126:要は合法的な喧嘩
タイトル通りです。
因みにAJスタイルズが好きです。また新日本のリングで見たいなぁ・・・
うひゃぁ・・・・まさかこんなに集まるとは思わんかった。
書き込んで一時間しないくらいだが、人の集まりが凄い。みんな噴水広場は空けているが遠巻きに見ている奴も多いし、見知った顔もズラリといる。けどこれで証人も確保できたと考えれば素晴らしい出来である。
リークの言うように掲示板にて挑戦状を叩きつけた俺たちは現在、呼び出したエーテリア噴水前にて奴らの到着を待っている。
「・・・・・・・・」
「大丈夫かコヨミ?」
「・・・すみません、少し怖いですけど・・・アール君がいるから平気です」
人の多さでトラウマを刺激されているコヨミだが、ギュッと俺の手を握り必死に立っている。やっぱりマー坊たちを護衛につけて家で待っていてもらったほうが良かったんじゃないだろうか。
「私の為にみんなが動いてくれるんです。私にはこの戦いに参加する覚悟と義務があります」
恐怖の中に覚悟を持った力強い光を宿しながらコヨミはそういった。彼女がそう決めたなら俺たちが何かを言うことはしない。ただ絶対に守りぬくだけだ。
「アール、きたぞ」
道の真ん中を歩くようにやってくるのはつい昨日、下手すると数十時間前に処したクソイケメン集団である。数は前回の倍以上。60居るだろう。そんな奴らがぞろぞろと揃ってやってきた。
髪の毛も赤青黄色緑白紫と絵の具のパレットかと言いたくなるような奴ばかりだ。
「よう、逃げずに来たな」
俺の正面に立つのはクランマスターと呼ばれていた黒髪のクソイケメン野郎。バラバラにしてやったのに何事もなかったように立っているんだからゲーム様様だろう。
「この卑怯者め」
彼らは既にボロボロである。姿だけは綺麗だが全体的にげっそりしている。こちらに来る前にとても”優しく説得”されたみたいだ。
「使えるものは使う主義でな、それより来たってことはクラン戦受けるってことでいいんだな?」
クズを見るような目を俺に向けてくるクソイケメン。それをどこ吹く風と流して話を進める。持っていた契約の印書を差し出すように見せると、それを乱暴に受け取り、クソイケメンは内容を確認していく。
―――――◇―――――
契約の印書
①『剣星』と『方舟の福音』とのクラン戦で勝利したクランの要望に必ず応える事を誓う。
②『剣星』勝利の場合、今後『方舟の福音』がNPCに悪意ある攻撃、あるいは発言をすることを禁ずる。また、NPCを縛る契約などがある場合は全て破棄し、金輪際双方の同意なき契約を行わない。
③『方舟の福音』勝利の場合、『ギン』『コヨミ』両名が専属の師範となり『方舟の福音』メンバーへ教示する。また、必要に応じて『アール』が助っ人。そして『方舟の福音』へ協力する。
以上を誓いクラン戦を行うことを誓う。
提案者側署名
クラン『剣星』クランマスター:アール
クラン『剣星』サブクランマスター:俺はマー坊
クラン『剣星』クラン団員:リーク
クラン『剣星』クラン団員:レイレイ
クラン『剣星』クラン団員:ルーク
――――◇――――
「なんだとっ!!?」
思った通りの反応ありがとう。どうせ謝れとかそういうの予想したんだろ?馬鹿か。そんな生ぬるいことで解決すると思ったら大間違いだ。
しかも署名は五人。人数が多いほどその契約は重くなる。向こうも同じ人数署名することでギアスロールの効果が発動する。
「な・・・おまっ!!?」
「どうしたイケメン。顔が歪んでるぜ?」
「こんな条件飲めるわけがあるか!!」
声を大にして抗議するギルドマスターの男。その発言はつまり今までも表に出ていなかっただけでそういうことをしてきたということだ。
「おいおいどうしてだ?」
「こんなのゲームでの自由を束縛するもんだぞ!?お前は俺たちにゲームを自由にやらせないつもりかよ!!」
ほう?そういうのか。よく見れば顔を隠してニヤニヤと笑っている奴が居る。状況的にはそう思うよな。互いのギアスロールは契約する者同士しか確認できない。
ここでこいつらは嘘を言っているわけじゃない。一部真実を隠して発言しているのだ。この大人数が居る前で。
こうすれば俺がこいつらをゲームから追放もしくはやめさせるように仕向けているように受け止められる可能性もある。
そうなれば契約せずとも誰からも咎められることがない。ゲームだから自由にやりたいのが普通なんだから。でも今回その発言をしたことで自分たちの首を絞めたことに気づいているのかな?
