110:再会と再会
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洗礼を受けた一行(アール以外)
怖いけど戻らない。
「「 」」
がっしりと俺の両腕にしがみつくリークとルーク。周囲を警戒しながらも俺の近くを離れないマー坊とレイレイ。
ギルファーは嫌そうな顔をしながら俺の後ろをついてきている。
逆三角形の底辺を先頭に歩いているといえばわかるだろうか?そんな感じで歩いているわけだ。
「嫌なら今度俺一人で来るようにするけど引き返すか?」
「「「「・・・・・いやだ」」」」
今かなり迷ったよな。既にSAN値ピンチな状態の四人を引き連れて俺は森のさらに奥へと進んでいく。敵の気配は今のところ近くには感じない。
ただ索敵範囲には入っているようで向こうの奴もこちらをしっかりと見ているようだ。視線をバッチリ感じる。
さらに近づき何かあれば俺に担いでもらおうというのが目に見えて伝わるマー坊とレイレイ。リークは既に俺に体を預けている状態だ。ルークはまだ自分で歩いてはいるが既に子鹿のように震えている。
敵の強さと異常さ、不気味な森の雰囲気が相乗効果となり、四人は心をほぼ折られている。この状態で会敵したら多分四人はすぐ殺られる気がする。
でも好奇心からか決して帰るとは言わない。お化け屋敷に行く感じってか。
「・・・・」
そういう事なら向こうには近づくなオーラを感じてもらうしかないな。殺気を込めて気配を飛ばすと警戒していた奴らは縮こまるように視線を外したり、離れていくように気配が散った。
習得していて良かった桜華殲滅流。感情を込めた気配に関しては何にも負ける気がしない。
今のでかなり減ったから少し安心だ。残るのはそれでも尚強くこちらに意識を向ける相手と、縮こまりながらも俺から視線を外さないで警戒する相手だけだ。猿と猪は多分この程度で逃げるだろうから残っているのは多分蟷螂と狐だろう。
あと低確率でリッチモドキ。蟷螂と狐はなんとかなるけど、リッチモドキだけはどうしようもない。アイツだけフィールド対象のイァヤベーイことするからこいつら自分で動いてくれないと困る。
遭わないように祈りながら進むしかない・・・・・・・あれこれもしかしてフラグ?
『ヨ?』
懐かしい気配を感じた。でもきっと彼ではないのだろう。破滅の球体はそれを理解している。自分が寝る前の神殿はこんなにボロボロではなかった。ボロボロになるくらいの月日が経過していたのだろう。
破滅の球体が思い出した彼は人間だった。人間は長く生きても100年だと知っている。そして百年では建物はこんなにボロボロには風化しない。だからもうこの世界に彼はいないのだろう。
そう思うと破滅の球体は悲しくなった。そして思い出したのは自分に優しくしてくれた彼との思い出。いろんな事があったけど、彼と出会えて破滅の球体は幸せだった。知らないことをたくさん知った。
いろんな生命体がいることを知った。いろんな考えを持つ生命体がいることを知った。人といる暖かさを知った。
『ヨヨ?』
思い出せば出すほど、もう一度暖かい世界で生きたいと思ってしまう。自分からこの場所で永遠に眠り続けようと決めたのに、無理だと思った。一度知ってしまった暖かい場所を破滅の球体は捨てられなかった。
・・・・ちょっとだけ、ちょっとだけ試してみよう。
破滅の球体は既に百年以上の時間を過ごしている。今回ダメだったらまた挑戦すればいい。彼も言っていた。何度でも挑戦すればいいと。諦めずに挑戦し続ければいつか必ず成功すると。
寝起き最初の知的生命体がどんな相手かわからないけど、気配からして多分彼と同じ生命体だと破滅の球体は感じ取った。
破滅の球体は気配が下方向へ向かってフヨフヨと揺れながら向かっていく。
『ゥゥゥゥゥ・・・・』
『――――』
そんな目の前に二匹のモンスターが立ちはだかった。破滅の球体はそれがなんだか知らない。でも、これは敵意を向けられていると言うことだけはわかった。
敵意を向けられて放置したまま気配の方へ行けば、引き連れてきたと疑われるかもしれない。そう思った破滅の球体は”食事をしよう”と考えた。彼との約束はちょっと破ってしまうかもしれないけど、これは非常事態という奴だと自分を納得させる。
彼も意外とこんな感じだったと破滅の球体――――彼からもらった名前『ディア』はちょっとだけ思い出していた。
『Laaaaaaa・・・・』
「フラグ回収かよ」
目的地間近でユラリユラリと目の前に現れたのはこの状態で会いたくないランキング堂々の第一位であるリッチモドキ。
本来のリッチと言えばアンデットで人間の骸骨の姿をした物を思い浮かべるだろう。だがコイツは何がそうさせたのか、人間の骨だけではなく、どこから調達してきたのかドラゴンの頭蓋骨を両腕に、巨大なイヌ科のモンスターの骨で足腰を強化しているつもりらしくジャラジャラとしている。
さらに言えば人間の骸骨をアクセサリーのようにぶら下げているところが趣味悪い。
持っている武器もリッチと言えば魔法を使うための杖が一般的だが、コイツが持っているのは100%骨で出来たギラリと鋭く光るサイスと鎖鎌である。死神と言ったほうがまだわかる。
そのくせに声はソプラノでラララ言ってる訳だから逆に怖すぎる。
その証拠に見てみろよ。俺以外の四人は完全に膝をやられてるし、ちょいやばいかも。でもまぁギルファー居ればなんとか・・・・あれ?こいつもなんか震えてない?
