146:擬似デスゲーム(ログアウトできないだけ)
書いてたら長くなってた・・・・
感想お待ちしています。
時間はほぼ無限。数日はリークの訓練に費やす。
「シィ!!!」
「っ!!」
エクストラモードに限らず、戦闘において一番大事だと思うのは身体能力である。生まれながらにもっている才能ももちろん必要だが、そんなもん無くともやる気があって継続し続ければ意外とそれは簡単に埋めることが出来る。まぁ相手も自分と同じことをしている場合はその限りではないが。
つまり何が言いたいかというと、自分の身体能力に関することであれば、努力は絶対に裏切らないのである。
という訳でリークに施すのはまず身体能力の向上。っと言っても数値で目に見えるような変化をゲーム内で作り出すことは不可能だ。それこそ現実で鍛え上げる必要があるからな。
じゃぁどうするのか。簡単である。ゲーム内でも鍛え上げられることを鍛えればいい。習得してもらえばいい。唯は元々身体能力は実家の事もあってかなり高い。それをゲームに合わせて調整してやれば今以上の動きは可能だろう。
もっと具体的に言えば近接戦闘能力の底上げである。条件反射に無条件反射、戦闘中の次の一手や後手の先を読み次に繋げる訓練などである。俺の場合は月光真流や天匠流の関係で近接特化だから修行を経てそれを習得済みだ。
要は唯の近接戦闘時の引き出しを増やすことだ。何か武道や武術を一つでも覚えてしまえばあとはそれを突き詰めて行けばいい。スキルが使えないならプレイヤースキルを上げてしまえばいいのだ。
そのプレイヤースキルを補う最小限のジョブスキルやAS・UtSという形に移行してしまえばエクストラモードだろうがリアルハードモードだろうが案外なんとかなるだろう。ごめん嘘。リアルハードはエクストラ以上に難易度高いわ。アッチはスキルとかないし。
「っと・・・これも合わなさそうだな」
「うん。と言うかアール色々出来るんだね?」
「月光流のために色々手を出したからな」
日本武道はあらかた手を出した。プロレスに総合格闘技、ムエタイにカポエラ、サバットなどの海外の武術にも少々手を出した。見様見真似だから教えるまでにはいかないが、どんな戦い方が合うかくらいは教えられるだろう。
今のところ唯にしっくりくるモノがないようで色々試している最中だ。俺としては合気道とか、実家の藤宮流とかなら簡単に教えられるけど、藤宮流は身バレする可能性高いからあんまり教えたくない。別にバレてもいいんだけども。
「武器使ってみるか?」
「それはいい。武器持っちゃうと戦闘中に持ち変えるの手間だから」
「了解。もう少し色々やってみるか」
まぁ効率を求めるんじゃなくて自分に遭う戦い方を探してるわけだしのんびり行こう。どうせ使うなら好きなものを使うのが一番いいしな。
――――◇――――
『キキキ・・・・』
「うっわ・・・アールえげつないこと考えたね・・・」
ダンジョン内。すぐに泉へ戻れるように羽玉モンスターを誘導して扉近くで戦闘開始。やはり専用スキルでのみ攻撃が通るみたいだった。ネタがわかれば怖いものなしである。
口の中に剣を差し込んで地面に縫い付け、そのまま専用スキル『横一文字切り』を繰り出した。動けば自分で自分を引き裂くし、かと言って動かなければ直撃。スキル使用時の回避性能を上げたのがアダとなったな。
しかし、それにしても不思議な感覚だ。スキル発動しているのは手が光るからなんとなくわかるけど、感覚的には何も変わらないのだ。つまるところスキル攻撃必須だが、スキル使用の感覚は全く感じない。
まぁ俺としてはやりやすいので良いんだけどな。違和感あると逆にやりづらいし。
「近々リークにも似たようなことしてもらうからな?」
そのために色々教えてるし、頑張って貰っている訳だからな。リークのため、ひいては俺のために。
「勿論だよ。それより今日の晩ご飯取れた?」
今更だがこのダンジョン、他のダンジョンやフィールドと仕様が違うようでアナウンスの類が一切ない。なので倒したことも全然わからないのだ。
