第11話 全員で取る
同じゲームセンターのはずなのに、今日は少し空気が違った。
クレーンが下降する音、アームが戻る音、誰かのため息。
それらが妙に近く、重なって聞こえる。
「……今日、うるさくない?」
すきが小さく言った。
「そう? いつも通りじゃない?」
沙希はそう返しつつ、無意識に台全体を見渡している。
横では凛が、壁に貼られた大会要項を黙って読んでいた。
「五人一組……手番制ね」
「手番制?」
金が聞き返す。
「一つの景品を取るまで、順番に交代する形式」
「つまり……」
「誰が失敗しても終わりじゃない」
沙希が肩をすくめる。
「でも、次の人に何を残すかが超大事なやつ」
「うわ、下手に荒らしたら味方が地獄見るじゃん……」
金が青くなる。
「最高じゃん」
即答したのは、詠だった。
すきは、その会話を半分しか聞いていなかった。
視線は、目の前のクレーンゲーム台に吸い寄せられている。
(……台が、いつもよりうるさい)
フィギュアケースの中から、かすかなざわめきがする。
呼ばれているような、でも意味の分からない音。
「ねえ」
詠が、唐突に言った。
「この台、私やっていい?」
指さした先は、誰が見ても厳しい配置だった。
箱は奥寄り、橋は狭く、アームも弱い。
「やめたほうがいいわ」
凛が即座に言う。
「この台、初手で触る意味がない」
「だよね」
沙希も同意する。
金は二人と台を交互に見て、困ったように笑った。
「え、じゃあなんで……」
「勝つか負けるかじゃないの」
詠は、もうコインを入れていた。
「一手目で、このチームに賭ける価値があるか見たいだけ」
操作は雑だった。
位置取りも甘い。
明らかに“最適解”じゃない。
(……外した)
すきだけが気づく。
アームが降り、箱に触れる。
ほとんど動かない。
「ほらね」
凛がため息をつく。
詠は振り返り、すきと目を合わせた。
「わざとだよ」
「……分かってた」
詠は、満足そうに笑った。
「いいね。ちゃんと見てる」
コインを回収しながら、続ける。
「ね、今の」
「……?」
「失敗だけどさ、次の人、やりやすいでしょ」
沙希が台を見て、目を細める。
「……確かに。橋、少しだけ素直になってる」
「でしょ」
詠は軽く肩をすくめる。
「このルールさ」
「?」
「一人で勝つゲームじゃない」
一歩、五人の中心に立つ。
「だから決めた」
「何を?」
金が恐る恐る聞く。
「私、この五人に賭ける」
その瞬間、店内アナウンスが響いた。
『大会参加チームの最終確認を行います』
五人が、顔を見合わせる。
すきの背後で、フィギュアの声が一瞬だけ重なった。
今度は、はっきりと。
(――大会楽しみだね)
まだ誰も知らない。
この五人が、
これから“積み重ねて壊していく世界”のことを