「え?ギルファーお前まさか怖いの?」
『・・・・・違う。苦手なだけだ』
プイッと顔をそらされた。こいつもこういうの苦手だったのか!?そう言えばこいつここに行く時だけは前も付いて来なかったなぁ!!?
――――レイドモンスター『カースサイスリッチ』と遭遇しました。
――――『カースサイスリッチ』との戦闘を開始します。
「アホ犬テメェ早くどっかいk」
『LAAAAAAAAAAA!!!!!』
「始めからそれってマジで言ってんのかお前っ!!!!??」
「「「「『・・・・・・・』」」」」
リッチモドキ最大の攻撃は武器による攻撃にあらず。自分に対して恐怖を抱いた生命体を全て自分の支配下に置くのである。そしてだ。俺以外の四人と一匹は一瞬ではあるがコイツが怖いと思った。つまりである。
「「「「『・・・・・』」」」」
「難易度爆上がりじゃねーか!?」
ゆらりと俺から離れ、目からハイライトが消えた4人がそれぞれの武器を構えてこちらに向き直る。ギルファーは最終形態という絶望感。
さらに森の中にいた猿や猪、狐に蟷螂まで総出で俺の方を見てやがる。もう驚くとか絶望とか通り越して笑えてくる。
「・・・・・・」
『Laaaaaaaa』
「・・・・リーク連れて逃げるが勝ち!!!」
はい無理です♪
唯ですらリッチモドキ倒すのメンドくさいのに、そこに追加してギルファー、マー坊とレイレイの前衛&遊撃最強クラス。
気配察知能力がそれなりに高くなっているルークとか相手にしたくない!でもリークは気絶させてでも連れて行かないと道連れで森ごと焼かれる。
「リークゴメン!!!」
「カハ・・・」
ダメージを与えないように肺と腹の中の空気を全部吐き出させる。その後に顎を小突いて軽く脳震盪を起こすように脳を揺らす。後で土下座して謝るから許して欲しい。
本当ならみんな連れて行きたいけど流石に五人気絶させつつ逃げられるとは思っていない。
なので一番危険な相手だけを連れて逃げる。ギルファーもやばいけどリークはそれ以上にヤバイ。俺の精神的余裕も加味してな!!
ぐったりと倒れるリークを腕に抱き即座にエリシオンで戦線を離脱。
『LALaaaaaaaa』
「「「「『『『『『『『『『『・・・・・・・・・・・』』』』』』』』』』」」」」
逃げた途端にリッチモドキが動き出し声に操られるように支配下に置かれた奴らが動き出した。
「悪いけど俺も全力で逃げるから追いつけるとっォォォォおおおおお!!?!??!?」
あっぶなっ!?マー坊とレイレイの連続武器の投擲と狐の火球とかえげつなさすぎィィィィ!!?!?!?
「アホ犬テメェ!!怖いのダメならもっと早く言えや!!?」
『・・・・・』
いつもついて来なかったくせに今日に限ってついてきやがって!!俺も全然知らなかったぞこのアホ犬!!