代わりにモンスターを倒して数分は死体がそのまま数分間、場に残る。時間が経てばいつも通り光となって消えていく。
なので残っている間に死体から肉をはぎ取り食料にする。飲み水は泉の水があるので問題ない。調理はリークの呪文をうまく使って基本的に焼肉にする。毒とかは泉に飛び込めばなんとかなる。
「こんなもんだな」
「アール、モンスターの解体上手だね」
「似たようなモンスター解体したことあるからな・・・・生で食えるか?」
「流石に止めるからね?」
焼く手段がないときはそうするか干し肉にしてしまうしかないんだけどな。今回リークがいてくれたお陰で火には困らないから助かるよ。
ちなみにこの後、ダンジョン内に湧き水溜りを見つけて魚に魚介も僅かではあるが確保できた。あとは野菜とか見つけられたら結構食事に関しては快適に過ごせそうだ。
――――◇――――
「こう?」
「そうそう。形はそんな感じ」
リークの戦い方を模索すること数日、ちょっと試しに『月光真流』教えてみたら、まさかやりやすいと言うとは思わなかった。
いや、もしかしたら俺と同じがいいから無理して頑張っているだけかもしれないけれど。まぁ本人がそれがいいと言ったんだから頑張ってもらおう。ある意味俺としても勉強になるし。
天匠流はルークとギン、月光真流はリークとなれば教えることが増える。つまり俺自身がしっかりと理解した上で伝える必要があるわけで、自分の復習や、技の精度確認もできるので一石二鳥である。
まぁ、それにしたってびびったけどな。実はリーク、最近『剣聖物語』のリアルハードを時々再挑戦しているらしく、まだまだではあるが形だけはそれなりに出来ていたのである。
だから俺がしたのは衝撃を実際に感じてもらうことと、受け流す際の体の動き、相手の動きから推測する自分の動きが最も衝撃を捉えられる動きを瞬時に把握するための実践訓練だ。
実はこれ、普通にシナリオ通り道場通いをしているとかなり後にならないと始めさせてくれない。基礎の動きと基礎の技をある程度できるようになって初めてさせてもらえるのだ。
剣聖物語の月光真流ルートが鬼門と呼ばれるのがここにある。一番大事な修行(持論)を中々させてもらえないので全然習得できないため、シナリオ上逃れられない敵との戦いで詰むのだ。
そいつを倒すことで始まるのがこの修行なのでここで挫折する人は多いらしい。
俺?もちろん道場通いしてたけど先が見えなかったから何十回何百回繰り返しリトライして別ルート開拓したよ。見つけるまでに何回死んだか覚えてないけどな。ちなみに攻略サイトにも一切載っていない俺だけが知っているルートなので割と自慢できる。
修行においては道場の比にならないくらい辛いしキツいし、死にかけるし、痛いからおすすめは絶対にしないけどな。多分一日で心折れる奴が多発するわ。
話がそれたが、という訳でその実践訓練や衝撃の動きを感じさせることで月光真流の習得は一気に次の段階へと行けるわけだ。その壁がマジでキツいのは運営のミスだと何百人のユーザーが嘆いたけどな。
現に、それを始めた途端、リークは既に『白月』の5割、受け止めと放出がほぼほぼ完成している。後は衝撃の循環を出来るようになれば完璧だ。
「いい感じだな。リークすごいよ」
「教え方が上手なんだよ。それにアールに比べたらまだまだでしょ?」
「そりゃそうだ。簡単に超えられてたまるか」
「それだけ聞くと大人げないね・・・・そう言えば昨日新しい呪文開拓できたよ。『魚座』だからデバフ呪文」
デバフか。出来ればもう少し攻撃的な呪文が良かった気もする。デバフももちろん大切だけど。
「『赤』で唱えたら攻撃呪文に変わるから個人的には嬉しい」
前言撤回。素晴らしい。
――――◇――――
「Die Macht der Zwillinge umhüllt die Welt im Licht der Hoffnung.(双子の力が世界を希望の光で包み込んだ)」
