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らん豚女神と縛りプレイ  作者: ジェームズ・リッチマン
第三章 討つは奴への猜疑心
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裏側の穴の部分の印刷のズレを見れば良い

 簡単な会員登録を終え、俺達は『コアスリーブ』の会員になった。

 といっても俺たちは書類にサインしただけで、会員カードといったようなものは貰っていない。

 非常に簡単な手続きではあるが、直筆のサイン一つでも何かしらの神様的力が働いてくれるらしく、それなりのセキュリティは確保できるのだそうな。


「うむ、登録は完了だ。欲しいカードや売りたいカードがあれば、私に声をかけてくれ」

「はい」


 言うなり、ツミコさんはカウンターの席へと戻ってゆく。あとは勝手にということだろう。


 ……うーむ、確かに欲しいカードはある。

 今は一枚の持ち合わせもない攻撃用のスキルカードがその最たるものと言えるだろう。


 しかし、貼り出されているリストをざっと見回してみると……どのカードも販売金額がべらぼうに高い。

 買い取りは、そりゃあ安い。買い叩かれていると言っても良いだろう。しかしその反面、販売額の方はべらぼうなものである。


 ……まぁ、別に買えないわけではないが……『レイ・ストライク』をわざわざ一枚300カロンで買うかい? ということだ。


「わかりましたか、ヤツシロさん。カードというものは、高価なんですよ」

「……よくわかりました」


 俺はさも当然のようにポンポンとスキルカードを使ってばったばったとモンスターを倒していたが、どうやらこの値段を見るに、とんでもない豪遊というか、お金持ちプレイをしていたらしい。


 ていうか、えっ? 『レイ・ストライク』ってあんなに高いの?

 つまり攻撃系の中で一番しょぼい『レイ・ストライク』があの値段ということは……うわっ、他のもっとたけえ。なんだこりゃ……。


「えっ」


 そして、もう見なければいいものを、俺は視線を値段の高い方へスライドさせていき……見てしまったのだった。




 『大雷撃』買取3400カロン




「シロ、顔が真っ青よー?」


 なんてこった……やっちまった……いや、やっちまってた……。

 俺は……覚えているぞ。あの名前を……スキルカード『大雷撃』を……。


 確かレアリティ3のスキルカードで、シャンメロ(くっそデカい蜂)を倒した時に使ったカードだったな……。

 買い取りが3400カロン……つまり売値はもっと高いってことか……ハハッ、いや、もう過ぎたことだから良いんだけどね、うん……。

 というか、あの時はスキルカードを使わないと切り抜けられない状態でもあったしな……うん……。


「ねーねー、これなあに?」


 俺が虚ろな目で買取価格表を眺めていると、店主のカウンターの前からペトルの呼び声が聞こえてきた。

 ああ、やれやれ。落ち着きのない奴だ。


「これー」

「はいはい、なんでしょう?」


 俺が行く前に、神様第一なクローネが素早く飛び出して応対する。


「そりゃあね、アンノウンカードというものだよ」


 が、それよりも先に、カウンターにいるツミコさんからの答えが帰ってきた。


 はて、アンノウンカードとな。

 気になって俺も顔を覗かせると、ペトルが指差したカウンターの上には、何枚かのカードが浅い木箱の中に、ディスプレイでもされているのだろうか、斜めに重ねて置かれていた。

 しかしそのカードというものが奇妙な見てくれをしており、カードの表面全体が“銀色の渦巻き”で埋め尽くされている。

 その上、渦巻き模様は常に流動しているようで、ゆっくりとぐるぐる回り続けているではないか。確かにこの謎さはUnknownって感じがする。


 しかし、見た目にもわかりやすい。

 これは間違いなく、神様が作り出した神器のひとつであろう。


「なにそれ?」

「おや、お嬢ちゃんはアンノウンカードを見るのは初めてかい?」

「は、はい。そうなんです。ペクタルロトルさんは高貴な身分の御方で、下界の物事に疎いといいますか……」


 クローネさん、あんまり変なフォロー入れなくていいっすよ。

 つーかクローネ、こういう神様が絡んだような演技は全然駄目だな。よくわかった。今後気をつけよう。


「ふむ、なるほど……アンノウンカードというのはね、スキルの『カードケア』を使ってこの靄を晴らさないかぎり、中にどんなカードが入っているのかわからない……というカードなのさ」

「おほー……?」

「ええと、確か『カードケア』っていうのは」

「符神ミス・リヴンから下賜されるスキルだよ。時間経過して石化してしまったカードに使えば、そのカードの経過した時間を24時間分だけ戻し、再び使用可能な状態にできる」


 へえ、そんなスキルがあったのか。何かで見逃してたか?


