第1話 ワンパン少女現る
ガコン。
クレーンが動いた瞬間、ゲームセンターの空気が変わった。
アームが景品を掴む。
そのまま、迷いなく持ち上げる。
そして——。
一発で落ちた。
「……え?」
周囲から、間の抜けた声が漏れる。
箱型のフィギュアが、まるで最初からそこに落ちる運命だったかのように、排出口へと吸い込まれていった。
それをやった張本人は、少女だった。
制服姿。
小柄で、少し眠たそうな目。
天秤沙希。
本人はというと、画面を見つめたまま首を傾げている。
「……あれ? 取れちゃった」
まるで失敗したみたいな口調だった。
周囲がざわつく。
「今の見た?」
「初手だよな……?」
「配置、悪くなかったか?」
だが沙希は気にしていない。
フィギュアを取り出し、軽く眺めると、満足そうに頷いた。
「うん。かわいい」
それだけ言って、次の台へ向かう。
⸻
沙希は、昔から運がよかった。
ガチャを回せば目当てが出る。
くじを引けば当たりを引く。
そしてクレーンゲームでは——。
なぜか、最初の一手だけは完璧だった。
「この位置なら……ここ、かな」
深く考えているようには見えない。
直感でボタンを押す。
ガコン。
まただ。
アームが吸い付くように箱を掴み、持ち上げ、落とす。
「……また一発?」
「おかしいだろ……」
人だかりができ始めていた。
沙希は少しだけ困った顔をする。
「えっと……そんなに珍しい?」
誰も答えられなかった。
⸻
ただし。
沙希の強みは、最初の一手だけだ。
二手目。
三手目。
配置が崩れ、微妙な状態になると——途端に、迷う。
「……あれ?」
アームが空を切る。
「……あ、ずれた」
明らかに“あと一手”の位置。
だが、沙希はそれ以上踏み込めない。
そして——。
「……うーん」
諦めた。
景品をそのままに、沙希はその場を離れる。
⸻
その瞬間だった。
「……ごちそうさん」
低い声。
いつの間にか背後に立っていた男が、空いた台に滑り込む。
ハイエナの仁。
誰かが諦めた台だけを狙い、
最小限の投資で景品をかっさらう男。
ガコン。
——コトン。
一手で、落とした。
「なっ……」
沙希が振り返る。
「それ……私の……」
「諦めたんだろ?」
仁は肩をすくめた。
「ゲームセンターは、戦場だ」
そう言って、景品を回収する。
沙希は唇を尖らせた。
「ずるい……」
「努力だよ」
仁は笑った。
⸻
そのやり取りを、
少し離れた場所から見ている少女がいた。
昏華すき
黒髪。
無表情。
だが、その目は——景品ではなく、台そのものを見ていた。
(……今の)
(掴み、角度、戻り)
(全部、きれいに見えた)
アームの動き。
箱の揺れ。
重さのかかる位置。
まるで、世界が透けて見えるみたいだった。
すきは、胸に手を当てる。
(……なんで、わかるんだろ)
答えは、出ない。
ただ——。
沙希が悔しそうに立ち尽くす姿を見て、
すきは、ゆっくりと一歩前に出た。
まだこの時、
誰も知らない。
この少女が、
クレーンゲームの世界を揺るがす存在になることを。
※本作は執筆補助としてAIを使用しています。
プロット・構成・最終的な文章表現は作者によるものです。