「Die Macht der Zwillinge umhüllt die Welt im Licht der Hoffnung・・・うん。うまくいった。確かこれで『双子座』の呪文のMPが減るはずだよ」
本日は休憩。リークの呪文の解読と戦闘に役立つスキルの発掘である。エクストラモードなので勝手が違うらしいが、大きく変化したわけではないらしいので、リークの戦力強化と狂化はスムーズに進んでいる。
それにしても呪文書の解読で新呪文発掘できたり強化できるのはありがたいな。ちなみに呪文書の種類によって言葉や習得可能な呪文は違うらしい。今回はドイツ語だったらしいのでこうして俺が力になれるわけだ。
「アール。これってどんな感じ?」
「どれどれ・・・Unter den Göttern, die am Menschen verzweifelten, glaubte nur die Göttin bis zum Ende an die Menschen.・・・・・・・・噛み砕いて言うと『人に絶望した神々の中で、かの女神だけは最後まで人々を信じ続けた』って感じだろう。多分だけどギリシャ神話のアストライアの話が元ネタだろうな」
「えっと・・・ごめんわかんない・・・」
「一言で言えばギリシャ神話内では女神アストライアが乙女座になったって言われてる。アストライアが持っていた天秤が後の天秤座になったって言われてるんだ」
昔懐かしい決して表に顔を出さない知識がこんな形で役立つ日が来るとは。と言うか俺本当に良くドイツ語覚えてるよな。
「そうなんだ・・・・何かいいね。誰かが解説してくれると知らないことにも興味湧いてくる」
「なんなら今度星座の事いろいろ調べてみるか?」
「うん。それもいいかも、けどその前にもう一回だけ発音教えて?私でも流石に一回じゃ無理だよ」
――――◇――――
『クオーン!!』
「『白月』!」
『クオォ!!?』
「『第二の赤:双子座』」
「クオォォォ・・・・」
狼型のモンスターの突進を受け止めて巴投げで投げ飛ばし、その手を掴んだまま、即座に呪文で丸焼きにする。修行開始から二週間弱でリークは『白月』での受け流しをマスターし、少しずつではあるが衝撃を体に循環させることも出来てきた。
「アール見てた?どうだった私?」
「うーん・・・60点くらいだな」
あとは受け流しじゃなくて吸収が出来るようになれば満点だろう。
「月光真流習得の道は厳しいね・・・あむ・・・・・美味しい」
討伐と調理を同時に行うリークなのであった。ちなみに俺は羽玉モンスターの肉が好きである。サガリみたいで美味なんだよ。すごく米が欲しくなる味だ。
ちなみに今日、キャベツのような食材を見つけたので最近料理のレパートリーが増えた。
◇
「受け止められねぇと死ぬぞリーク!!『水無月写鏡』!!」
「白げっ!!!!!」
「スキアリィ!!」
「ガハッ!!?」
廻し蹴りをモロに受けたリークはそのまま地面を転がりながら倒れこむ。『白月』で受け止めきれずに怯んだ隙が大きすぎる。
「オラどうした、もうギブか?」
「ま・・・まだまだぁ・・!!!!」
実戦形式で本格的な『月光真流』の修行を開始。悪いがこうなると俺とリークの関係は教える側と教わる側。師匠と弟子の関係だ。そして生半可な覚悟と気持ちの奴に『月光真流』を教えるつもりはない。故に本気で潰すつもりで手合わせをしている。
「やる気あるなら受け止めて見せろ!!『十六夜天雷』!!」
「っっ!!」
格闘ゲームのコンボでもするかのようにリークへ攻撃を繰り返していく。速度はリークが目視できる程度に、重さは『白月』が使えないと一撃で骨が折れるような痛みが伴うように。
回復できる泉はそこにある。何かあればすぐに回復できるから遠慮はいらない。
「な・・・める・・・なぁぁあああ!!!!」
雄叫びをあげてリークは体を酷使する。受け止めきれずに体に走る激痛に耐えながら攻撃をいなし、時に受け止めるように体を動かし、必死に隙を見つけるために思考を巡らせる。
