後編「サルベージ──本当の気持ち」
【私の名は、夕霧陽子。
公立中学校二年生の純で可憐な女の子……】
「うわッ、なんだなんだ、この声⁈」
「モノローグ?」
【好きなものは購買のブルーベリーパン。
国語が好きで、数学はちょっと苦手なの⭐︎
でもね、でもね、陽子が一番大好きなのは】
「うわーッ⁈ やめてくれ、なんだコリヤーッ⁈ 脳味噌腐るッ‼︎」
タイムは腕組みする。
「う~ん、これが、彼女のハートの中かぁ。ふむふむ」
「なんなんだ、この、点猫やら花やら、キラキラリンな世界……。
か、体中が痒いッ!」
「楽ってば、こういうのに免疫ないの?
典型的な少女マンガ・少女小説って感じじゃない?」
「おまえの星にも、んなのあるの?」
「あーもしかして今さりげにバカにしたでしょッ⁈」
【陽子がいっちばん好きなのはぁ……キャッ。恥ずかしくていえないよぉ♡♡ きゃぴるん】
「うがー⁈ 頼むやめてくれーッッッ‼︎」
「なんとなくわかったわ。
おそらく、この陽子ちゃんのラヴラヴダーリンと彼女がうまく行くように仕向ければ、オレンジソウルが手に入るんじゃないッ⁈
やっぱりコイバナはハッピーエンドが基本よッッッ‼︎」
【あ〜ん、ど・お・し・よ・お。
やっぱりいっちゃおうかな~?
陽子が好きなのはぁ──
空橋楽クンっ♡♡♡♡♡】
「えっ……」
楽のバッグに鐘が現れて、ハッピーに鳴り響く。
キューピッドとリボンも祝福するようにダンス・ダンス・ダンス♪
それと同時に、楽の目の前に、髪の長い少女が出現する。両手を組んで目にはお星さま。
「好きですッ♡ 楽クンっっ♡♡♡」
「悪いけど、オレそういうの興味ない」
「うっ……うわぁぁぁぁんッッッ‼︎」
「ちょっと、いきなりフッてどーすんのよッ!」
タイムはどこからか取り出したハリセンで楽の頭を叩く。
【フラれちゃった。フラれちゃった。
もう陽子生きてけなぁぁいっ! ジサツしてやるッ‼︎】
「か、過識な……」
「ど、どうしようタイム」
【遺書に楽クンにレ●プされたって書いてやるッ‼︎
ハードボーイズ・ラヴもまっつぁおな、ヤバイですよヤバイですよX指定ですよっ、な描写してやるぅぅぅっ‼︎
えぇぇんッッ‼︎】
「……な、なんかイマイチよく意味がわかんないんだけど……」
「知らないほーがきっと幸せよ、楽……」タイムは仙人のような顔で、楽の肩を叩く。
【なぁぁんちゃってぇ⭐︎ だぁいじょうぶだもぉぉんっ、だってぇ陽子お
ぉ、他にもた~くさん、好きな人い・る・か・らッ!】
急に立ち直った陽子の周りに、次々と男子が現れる。
【サッカー部の保田キャプテンでしょ!
ショタ好きにはたまらない寄居クン♡
でもクールな弥栄生徒会長も捨てがたし。
アダルティーな豊嶋先生もちょーラヴ♡
それからそれからぁ】
「誰かこの暴走機関車を止めてくれっ‼︎
てゆーか、コレのどこがピュアソウル??」
「……う~ん、でもある意味とってもピュアかも」
【あーん、陽子どうしたらいいのッ⁈
わかんないよお。みんなラヴじゃいけないのぉ?】
「どうでもいーけど、いい加減やめろッ!
このモノローグッ! ダイアローグにしてくれッ‼︎」
「……、要するに、それが君の悩みなワケ? オレンジちゃん?」
「……はい。ダイアローグにするから、どうしたらいいか教えて」
陽子は潤んだ真剣百五十パーセントな目でタイムたちを見た。
「君の悩みを解決したら、君のハートに眠るオレンジソウルをあたしたちにくれる?」
陽子は音が鳴りそうな感じに輝きした。
「よくわかんないけど。まーできるなら」
「ならば、君の心を解放しよう。陽子?」
野郎どもを掻き分けて、タイムは陽子の手を取る。
「自分に正直になろう。
君はオレンジのピュアソウルの持ち主。
その君のハートに触れれば、大概の男は落ちるぜ?
要は周りが何をしたいかじゃない、君が、何をしたいかだ。
さぁ、君の本当にしたいことを言ってごらん?
答えはとっくに出てるんじゃないか?」
自分に陶酔気味なタイムのセリフに、陽子は目を見張った。
「私の心は決まりました」
陽子の胸の前に、突如輝くオレンジ色のハートの結晶が現れる。
「あ、あれがピュアソウル?」
そのあまりの美しさに、楽はめまいがしそうになった。
「今までの私は……そう、眠っているような状態だったの。
恋に恋するピュアな乙女。
だけど、あなたのお言葉で、私は目覚めることができました。
もう見た目だけの男たち目移りしたりしません。迷いません♡」
オレンジソウルが一際眩しく輝く。
「好きです」
陽子が見つめたのは──
* * * * * * *
「なにはともあれ、一つ目のピュアソウルゲットだな!」
明朗に笑う楽の隣で、エクトプラズム抜けそうな顔で、タイムは呟く。
「そ……そうね、よかったよかった…………」
タイムは今にも倒れそうな足取りで頬を引きつらせている。
ソウルサルベージを終え、本日の授業もラストを迎え、楽と二人昇降口に向かう途中、タイムは信じられないモノに出くわした。
信じられないモノは実は校庭を歩いている今現在も、タイムの背中に背後霊のように引っついている。
「陽子は目覚めました♡
タイムさまが宇宙で一番大好きですっっっ♡♡♡」
陽子を引っつけたまま、タイムは大滂沱しつつ叫ぶ。
「イヤッ! 百合はイヤァァァァッ‼︎」
楽がやっぱりよくわかってなさそうな顔で首を傾げた。