と言うか俺はその発言を待っていた。こいつらのような性格なら間違いなく誰かしらが言うと確信していたからこそ、こうして人を集めたのだ。
上手いことこの状況を利用してうやむやにしようとしたんだろうけどそれがアダになったんだよ。
「おいおいおいおい?被害妄想が過ぎるぜ?」
「ふざけるなこんなの自由を奪う以外の何者でもない!!こんな契約する訳無いだろ!!」
言ったな?それじゃぁ地獄の釜を開けようか。覚えているか諸君?俺は『桜華戦流』習得のためにオペラに劇場、舞台公演まで研究して見てきたんだぜ?アマチュアの本気の演技を見せてやるよ。
「なぜだ!!?”他の誰もがいつも当たり前のようにしていることを契約で約束しよう”といっているだけじゃないか!!ただ優しい人間になろうねってお願いしているだけなのに何が悪いんだい!!?」
「っ!!?」
馬鹿が。言ったろ。使えるものは何でも使うって。人が集まったこの状況で演劇や舞台のよう大声で体を大きく動かせば嫌でも耳に声は聞こえる。
そして身振り手振りは人へ与える印象を強くする。それが常識であればあるほど人は耳を傾ける。
「ならば互いの敗北時の契約をこの場に集まっている彼らに聞いてもらおう!!そして判断してもらえばいい!!俺たち『剣星』が敗北した場合は君たち『方舟の福音』への全面協力及び『ギン』と『コヨミ』による天匠流習得まで専属教師となることを誓っている!!この場に集まる諸君!!これは人道的に反するものだろうか!!?」
――――んなわけ無いでしょ!!
――――寧ろ羨ましいわボケ!!!
――――ギンちゃんを持っていかないでー!!
――――イケメン軍団タヒね!!
合いの手ありがとうノリがいいプレイヤー諸君。こちらの行動は人道的に間違っていないと証明された。その波は大きくなり集まった皆がそれぞれの思いを口にする。
「さぁ!!『方舟の福音』代表!!君たちの敗北時の契約を口に出して一言一句正しく読んでくれ!!間違って読んだりした場合は読み方を教えてやるから安心して読んでくれたまえ!!」
「き・・・きさまぁ・・・・!!!」
馬鹿め、策士策に溺れるとはこの事だ。俺らの契約は言い方を変えれば奴隷契約みたいなものだ。それに対してこいつらの契約はただの脱サラや解放令と同じ意味合いである。
人を解放して、今度は堅気に戻れとヤクザの総長に言ってるようなものだ。組のパワーバランスは変わるかもしれないが多くの人にとっては特になんにも影響がないのだ。
「・・・・!!!!」
寧ろこの程度のことで嫌だ、自由を奪う契約だと文句を言っていたと知られればそれこそ今後彼らがどんな末路を辿るかなんて考えるまでもない。
「クソが!!」
観念して怒りの表情を見せる男はギアスロールに殴りつけるように名前を書いた。その後も四人が代表し己の名前を書き込んでいく。周囲からは『読め読め』を大コールだが俺はにこやかな笑顔を見せてそれを鎮める。
「諸君!落ち着いてくれ!彼らは署名してくれた!つまり彼らもちょっと考えすぎて勘違いしていたんだ!!優しい心で許してあげて欲しい!!」
大喝采の完成だ。
――――◇――――
受理者側署名
クラン『方舟の福音』クランマスター:ロベルト
クラン『方舟の福音』サブクランマスター:オオツキ
クラン『方舟の福音』クラン団員:タツヤ
クラン『方舟の福音』クラン団員:グレイ
クラン『方舟の福音』クラン団員:ハンニバル
――――契約の印書の効果発動。
――――◇――――
乱暴に返されたギアスロールには確かに署名がされていた。これでお互いにもう後には引けない。
「さて、始めようや」
「おいまて、一つだけ条件をつけさせろ」
「聞こう」
「そっちの三人が出るのは禁止だ」
指名されたのはリーク・レイレイ・マー坊の三人。まぁ当然そう言ってくるよな。まぁもとから出るつもりがない三人だから関係ないけどな。
「構わねぇよ。こっちは元々俺とルーク、ギンにコヨミの四人だ」
そう言うとまだ勝機があると見込んだのかイケメン集団のニヤついた顔が見える。マジウゼェ。
「『方舟の福音』の参加者はクラン構成員全員だ。文句はないよな?」
ほう?押しつぶそうって魂胆か。確かに人数制限は決めてないな。好都合だ。全員に恐怖を植え付けてやる。
「OK、それじゃぁ始めようか。リーク」
リークは前に出てきて、取り出したアイテムを俺と人造イケメンに見せた。