「くへっ!!?」
「ここまでだな」
喉を鷲掴みにして戦闘終了を伝える。悔しそうに目頭に涙を溜めるリーク。
「アールの鬼ぃ・・・」
「今更だろ?それに中途半端が一番よくねぇんだよ。俺一応あれだよ?『月光流』の継承者よ?」
「・・・・明日は絶対に一発入れるから・・・覚悟してて」
「殺れるもんなら是非やってくれ」
そう簡単に喰らってやるつもりはサラサラない。と言うか手を抜いて教えてみろよ?もしこれが俺の師匠にバレたらどうなるか考えたくもない。あの人マジで俺以上に鬼だと思う。
――――◇――――
『オオオオォォォ・・・・』
「へぇ、こんなモンスターも出るんだな」
「オーク・・・?」
双子頭のオークとでも言うのだろうか、頭部を縦に二つ合わせてひとつの顔は普通に、もうひとつの顔は上下逆さまに付いている。
更に両腕、両足もそれに合わせるように上下逆さまに付いている。手が四つ、持っているのはこれまたお約束の棍棒を四つ。一撃当たればミンチ確定だろう。
それから足が四つ。と言うか足に関してはかなり歩きにくそうだ。暫定的にコイツは『双頭オーク』としておこう。双頭オークと遭遇したこの場所は、最近見つけた新しい道、その先にあった小さな広場でこうして出会った。
「どうする?私”前”出る?」
「いや、相手が未知数だしとりあえずセオリー通りでいいだろ。様子見で俺から仕掛ける。リークはなにか起こり次第自分の判断で動け」
「ん。わかった」
「んじゃ行くぞ?挨拶がわりの『一文字切り』だオラァ!!」
『オオオオオオ!!!!』
相変わらずスキル攻撃に対しては恐ろしい程の回避能力だ。よくそんなに動けるなと言いたくなるほどの速度で後ろに下がる双頭オーク。スキルの硬直時間があるとするなら、この硬直時間の間に、双頭オークは体勢を整えてから、四つの棍棒を俺に向けて振り下ろし、俺をミンチに変えるだろう。
まぁ硬直時間なんてないけどな。それにしてもつまらん。どうせやるなら一斉に振り下ろすんじゃなくて時間差で振り下ろせや。
双頭オークと同じタイミングで一歩前へ、棍棒は先のほうが太くなっているタイプの棍棒なので、こうするだけで攻撃範囲は狭くなり、同時に俺が受け止める数は半分になる。更に前に出たことで直接手を掴めるので間合いに入りやすくもある。
『オオオオオ!!!?』
「頭二つあるのに単細胞か?もう少し頭使え『水無月写鏡』」
剣を介して衝撃を入り込んだ腹部へと叩き込む。衝撃を受けた双頭オークは『く』の字に曲がりそのまま地面に膝をつく。吹き飛ばされると思ったら大間違いだ。このまま剣で余計な手足二本ずつ切り落とせればリークの相手にはちょうどいいんだけどなぁ。
「ちっ、やっぱりダメか」
『オオオオオ!!!!』
物は試しと適当に切ってみたが、血は出るのだが切り落とすまでにはいかない。しかも即座に再生してしまうのだ。スキル攻撃以外ではダメージは取れないか。
それだけじゃなくてスキル攻撃以外は部位破壊も切断も意味がないようだ。出血死してくれる訳でもないのでちょっと面倒。けど多分他のモンスター相手にするよりは良さそうなんだよな。
「仕方ねぇ。リーク。ちょい荷が勝ちすぎるかもしれないけど殺ってみるか?」
「うん。元からそのつもりだったし」
武器である本を腰のバインダーへとしまうリーク。体を伸ばしながらこちらに向かってくる。準備運動は十分みたいだな。おっと。
『オオオオ!!!』
「選手交代だ。リークに相手してもらいな脳筋っ!!」
『オオッ!!?』
顔を上げたので下の方の顔の顎めがけて大きく蹴り上げる。仰け反った顔は上についてる顔と激突し、そのまま後ろに倒れこみ、大きな音を立てながら地面に沈む。
そのままリークと入れ替わるように俺は後ろへと下がる。
「死にそうになったら強制終了だ。それまで耐えて耐えて、死ぬまで生にしがみつけ」
「了解」
さぁリークの戦闘開始だ。何時間戦い続けられるかな?
