――
『特殊効果:マジックオブライフ』
・攻撃するたびに回復するMP量が上昇する。MPがMAXの場合、HPが回復する。
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スゲェ便利な効果じゃん。『マジックオブライフ』。スキルでMP使用しないなら実質HP回復だし。支援盾か。やっぱりパーティーに一人いると変わりそうだな。
「お前の考えていることはなんとなくわかるけどよ? お前でよくね?」
「俺以外に受ける奴いたら俺後方支援にできるじゃん?」
相変わらず体液塗れでやってきたマー坊。言っている事はその通りなんだけど、たまには違う立ち位置で遊んでみたいんだよ。前で戦うだけが戦いじゃないし。