「知ってるとは思うけど、これはバトルクリスタル。対戦者を専用のバトルフィールドに転移させるアイテム。同時にその戦いはこの場所で中継されるから不正とかはないようにね」
説明が終わるとウィンドウが出現し、戦いのルールと各条件が双方に表示された。
――――◇―――
戦場:悠久の草原
対戦形式:殲滅戦
アイテム持ち込み:不可
装備変更:不可
――――『星剣』承認。参加者4名
――――『方舟の福音』承諾。参加者76名
――――両クランマスターの承認を確認。バトルフィールドへと転移します。
――――◇――――
一瞬体が軽くなり、気が付けば視界を遮るものがない広く雄大な草原に立っていた。隣にはルークとギン、そしてコヨミ。前方200mほど先には対戦相手であるクソイケメン集団がそこにいた。
「さぁギン、ルーク、奴らを蹂躙しようか」
「いつかの憂さ晴らしと思えばいいや」
「師匠こそ殺られるでないぞ?」
「言ってろ」
ギンとルークは殺る気満々である。既にそれぞれの得物に手をかけて戦闘態勢へと移行。そしてコヨミはというと。
「・・・・・」
僅かにだけど体が震えていた。やはり集団を相手にするのはまだ辛いか。
「コヨミ、待機しててもいいぞ?」
震えているなら無理に戦う必要はない。本人が希望したとは言えいきなり集団相手は辛いだろう。でも、コヨミは震えながらも確かに答える。
「いえ、私が選んだことです。戦います」
「…わかった。なら止めない。その代わり無理はしないでくれよ?」
覚悟した顔つきでゆっくりと頷いたのを見て俺も『真刀:戯』に手をかける。
クラン戦開始5秒前・・・・・4・・・・・・3・・・・・・2・・・・・・1・・・・・・・0
「超越流派抜刀術『天雷初月雀』!!!」
悪いがアイツ等に容赦はしない。ついでだ。ゲームであっても戦いがどれだけ残酷であるかこいつらの体に叩きこむ。コヨミを救うために一度見せた技ではあるがそう簡単には攻略させない。上段下段中段、右手右足左手左足、首胴腰膝。
考えうる致命傷となる場所の内どこかに必ず命中するように斬撃を放つ。と同時にルークとギンが疾走。斬撃の後ろに付いていくように走り出す。
「『初月雀』派生!『雀演舞』!!」
さらに使いで放つ斬撃の数々。10、20では数え切れない数の斬撃をむちゃくちゃに飛ばしてく。この前は一撃当てると後続全てに当たらなかった。なら数を増やしてしまえばいい。
ルークとギンを追うように飛んでいく斬撃の雀たち。
「行くぞお前ら!!」
「はい!」
「応っ」
「うん!!」
「超越月光流十二宮奥義『天雷神風エリストリア』!!」
コヨミを背負い1mほど真上に飛び上がりそこから一気に加速して前進、『風瓶エリシオン』『十六夜天雷』『月渡』の移動に特化した奥義で一気に二人の間を通り過ぎる。
その瞬間にルークとギンはジャンプ。宙に浮いた体を両腕でキャッチしてそのままクソイケメンどもの真上に来るように斜め上に急上昇しながらしながら加速。連中は何が起きたか理解できずに一瞬立ち止まる。
情報不足だ。お前らの常識はここでは通用しない。
飛んでいく雀の翼が前衛の奴らの体中を切り刻んでいく。体から飛び散る白い血飛沫がその残酷さを引き立てる。
「イデェェ!!なんで!!?鎧つけてんのに!?」
鎧程度で防げるようなら誰も苦労はしないんだよ。防ぎたかったら最強の盾でも用意してこい。巻き起こる悲劇を前に陣形は崩れた。こうなれば切り崩すのは容易だ。
「では師匠。先駆けは貰うぞ?」
そう言ったギンの目は普段のそれではなかった。切り替えているのだ。普段のような穏やかな瞳から一変、闘争心むき出しの野獣の眼だ。既に”敵”に対する慈悲はない。
「おう、いってこい・・・フンッ!!!」
「シィッ!!!」
地面に投げつけるようにギンを投下。凄まじい速度で地面へと迫るギンの先には、斬撃の処理で手がいっぱいのクソイケメン集団。その上前衛でモロに斬撃をうけた奴ら、タンクを担う連中と、アタッカーを担う奴はまだまだ飛んでくる斬撃の処理中。見えない斬撃の速度は1羽ずつ違い更に半径15m以上は逃げないと攻撃範囲から逃れることを許さない。
「月光真流三之型『月火』」
そんな連中のど真ん中、中距離と遠距離を得意とする奴らが居るであろう場所にギンが勢いと反比例するように静かに着地した。突如現れた銀髪が彼らの目を奪う。
音もなく、衝撃もなく着地したギンに驚くイケメンども。”俺の弟子”だぜ?『天匠流』と相性が抜群である『月光真流』を教えてないわけがないだろう?
