第14話 最後はだれだ
表示盤の数字が、静かに切り替わる。
残金:2000円
その数字だけが、やけに重く見えた。
「……もう3分の1使ったんだな」
成宮の声が、少しだけ硬い。
さっきまでの軽さが、ない。
「一個取るごとに、500円」
凛が言う。
視線は、表示盤に固定されたまま。
「勝ってても、減っていく」
一拍。
「これが、数勝負」
沙希が、息を整える。
短く、吐く。
「怖いね」
その言葉に、誰も否定しなかった。
向こう側。
仁のチームも、同じ条件で進んでいる。
だが、
配置は、荒れていた。
「向こう、次が重い」
沙希が低く言う。
視線は台から外れない。
「こっちは、積み上がってる」
詠が、楽しそうに指を鳴らした。
乾いた音。
「積み上げるのはいいんだけどさ」
にやり、と笑う。
「脳汁、薄まるんだよね」
「薄まらせとけ」
成宮が即答する。
だが、その声には余裕がなかった。
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第三景品
残金:2000円 → 1500円
一手目:沙希
「最短二手」
迷いはない。
角を作る。
箱が、素直に形を変える。
無駄がない。
「繋いだ」
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二手目:凛
「……ここ」
短く。
下降。
箱が、必要な分だけ前へ出る。
ほんの数ミリ。
だが、十分。
「角、完成」
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三手目:成宮
(触らない)
決める。
移動。
下降。
ギリギリで、止める。
触れない。
「……止め」
声が、わずかに低い。
「正解」
沙希が、短く返す。
だが、
成宮の手は、ほんの少しだけ震えていた。
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四手目:詠
詠が前に出る。
空気が、変わる。
「取れるね」
ぽつり。
「でも——」
指をかける。
「まだ」
下降。
箱に触れる。
わずかに揺れる。
重心だけが、崩れる。
落ちない。
止まる。
完璧な“未完成”。
詠の口元が、歪む。
「……っ」
息が、漏れる。
「これ……」
震えながら、笑う。
「当たったら、ヤバい」
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五手目:すき
すきが前に出る。
(……聞こえる)
さっきより、はっきり。
落ちる音。
未来の音。
移動。
迷いはない。
下降。
触れた瞬間、
均衡が、ほどける。
ゴトン。
「獲得!」
歓声が、遅れて広がる。
「三個目!」
残金:1500円
観客がざわつく。
ペースが、速い。
「いい流れ」
沙希が言う。
だが。
凛は、表示盤から目を離さない。
「もう半分」
その一言で、
空気が少しだけ冷えた。
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第四景品
残金:1500円 → 1400円
沙希が、前に出る。
「これ」
一拍。
「いける」
移動。
下降。
ワンパン。
ゴトン。
箱が、そのまま落ちる。
「……取れた」
「でかい」
成宮が、思わず声を漏らす。
だが——
詠は違った。
肩が、わずかに震えている。
「っ……」
歯を食いしばる。
「……今の」
小さく。
「来た」
「来なくていい!」
成宮が叫ぶ。
詠は、笑っていた。
危ない笑い。
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第七景品へ
残金:800円
数字が、軽くなる。
でも。
意味は、重くなる。
「……次で、ほぼ終わるな」
成宮の喉が鳴る。
乾いた音。
(ここで増やせるかどうか)
凛の視線が、成宮に向く。
何も言わない。
でも、任せている。
詠が、肩を叩いた。
軽く。
「安心しな」
にやり。
「一番気持ちいい賭け、残してるから」
成宮は、笑えなかった。
800円。
すぐ尽きる。
そして——
必ず残る。
最後の100円。
その重さだけが、
やけに、はっきりしていた。




