楓4
「あの、どうして楓さんは私にこんなによくしてくれるんですか?」
「なんでって、私がしたいからしてるのよ。年をとると、どうもお節介やきになってしまうのね」
「そうなんですか、私としてはとてもありがたいのですが……。あの! 楓さんが私ぐらいの年の頃って、その、こんなふうに悩んでたりしてましたか?」
「こんなふうにって、こずえちゃんは今いくつなの?」
「私は23です」
「それで、何を悩んでるの?」
「将来のこととか……」
「そうね……。私もその頃、色々悩んでいたけれど最近になって悩んでもしょうがないって、この歳になってようやくわかった気がするわ。だって、心配してもしょうがないもの」
「心配してもしょうがない……」
「ええ。心配して未来が変わるなら、私もいくらでも心配するんだけどね。今の人は見てて少しかわいそうになる時があるわね」
「かわいそう?」
「そう。すごく便利な世の中になって、色々なことを知れる世の中になったことはいいことだけれど。
色々なことが見えすぎて、やらなきゃいけないことがたくさんあって大変そう。
SNSもたくさんの人と繋がれるのはいいけど、人の目を気にしすぎたり、他人と自分を比べてしまう人は苦労してしまうなと思ってしまうわ」
「やっぱり、それはいけないことなんでしょうか?」
「いけないことではないけれど……。ただ、私はもったいないなと思って」
「もったいない? なにがですか?」
「自分の時間がね。相手も含めて自分のしたいことをすればいいのよ。人様に迷惑かけない程度にね」
そう言うと、楓さんは手元にあったビールに両手を添えて行儀よく口に運んだ。
「そうですね。私にはまだよくわかりませんが、なんとなく空気を読んで自分のやりたいことをしてこなかった気がします。今思えば我慢する必要なんかなかったのかもしれませんが、引っ込み思案というか、こういう性格なので」
「そう、こずえちゃんのやってみたかったことってなんなの?」
その言葉に私は喉を詰まらせた。だけど、今日は言葉にしてみようと思う。
いつもの自分とは違う一歩を踏み出すために。
「自分で作った曲を歌ってみたかったです」




