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夏季休暇に向けて ご 親衛隊と幼馴染とストーカーと何か

その後、慌てまくる四君子を宥め、婆ちゃんの、


「荷物をお部屋に置いていらっしゃい。午後のお稽古が始まるまでおやつをいただきましょう」


その声で俺は客間に案内した。


「四君子はこの部屋を使ってくれ」


入ってすぐの荷物を置いた部屋は一番広い部屋だ。

12畳あるし4人で使うなら十分だろう。


「深山と大島はこっちだ」


今いる部屋の右手の間仕切り襖を開け放つ。

8畳の和室だ。

エアコンなんて気の利いたものは日常的に使わない客間には無い。

ついでに全部の襖を開け放ち風通しを良くする。

夏場は蚊取り線香と、吊るして虫が来ないようにするやつと、床置きタイプのが手放せない。

子供の頃は蚊帳を張っていた。


「てか、来るならちゃんと連絡してくれ。こっちにも準備がある」

「俺たちは帰…」

「急に来てしまってすみません。ご好意に甘えて泊まらせていただきますね」

「おいっ!」

「風紀として監察しなければいけませんから」

「…本音は?」

「こうでもしないと朱鷺さんのお宅訪問尚且つお泊まりなんてできませんから」


ほんと、楽しそうだな大島。


「荷物を置いたら居間に行くぞ」

「居間…ですか?」

「俺らの生活空間。思いっきり庶民だから引くなよ」

「へぇ…朱鷺さんの生活の場ですか。楽しみですね」

「朱鷺様の生活の場…」

「朱鷺様の私生活…」

「宏太くん、鼻血出てますよ」

「あ、ティッシュあります。どうぞ」


雑談をしながら居間に移動する。


「あれ?座敷じゃないんですね」

「あぁ、婆ちゃんが足を悪くして長時間の正座ができなくなったんだ。椅子の方が足に負担がかからないし、去年台所や水回りと一緒にリフォームした。爺ちゃんは畳の方が落ち着くからってあの一角は小上がりにして畳を敷いたけどな」


テーブルか小上がりに適当に座っててくれと言い、婆ちゃんの手伝いをする。

四君子が自分たちがやると言ったが、勝手のわからない俺の家だし、一応お客様だからと座らせておいた。

ソワソワして落ち着かない様子だが諦めろ。

お茶とお茶請けの近所の和菓子屋のどら焼きを出す。

ここのどら焼き美味しいんだよな。


「あ、このお茶香ばしくて美味しい」


ご近所さんに分けてもらった自家製ほうじ茶だ。

お茶にうるさい飛梅も認める味か。


「このどら焼きも美味しいですね」


味わっている大島の横で深山は黙々と食べている。

甘党か?


「土日の午後の稽古は2時からだからそろそろ集まってくる。子供が多いけど大人もいるから気まずい思いはしなくてもすむとは思う。見学だけじゃなく体験もするか?道着は貸し出しできるぞ」


そう言うと四君子は顔を見合わせて相談しはじめた。

ダイニングのテーブルで相談している4人とそれを嬉しそうに微笑んで見守っている婆ちゃんを置いて、俺は小上がりに腰掛けている深山と大島に話しかけた。


「で、どうしてお前らも来たんだ?」

「今朝、朝食中の四君子の会話で朱鷺さんのお宅へ招待されているのを知りましてね、便乗したんです」

「俺はそのつもりはなかったが、こいつに無理矢理連れてこられた」

「またまたぁ。そんなこと言って、振り解けるのにそうしなかったのはあなたも興味があったからでしょう?」

「…無い」


仏頂面でそっぽ向く深山に苦笑してしまう。


「急に押しかけるわけですし、ご迷惑でしたらすぐに帰るつもりだったんです。でも、朱鷺さん、普通に私達を部屋に案内してくれたでしょう?甘えてしまいました」

「いきなり来て泊まって行く奴結構いるからな。寝具は常備してあるし、いつものことだと普通に案内したよ」

「泊まられるのはお弟子さんですか?」

「あぁ、よく帰るの面倒だって言って泊まって行く。俺が子供の頃からそういう人が結構いて当たり前になってた」

「ではその当たり前に感謝ですね。そうじゃなきゃ私達も泊まることなんてできませんでしたから。ね、悠貴」


大島は深山に話を振る。


「だから俺は泊まるなんて言ってない」

「泊まらないのならさっさと帰ればいいのに、こうやってここにいるということは泊まる気があるってことです」

「う……」


尻に敷かれてるなぁ。

それにしても、


「大島は深山のこと名前で呼んでるんだな」


意外だ。


「えぇ、風紀として動くときは名字か役職で呼びますが、プライベートでは名前で呼ばせてもらってます。初等部からお互い知ってますし、中等部からはよく一緒にいましたし、一応友人枠に入れてもらってます」

「一応…じゃねぇ。清音は友人だ」

「…ということです」

「ふぅん…」


友人…ちょっと羨ましい気がしないでもない。


「朱鷺さんも私のこと名前で呼んでくださいませんか?」


名前呼びか…


「…お前が“さん”付けをやめたらな」

「難しいですねぇ。私にとって朱鷺さんは特別枠の友人なんです。大事な方を呼び捨てにはできません。…恋人同士だったらできますけど」


最近グイグイくるようになったよな。

でも…


「恋人は無理」

「わかってますよ。でも、名前呼びにはしていただきたいです。ダメですか?」


あざとい!

