未知との遭遇1
店を出て真っすぐ駅へと向かう。
駅に着くと楓さんは切符を2枚買うと1枚を私に渡した。
「どこにいくんですか? あ、ていうか切符もですけど、さっきのお店も奢ってもらちゃって……。あの、すみません」
「いいのよ。お金はお墓の中まで持っていけはしないもの、行き先は行ってからのお楽しみね」
楓さんは微笑みながらそう言った。
切符を使い、改札を通る、するとそこには電車が待っていた。
電車に乗ると人はまばらで、私は楓さんの隣に座った。
「えっと、ほんとにどこに行くんですか?」
「このあいだ、音楽好きの知り合いに聞いた話で若い子がやってるジャズバーで、色々ジャンルを歌ったり演奏できるお店があるんですって。私も初めて行くお店だから、あとは行ってからのお楽しみよ」
「私、自分楽器も曲もありませんし、まだ早いかと思います」
「じゃぁ、さっきのお店に戻って話の続きでもしようか? あなたは過去の悲しみを私は若い頃の苦労話でもしましょうか。それとも、歌うためにステージに上がるか。選んで」
「好きなほうを選びなさい」
「歌いたいです!」
「そうかい。なら、そうすればいい」
「私は少し勢いよく動きすぎたから疲れてしまったよ。少しゆっくりさせてもらうね、もし寝てしまっていたら駅に着いたら起こして頂戴」
そう言って、楓さんはゆっくりと目を閉じた。
私はやっと考える時間ができ、頭の中を整理した。
今日、私は気晴らしに温泉に来て楓さんと知り合って一緒にごはんを食べて、今は一緒に電車に乗って歌を歌いにステージに向かってる。
うん、急展開すぎて頭がついていかない。
ステージで歌うって、一体なにをするのだろう?
私はまぶたの裏でステージで歌う自分の姿を想像してみた。