 アイテムカード、スキルカード、モンスターカード。

 全てのカードはバインダーに納めずそのまま外に出した状態にしておくと、ゆっくりと時間が経過して、24時間後に全面灰色の状態に……石化してしまう。……らしい。

 それはカード右下の部分の丸い枠の中にある赤い炎の色でわかるのだが、この赤い炎が消えて枠の中が真っ黒になると石化してしまうのである。……らしい。

 らしい、というのは、俺があまりカードを外に出しっぱなしにしていないからである。

 時間経過して右下の枠内の炎が消えかかっているカードという物を、そもそも見たことがないのだ。だからこれは全てクローネからの受け売りだ。


「で、『カードケア』は通常、カードの石化を解除するだけのスキルだが……例外として、このアンノウンカードの封印を解くこともできるわけだね」

「……このアンノウンカードっていうのは、売り物ってことか」

「うむ、そういうことだ」

「そして、貴女は『カードケア』が使える?」

「そう。このアンノウンカードは、そういう商品なのさ」


 ツミコさんはニッコリと微笑んで頷いた。


 ……まぁ、想像に難くはない。

 封印を解くまでは中に何が入ってるのかわからないアンノウンカード。

 それを解くためのスキル『カードケア』。

 この二つを組み合わせれば、商売の一つくらいは思いつくというものだ。


 つまりこのアンノウンカードは、ちょっとしたトレーディングカードゲームのような“カードパック”みたいなものなのである。


 中に何が入っているのかわからないアンノウンカードを買い、その封印状態を『カードケア』で解除してもらうことによって、中のカードを手に入れる。

 ドキドキワクワクな宝くじというわけだ。


「アンノウンカードといえば、時間経過の発生しない、外に出していても問題のないカードですからね。普通のカードよりも、こうして人目に触れる機会は多いように思います」

「だろう? カード業者はバインダーの数が命だからねぇ。その状態にして大量に保管しておくのも、ひとつの手なのさ」


 クローネが一枚のアンノウンカードを手に取り、その銀色の表面を興味深そうに眺める。

 裏返してみれば、そこは通常のカードと同じような模様。どうやら表面だけが、こうした銀色の幕で覆われているらしい。器用なことで。


「坊や、たしかヤツシロ、といったかい」

「あ、はい」

「どうだい、興味があるなら一つ、アンノウンカードを買ってみないか?」


 ツミコさんがにんまりと微笑み、俺の前に一枚のアンノウンカードを差し出す。


「アンノウンカードは、レアリティ3以上のカードに対してスキル『カードブースト』を掛けることで作られるものだ。つまり、こいつの元手には腐ってもレアリティ3のカードが必要ってこと……それに私の『カードケア』を掛ける霊力の手間を加算して、値段はひとつ300カロンてとこだ」


 たか……いや、どうだ?

 高いのか? 安いのか? わからん。

 というか、このアンノウンカード作るのにレアリティ3のカードを使わなきゃいけないのかよ。

 そう考えると、レアリティ1のスキルカード『レイ・ストライク』と同じ値段というのは破格に感じられる。


「ヤツシロさん、注意しなければならないのですが……このアンノウンカードは、どのようなカードが出るかは全くの未知です」

「……というと?」

「レアリティ1のカードが出るかもしれないし、レアリティが3よりも上のカードが出るかもしれないということです。その上、アイテム、スキル、モンスター……その種類すらも未確定なので、あまり分の良い賭けとは言えません」


 ……なるほど。

 300カロン払っていざ開封してみても、中身がレアリティ1のスカルベってことも十分にあり得るわけか。

 たしかにそれは分の良い賭けじゃ……ん、賭け?


「おほー」

「……」

「で、どうするね? 景気付けに一枚くらい……」

「三枚ください」

「ほへ?」

「三枚ください」


 どういうつもりでツミコさんがその商売を持ちかけてきたのかは知らないが、喜んで乗ってやろうじゃないか。

 運? 分の悪い賭け? 上等っすよ……そんなん……。


「なーペトル、三枚買っちゃうよなー」

「おほーっ!」

「……なるほど、確かに身分の高そうなお客さんだ。お嬢ちゃん、何が出ても運任せだよ?」

「うん!」


 さて……始めるか。


 勝ちの決まった開封式を……!


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