――――◇――――
「あうぅぅ・・・・」
「まぁ筋肉痛は仕方ねぇって」
双頭オークとの戦闘、実に二時間強。リークの体が悲鳴を上げるまでの時間はそれくらいだった。双頭オークも同じようにかなり粘ったが、リークが僅かに粘り勝ち、スタミナ切れへと追い込んだ。
動けなくなった双頭オークだが、戦っているのを見てかなりいい相手だと判断した俺は殺すことなく、リークを連れてその場を撤退した。
その次の日だろうか?寝て起きたリークの体が悲鳴を上げてこうして寝込んでいるのだ。筋肉痛は仕方ない。と言うかゲーム世界でもなるんだな筋肉痛。
筋肉痛でも動かしたほうがいいんだろうけど、まぁ昨日は頑張ったし休ませてやろう。ムチばかりだとドMしか喜ばないからな。
「にしてもリーク、昨日はなかなか良かったんじゃないか?」
「でも前半ちょっと危なかったよ?思った以上に重さあったし。アールほどじゃないけど」
「当然」
十六夜天雷まで使ってるんだ。いくらオークとは言えそう簡単に俺の威力を超えられてたまるか。そんな感じで今日はリークを膝の上に乗せてこうしてノンビリと過ごすことにした。
「あ、そう言えばご飯どうしよう?」
「お前が寝てる間に狼狩ってきたからこれでいいだろ」
「ならいいね」
何げにトマトのような野菜を見つけてきたのでリークは大喜びだった。後羽玉の卵らしきものも見つけたので食べてみたんだが、すごく濃厚で美味しかった。醤油とか見つけたらすき焼きとかしたい。
――――◇――――
「シィッ!!」
「『白月』!!」
「これなら・・『水無月写鏡』!!」
「甘いんだよ!!『白月:逆光』!!」
「カハッ!!?」
過ごすことはや一ヶ月を超えた。まさかリークの習得速度がここまでとは思っていなかった。元から身体能力は高い方だったけど、まさかたった一ヶ月で『白月』と『水無月写鏡』をここまで使えるようになるとは思わなかったよ。
動きも初日と比べると月と鼈である。俺との手合わせも既に二時間以上経過してからようやくスキを見せるくらいだ。スタミナも観察眼も思考速度も反射神経もこの一ヶ月でここまで伸ばせた。
「おし、とりあえずちょっと休憩すっか」
「ぜぇ・・ぜぇ・・・アールって、かなりスパルタだよね・・・ぜぇ・・・」
「そうかもな。基本的に短時間で確実に覚えてもらえるようにメニュー組んでるから余計だろうな・・・順調だから少しペース落とそうか?」
「いやいい・・・ひぃ・・・一緒に頑張るならこれくらいはやりきってみせる」
俺の彼女が尊すぎてやばたにえん。
――――◇――――
「やぁオーク。今日も私の相手してもらうよ?」
『オオオ・・・』
「うっわ・・露骨に嫌がってやがるぜ」
この双頭オークと顔を合わせるのもはや十数回。もはやよく行くボクシングジムのスパーリング相手としか見なくなった俺たちと、『うわっまたきやがった』的な表情を露骨につくる双頭オーク。
最初の数回はこんな顔することなく出会い頭に戦闘に突入していたのだが、現在はもう奥へ続く道を開けて、自分は横の方で黄昏ていることが多くなっていた。
むしろ『通してやるからはよ行け』と言っているようにも見えるのだから不思議だ。
「なによ、どうせ私たち以外に挑戦者いないし暇でしょ?だから相手しなさいよ。処すよ?」
『オオオ・・・オーオ・・・・』
それは嫌だから仕方なくという感じで腰を上げるオーク。固まっている体を伸ばすように準備運動を始める。それに合わせてリークも同じように体の柔軟をしていく。傍から見ると完全にお互い準備運動をしている格ゲーの対戦前の様子である。
「シャァ!!かかってきなさい!!」
『オオオオオ!!!』
実はこの双頭オークだが、態度以外にも変化したところがあった。戦闘中の表情は相変わらずだが、初日に持っていた棍棒を使ってこないのだ。