鋼剣の連続攻撃やめろコラァ!!スッパスパ切れるからそれだけは絶対によけないとオレが死ぬ!!
クッソ・・・予定が一気に狂った!!無理矢理にでもあの時戻れば良かった。それかギンが居れば話は変わったかもしれない。完全に俺の判断ミス・・・!!!
迫り来るもはや軍勢と呼べる奴らの攻撃を避けながら必死に逃げる。逃げるってどこに逃げればいい!?出口から素直に出てもいいがこいつらを外に放つのは絶対にマズイ。ゴブリンの前にコイツらに滅ぼされる。
下手したらこいつらの討伐がイベントに重なって同時侵攻からのアウトとか笑えない。
クッソ!!倒すしかないけど俺のHP的には一撃喰らえばアウトだしどうしたらいいんだよちくしょう!!
せめてリークが使い物になるかもう一人仲間がいれば・・・・いるじゃん!!
「ディアいるじゃねーか!!!」
そもそもディアを迎えに来たんだった!!!そうだよ!!アイツいれば形勢逆転可能だろ!!
方針は決まった!後は実行するのみだけど・・・ディアどこいいる!?目覚めたってことは動いているだろうし、神殿の前にはリッチモドキが滞在中、下手したらもう森から出た可能性もあるわけだし・・・って開けたの俺やん。
「うっそ・・・・俺最悪じゃん」
やっべ一気に絶望した。なにこの詰みゲー状態。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・よし決めた。
「やってやろうじゃんかよ!!」
俺のスタミナが尽きるのが早いか、リークが目を覚まして大技かますのが早いか、はたまたディアと再会して形勢逆転できるかの勝負だよ畜生!!
『―――ヨ?』
「ほわっぁ!!?」
気合を入れて木々の間を駆け抜けた瞬間、俺の首元にプヨンとした少しひんやりしたジェル状の何かがぶつかった。
腕に抱くリークは未だ寝ている。寝息が聞こえるから間違いない。余所見したら攻撃当たるから直接は見れないけど間違いない。
じゃぁ今の感触はなんだろうか?この胸元に感じる柔らかい感覚。うん。ダメ元で確認してみよう。
「なぁ!?もしかしてディアか!!!?」
『ヨ!!』
視界に伸びてきた細い腕、綺麗な赤いプヨプヨした体もとい球体。そして一言『ヨ!』と嬉しそうに脳内に直接聞こえる答え。
「アハハ!!!最高だよディア!!本気で愛してる!!」
『ヨ?』
「・・・・ううん・・・・浮気しちゃ・・・ダメ・・・・あれ?」
運はまだ俺を見放しちゃいない。それどころか祝福してくれているようだ。ピンチになった時間約2分ってか?
「アール?私どうしたの?」
『ヨ?』
「ん?なにこのスライムみたいなの」
『ヨ!!』
「なんか可愛いね」
『ヨ!!』
見て欲しい。俺の腕の中で何とも微笑ましい光景が生まれている。
「「「『『『『『『『『『『『・・・・・・・・・・・』』』』』』』』』』』」
「どっせぇぇぇぇええええいい!!」
外の世界では血で血を洗う危険な状況になってるのにも拘わらずである。
「ん?はぁ!!?あのメス猫とゴリラと犬何してんのよ!!?アンタ達なんでアールに武器向けてるひぃぁっ!?」
「スマンリーク!!このままなんか目潰し的な魔術使えるか!?距離を稼ぎたい!!」
「三秒後に目を閉じて!!天獄の光!!『ヘブンディアスパーク』!!」
三秒先までの俺の進路を確保、さらにその後の進路の確認を済ませて呪文に合わせて目を閉じる。
目を瞑っているのでわからないが閉じた状態でもめちゃくちゃ明るいことだけはわかる。まぶたを超えて真っ白に見えるとか凄すぎる。
「いいよ!開けて!!」
「っ!!さすがリーク!!惚れ直した!!」
「うん!!」
『ヨ?』
後ろから追ってくる気配はない。さらに攻撃も途絶えた。この隙に一度気配をくらませて体勢を立て直す。待ってろ。必ず全員ぶっ飛ば・・間違えた・・・・助け出す!!
いきなり支配された仲間たち。一番やべぇ奴を連れて即時撤退。
絶望しかける中、最高のタイミングで別次元でヤベェ奴と再会。




