贈る言葉
「まずは、この曲知ってる?」
そういうと楓さんは、鼻歌を聞かせてくれた。
「なんだか聞いたことあるんですけど、名前はしらないですね」
「そう、とてもいい曲よ。私もつい先日まで、この曲が世界に存在するっていうことを知らなかったの。この間行ったお店で知ったのよ。私もあなたがきっかけで、この曲を知れた。あなたは私がいたおかげで、たくさんの音楽や人、この目の前の景色に出会えたと言った」
「だから、あなたはここにいることは私のおかげだと言うけれど、私もあなたが居てくれたおかげで色々なことが知れたの。だから、おあいこ」
「なんだか、照れますね」
「そうね、リンスタグラムなんか最初はよくわからなかったけど小枝ちゃんに色々教えてもらって、今ではやってよかったと思うわ」
「思ったより、楓さんのりのりでしたもんね」
「それでね。過去からの贈り物の話で知っておかなくていけないのは、何かに挑戦しようとした時、頑張ろうと思った時、まず初めに出会う自分はそれができない自分や知らない自分なのよ」
「どういうことですか?」
「何かをやりたいと思ったら、その瞬間からやっていない自分がこの世に生まれる。ギターを弾きたいと思ったら、まだ弾けない自分が。うまく歌いたいと思ったら、まだ歌ってない自分が生まれる。それでね、過去の自分が何かを願ってくれたから、動き出してくれたから今があるの」
「なんだか難しいですね・・・・・・」
「そうね。だから、うまくいかないときは才能がないとかダメな理由にして落ち込まないで、もう目的地の半分まできているって考えるの。過去の自分がね、そこまで歩いてくれたのだから。だから自分を責めたり悲しみの理由にしないで、頑張ってくれた過去の自分のためにも今度はあなたが生きたいところへ歩き出さなくてはね」
「でも、最初のスタートから進む方向はだいたいでもいいけど、最後の目的地にたどり着くまでには最新の注意を払わなければだめよ。この街に来れても、私の家や和菓子屋さんにたどり着くためには地図が必要よ」
「だから、そんな時は自分の心にちゃんと耳をかたむけるの。何が好きで、嫌いなのか。
あなたにとって何が大切で、そうじゃないのかを。
人や世間が、あなたと違う選択を勧めてきても、あなたの生きたいところに辿り着くためには、自分の心に耳をかたむけるの。その時に過去のあなたが背中を押してくれるわ」
そっと私の左頬に手が触れる。知らないうちに、頬には涙が伝っていた。
「我慢して仕事を頑張ったあなたからは、本当にやりたいことはなんなのかを。あの時、歌い出したあなたからは勇気を。あなたならできるわ。やりたいことをやりなさい」
「ありがとうございます! でも、私にできますかね? 本当に平凡というか、なんかありきたりな人生を送ってきて、人に誇れることなんて何もないのに」
私は両腕で急いで涙を拭きながら、半笑いしながら答える。
「あら、いいじゃない。ありふれたもので笑えたら。それは、世界が素晴らしいって証明になるのよ。だから、音も言葉も食べ物も、好きなものを手にとりなさい。もしもまだなければ、その手で描きなさい」
いつも、お読みくださりありがとうございます!
この文章を書く上で、なんだか読者の方だけではなく自分にとっても大切なことを書いているような気がしてきました。
もう少しプロットを練って物語をはじめから修正したいので、楽しみにしていただいてる方には申し訳ないのですが休載させていただきます。次回の投稿の予定は五月頃を予定しています。




