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らん豚女神と縛りプレイ  作者: ジェームズ・リッチマン
第三章 討つは奴への猜疑心
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ファストパスで先に進む時には笑顔を振りまいて良い

 快適な馬車の旅の末に、俺達はホルツザムに到着した。


「うおーついたー!」

「うおほー!」

「長旅でしたが、ようやくですね」


 ホルツザム神聖中立国。

 グロウムーン大陸の中央に位置する国であり、教布神エトラトジエの聖地もあることから、人々の神への信仰も篤い国である。

 主な産業は、各地の教会運営と製本。商神の聖地も近くにあり、市場は大変賑わっている。


 ここホルツザムは、その首都に当たる街だ。


「シロ、シロ! なんかごはんいっぱいある!」

「おー、すげえな」


 行き交う馬車やら荷台やらは、大きな籠に沢山の野菜や果物を載せて道を行き交う。

 レンガ造りのしっかりした道は路肩に街灯のようなものを備え、幅は広くそれに負けないくらい人も多い。

 メイルザムもなかなか大きな街だったが、ここホルツザムはそれ以上だ。

 石と煉瓦だけで出来てる風景なんて初めて見た。なんとなくこういう所の酒場に行ってみたくなる。


「おい、そこの三人。止まりなさい」

「うん?」


 俺達が大きな石門の向こう側の世界を眺めていると、手前に立っていた兵士風の男がこちらへやってきた。

 警戒をしているわけではないが、仕事の一環として気を抜いていない、ぴしっとした真面目そうな顔つきだ。


「私たちは巡礼のためにやってきました、旅の者です」

「おお、宣教師様でいらっしゃいますか」

「はい。私たちはメイルザムからやってきました」


 俺が何かをしようとするより先に、クローネが前に出て自己紹介する。

 ここでも宣教師というネームバリューは効くようで、特に証明書もないというのに一発で相手の態度が軟化した。


「後ろの二人は?」

「共に巡礼する方々です。メイルザムのギルド、『銀の軍靴』に登録してありますので、何かあればそちらの方で確認してもらえれば」

「なるほど、『銀の軍靴』の方であればとりあえずは問題ないでしょうか」

「お仕事ご苦労さまです」

「いえいえ!」


 そんな話をして、通行許可が降りた。

 なるほど。馬車も潜れるようなこの大きな石門は、検問というわけか。

 一瞬、衛兵さんは俺の腰に括りつけた布巻きのロングソードにもちらりと目をやったが、それについて何か言おうという雰囲気はない。


「ホルツザムの警備は非常に厳重なんですよ」

「みたいだな。一人一人ああして確認しなきゃいけないんだろ?」

「闇の信徒は、どこに紛れているかわかりませんからね」


 闇の信徒。平たく言えばそれは犯罪者である。

 馴染みの人であればすんなりと通れそうな場所ではあるが、知らない顔の奴は闇の信徒だったり、よからぬ奴だったりするかもしれない。入り口で厳しく取り締まるのは当然だ。

 それにここは中立国である。中立国といえば真っ先にスイスのような国が思い浮かぶが、戦争をしない国というのはそれだけの強い自衛能力を持っているということでもある。

 であれば、この警備の厳重さにも納得できるというものだ。


 闇の信徒や、敵対勢力。

 それらを阻むホルツザムの都市城壁は、非常に分厚い。


「それでは、まず食事……の前に、教会に向かいましょうか。私も、挨拶をしなくてはなりませんから」

「教会……そうだな、そうしよう」


 夕時前で、腹は適度に減っている。馬車も揺れはほとんどなくて快適だったが、それなりに疲れてもいる。身体を気遣えば最初は宿屋、というのがツーリストの本音ではあるが……。

 しかし、ここは神様の世界だ。宿屋もいいが、まずは神様のご機嫌を伺っておくのも悪くはない。


「ねえねえ、私、お腹すいた……」

「大丈夫、これから行くのは家だからな」

「家? ごはんある?」

「多分あるんじゃないか?」

「おほーっ!」


 教会は神様の家だからな。間違ったことは言ってない。


 ……向こうについたら、ちょっくら祈って霊力を食わせてやるか。

 霊力だけで満腹になってくれるならそれはそれで話も早いんだが、ペトルは飯も食わなきゃやってられないようなので、面倒な体質である。まあ、愚痴っても仕方ないことではあるが。




 賑やかな店が軒を連ねるホルツザムの大通りをずーっとまっすぐ歩いてゆくと、坂道にぶち当たる。

 そこからは石階段が延々と続いており、老人の足腰によろしくないそこを2分ほど歩く必要がある。

 こういうのはお年寄りとかどうしてるんだろう、なんて思わないでもないが、若者はそんな事を考えている内に元気よく階段を登り切ってしまう。

 丘の上にある、どでかい教会に到着だ。


「ここがホルツザムの大教会です。」


 豪華な大きい教会の姿は大通りを歩いている時から見えていたので、目の前にしての驚きは少ない。せいぜい、間近で見るとやっぱいきれいだなーってくらいだろうか。

 しかし丘の下の家々とくらべれば、やはりとてつもなく巨大だ。鉄筋コンクリートを使っていないと考えると、遅ればせながら驚きに感嘆の息が漏れてしまう。


「祭壇の数と種類は、教会・聖堂としてはおそらく世界でも最大規模でしょう。この教会を求めて、世界から多くの信徒がやってくるのですよ」

「おお……」


 教会の外にもチュニックやローブを着込んだ人が大勢いたが、中はそれ以上の、何かのイベント中かと見間違えてしまうほどの人で満たされていた。

 あまりにも人が多すぎて、多分綺麗な模様の足元や壁の模様も全然見えねえ。辛うじて真上だけが見上げられる。天井高くてすごい。これが大聖堂ってやつか。テレビでしか見たことないから天井だけでもすげえ。


「ああ、失敗です。夕時の礼拝は混雑するんでした……」

「これ、毎日同じくらい混むのか?」

「そうですよ、祝祭の日などはこれ以上ですが」


 これ以上混むような空間は、俺は出勤ラッシュ時に十分遅延した満員電車しかくらいしか知らないんだが……。


「むぎゅう、シロー、たすけてー」

「ああ、こらこら。離れるなってお前」


 ああ、目を離した隙にペトルが人波に浚われてどっかに持ってかれそうだ。


「よいしょ」

「おほ?」


 なんとか引っ張りあげ、手をしっかり握り込む。

 こうでもしないと、本当にはぐれてしまいそうだ。


「うふふ、シロありがとう」

「……はいはい」


 なんだか、まだ結婚もしてないし彼女もできてないのに、いきなり子供ができたような気分だ。

 まぁ、何日も前からなんだけどさ。



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