「月光真流一之型『白月』…『都燕』」
全ての衝撃が乗ったギンの刃が彼らの四肢を砕き、武器を砕く。切り落とすのではなく砕く。まるで撫でるように振るわれたギンの刀がイケメン連中の体を破壊する。
突如上がる悲鳴を聞いてワンテンポ遅れで気がついた連中が声を上げて指示を出す。
「怯むなぁ!!まずはコイツから片付け「超越天匠流剣術『神斬雲雀』ぃ!!!」ギヤァァァァッァ!?!?!!?!」
ギンへ意識が集中すれば次に射出したルークが着地するのは簡単だ。部隊長らしき奴が指示を出そうとした瞬間。着地しながら剣を振るうルークは、その指示を出した男の後頭部を大きく切り裂いた。
「久しぶり馬鹿。元気そうだね」
頭を押さえてのたうち回る男を見ながらルークは声をかけた。そうか。あの男が俺の暗殺命令を出した野郎なのか。
「こんのぉ餓鬼!!てめぇよくがぁぁぁぁっぁぁぁぁぁっぁ!?!?!??!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!??!!??!?!?!?!?!?!!??!!?!??!?!」
怒りと同時に突如として苦しみ出す男、男だけじゃない。ほか多くのイケメン野郎の表情が真っ白になりながら苦しみだした。ある者は吐血し、またあるものは全身を掻き毟りながらのたうち回る。
「僕お前らの元同類だよ?考えることくらいわかるし」
冷たく言い放つルークの刃からは毒々しい液体が滴り落ちている。これは”今この場でルークが奪い取った”俺を殺した懐かしい毒である。その力は言うまでもないだろう。
瞬時に蒸発を始める毒の液体が俺を含むこの場全てのプレイヤーの体内に吸収されていく。
「10を生かすために1を殺すとかってよく聞くけど、勝利のために1を生かして10を殺すのも確かに立派な作戦だよね?仲間であっても黙っていたほうが効果的な時もあるみたいだし」
「ごのぐぞがぎがぁぁぁ・・・・・!!!?」
「『鏡雀』・・・・なんじゃルーク、お主いたぶる趣味があるのか?」
「別にないよ?ただの八つ当たり。前は逃げるしかしなかったし」
苦しむ男の首を刀でへし折りながらギンはルークへ歩み寄る。毒で苦しみ地面に倒れていく連中。一部は毒耐性があるのか平然と立っているが、三分の二以上のクソイケメンどもが地面に崩れ落ちて、その体を蝕まれていく。
そしてその無事な奴らもルークとギンによって切り捨てられていく。
「な・・・・どうしてお前らは無事なんだっ!!?」
「言う訳無いだろ馬鹿だね。この様子だとやっぱり仲間にも毒のこと黙ってたみたいだね」
「っ!!?」
「このクソガキがぁぁ!!」
「どこ見てんだテメェ?」
「グギャ!!?」
注意がこちらから完全にそれた事で俺とコヨミはゆっくりと地面へと着地した。そして着地しながらルークに向かう男の心臓を『真刀:戯』で鎧ごと貫く。見た目の割に薄い鎧だな。
毒の混じる空気は既に二人の斬り払いで吹き飛び、これ以上の拡散はない。一応対策してきてはいるが念には念を入れてもいいだろう。
「動けるやつは一度引け!!立て直すぞ!!」
圧倒的人数差が一気に半分以上減り、クランマスターの男は退却を選択、動ける奴らを連れて逃げていく。まぁ逃すわけないのだけど。
とりあえず近くにいるまだ息のあるプレイヤーの首を切り落とし、心臓を貫いて行く。俺と同じように再び刀を振るい生き残りを切り裂いていくギン。倒れた奴らが再起できないようにアキレス腱や足を砕くのも徹底している。
そんな中でも毒が効かなかった奴らは倒れた奴を肉盾にしたり、障害物として使い、逃げる時間を少しでも稼いでいく。逃げてもどこにいるかはわかる。それに今の一瞬で遠距離と中距離はほぼ全て沈んだ。焦らずとも対処はできる。
血さえ見なければギンが止まることはない。止まったとしても俺とルークがその穴を埋められる。正直背中に掴まるコヨミが無理して出てくる必要はなかったのだ。
そんな中、足止めとして残った風格のあるイケメン。さっさと斬って追いかけようとすると、ルークが一歩前に出た。
「師匠、コイツだけは僕にやらせて、ちょっと因縁ありだから」
ルークはそう言って一人のクソイケメンの前に立つ。因縁ありなら仕方ない。
「さっさと終わらせて合流しろよ?」
「うん!」
毒で苦しむ連中を再起不能にしながら、俺とギン、そしてコヨミは逃げた奴らの追跡を開始する。
因果応報
アール割と怒ってます。そしてギンも自分の先が掛かっているので夜叉モードです。
なぜ毒が効かないのかは後ほど