俺とリークと戦う中で棍棒だと戦えないとコイツも理解したようだ。現在はどう改造したのか自分が座るベンチと化している。ちなみに持ち手部分は俺たちが座るのにちょうどいい。
なのでこうしていい感じに椅子がわりにして座り、二人の戦いを観戦している。ステゴロVSステゴロの殴り合いの戦いである。リークは向かってくる四つの拳を避けて、いなして、受け止めて。スキを見つけて攻撃を叩き込む。
対するオークは攻撃でダメージを受けないので脳筋殺法。相手がへばるまでひたすら殴る。
外野で見てるとこれがまた面白い。元々”そういう手伝い”をしているリークは人体の壊し方、無力化の仕方を熟知している。オークとの戦闘を繰り返したこともあり、オークだろうとそれは例外ではない。
かなりえげつない攻撃で視界を潰したり、聴力を潰しにかかったりしていく。それは痛いようで流石のオークもそれだけは防御に回るのだ。
「アハハハ!!!やる様になったじゃないの!!えぇ!!?オーク!!」
『オオオオオ!!!!!』
あんなに嫌そうにしていたオークも、戦っているうちにリークと同じように笑顔を浮かべながらステゴロ決めてるんだから本当に何が起こるかわからないものだ。
『キキキ?』
「お、サンキュー」
『クォーン?』
「おぉ・・見たことない石だな。ありがとう」
ちなみに俺も丸い羽根付きモンスターと狼モンスターとこうして仲良くやっている。最初はリークの練習相手に捕まえてきたモンスターなのだが、あのように既にオークと殴り合うまでに狂化されたリークを前にして、生け捕りにしていざ戦わせようとした途端に怖気付いてしまったのだ。
しかも俺を壁にするように隠れるので気づけばこうして懐いていた。いつも扉の前で二匹仲良く俺たちが出てくるのを待っている。敵のはずなんだけどなぁ?
本日、リークとオークの戦闘は4時間に及び、オークの回し蹴りがリークに入りKO。オークは満更でもない表情でリークと握手を交わして再びベンチへと腰掛けていた。
俺が言うのもなんだけどトドメ刺さねぇのかよ。いや刺そうとしたら介入するけど。という訳で今日はここで焼肉パーティーです。狼も羽玉も共食いなのだが気にせずムシャムシャいい食いっぷりを見せるのだ。
オークはこう見えてベジタリアンで野菜の方が好きなのだ。肉も食うけどな?何度も言うけどこれでいいのかな?
―――――◇―――――
久しぶり!!元気してた!!?
二人共仲いいね!!さすが長年の相棒同士!!
いやいやさすがにいきなり武器向けないでよ、一応同族でしょ?
ひっどいなぁ、流石に僕でも”仲間”には手を出さないってば!それよりもさ?思っていた以上に人間って強かったでしょ?そこでなんだけど協力しない?三人集まればなんとかなると思うんだよね!!
侍?アイツはだってボクらを連れ戻しに来ただけだよ?流石に手を貸せって言って応じる輩じゃないって。
でも手を出したのは侍が最初?アイツは強い奴と戦うと周りが一時的に見えなくなるからそれだけだよ。本っっ当にバカだからね!
あぁ、勿論君たちは”バカ”じゃないよ?わかっているってばさ!!それでね?色々調べたり作ってたりしたら今以上の”力を得られる”アイテムできたんだよ!!
え?毒見?勿論するとも!!これを飲んで”みんなで協力”して人間の街を落とそうぜ!!そうしたら”女王陛下”も人間に対する考えを変えるかも知れないよ!!
昔人間と神だかなんだかわからない奴と戦ってたらしけどそんな古臭いこと考えてる陛下に”現実”って奴を見せてやろうよ!!
そう。君たちはバカじゃない。”バカ”じゃないよ?
エキサイト翻訳さん便利でいいわぁ・・・
案の定修行はじめましたよアールさん。




