Fly me to the moon3
「じゃぁ、そろそろやってみっか!」
たけさんは2杯目のビールを飲み干した頃、立ち上がりそう言った。
ステージに立つと、天井から照らすスポットライトが眩しかった。
演奏が始まると予想通りにうまくいくことなんて一つもなく、僕は音を止めてしまった。
そして、回りを見渡してみたら。誰も僕のことを見ていなかった。
誰もが自分の好きな音を奏でることに集中して、誰も自分のことなど気にしてないのだ。
本来なら教えてくれないと怒る場面かも知れないのだが、僕は急に気持ちが軽くなった。
失敗しても、それを誰も気にすることなく、ただ自分のやりたいことをやる。
ここはステージの上で、自分の好きな音を表現する場所なのだから。
音を追えず僕は何度も手を止めた。コード進行がわかれば大丈夫だと言われたが、今自分がどこにいるかもわからなくなってしまった。
それでも、何度も繰り返しやってくるフレーズに飛び込んでは、音の濁流に飲み込まれていった。
自分は今まで演奏するときは何度も曲を流しながら、失敗したら止めてやり直していた。
それも間違いではなないのだろう。だが、即興で演奏するための力は何一つ養えていなかった。
そこは先程、かずさんが少し説明してくれた構成音や経過音を理解しきれてないからだろう。これはまだ早いからおいおいと言われたが、ただ同じ音を繰り返すだけでは、なんというか音にノリきれてなくてかっこわるかった。
全然、ジャジーじゃない。
それでも、そのかっこわるい自分を晒しながら、引くことが許されないのがステージの怖さなのだろう。
伴奏は静かに終わりを告げた。と、思ったら、ドラムが勢いよくなり始めた。
まるで、また新しい曲が始まるみたいだ。
1日1ページの予定でしたが、今日はこの章を最後まで書ききりたいので10時に、もう1話投稿します!