ほんと、グイグイくるよこいつ。


「…わかった、じゃぁ呼ばせてもらうよ。これからもよろしくな、清音」

「はい、こちらこそよろしくお願いします。ふふふ…ちょっと恥ずかしいですね」


淡く染めた頬に両手を当て見上げてくる。

こっちも照れる。


「……気持ち悪い…」


深山が眉間にクレバスを作った。

シワが残らないか心配…は前にも同じこと思ったな。


「悠貴も朱鷺さんとお互いに名前で呼び合えばきっと仲良くなれますよ」

「こいつと馴れ合うつもりはない」


深山のその言い方にムッとする。

俺、一応友人枠に入れてるんだけど?


「えー、おれ、ともだちだとおもってたー」

「棒読みで言われても説得力ねぇよ」

「んじゃぁ好敵手ポジで」

「断る」

「ひでぇ、俺、こんなに深山のこと好きなのに」


親指と人差し指で隙間を作る。


「チッ、指の隙間ミリ単位じゃねぇか」


何故そこで舌打ち?


「好意があるだけマシです」


クスクスと笑いながら大島…基、清音が言う。


「朱鷺さん、意外と好き嫌いはっきりしてますよね?」

「そうか?」


出さないように気をつけてるつもりだが…


「表情は取り繕ってみえますが、雰囲気でわかります。他の方は気がついていないと思いますよ」


ずっと見てたからわかります、という副音声が聞こえる。


「さすが、ストーカー」

「ストーカーじゃありません!」

「お前、こいつのストーカーだったのか…」


深山が大島から少し離れた。


「ですから、何度も言ってますが、私は朱鷺さんに好意を持っているだけでストーカーではありません!」

「ストーカーは自分じゃわからないからな。楡崎、ヤバイと思ったらちゃんと助けを求めろよ」

「わかった、その時は深山に助けてもらう」

「他へ行け」

「やだ、深山がいい」

「俺は嫌だ」

「お前の友人がストーカーなんだから責任持て」

「ストーカーはごめん被る」

「ですから違うと!」


などと3人で話していると、


「こんちは!朱鷺いる〜?」

「ちょっと聞いてよ!このバカ数学赤点だったのよ!」


道場側の裏口から幼馴染が2人上がり込んできた。


「はぁ?赤点だと?…おい、竜樹(たつき)、どういうことだ?お前、大丈夫だ任せとけって言ってたよな?」

「出題範囲間違えちゃった、テヘ」

「何がテヘだこのドアホウ!補習どうすんだよ!」

「大丈夫!追試で受かる!補修になったとしても7月中に終わる!…予定!」

「お前なぁぁぁぁぁっ!」


ツカツカと歩み寄ってムギュゥゥッと竜樹の両方のほっぺたを摘んで引っ張る。


「少しは反省しろ!」

「いひゃい、いひゃいれふ!」

「ちなみに、他の教科もギリでした」

「ほほう…」


美奈子の報告に、今度は思いっきり両手で挟んでやる。


「成績上げるって言ってたのはどの口だ?」

「こよくしいぇしごえんやしゃい」


タコ口の変顔で謝ってくる。


「一応成績は上がってたわよ、赤点は数学だけだし」

「そうか」


ペイっと竜樹を捨てる。


「ひどい!ひどいわ朱鷺!成績上げたらチューしてくれるって言ったじゃないっ!」

「言ってねぇよ」


足に縋り付いてくるのをガシガシ踏んで差し上げる。


「で、ミィナはどうだった?」

「ふふん、今回は8位でした!」

「おぉ、10位以内に入ったな」

「褒めて褒めて」

「うんうん、よくできました。はなまるをあげましょう」


竜樹を踏みながら美奈子の頭を撫でる。


「うふふ、はなまる貰っちゃった。…ところで、朱鷺」

「なに?」

「あっちとそっちで固まってる人達、誰?」


美奈子が指す方を見ると、四君子と風紀コンビが目ん玉ひん剥いて硬直していた。


「あらあらまぁまぁ」


婆ちゃんはそれを見て楽しそうに笑ってた。



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