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大森林の町にて

テストを兼ねての初連載投稿。短いですが。

王国は、北方大陸のほぼ中央に位置する内陸国である。


王国の北側には険しい山脈が連なり、強大な帝国とを隔てており、

東側には、北から南にかけて、大公国、教国がそれぞれ存在する。

さらに東には共和国も存在するが、国政は安定していない。


南側は教国に接して都市国家同盟とそれに無所属の小国群があり、

ここからさらに南へ向かうと、中央海を隔てて南方大陸が現れる。

最後に西側であるが…北部は大森林が続き、南部は大湿地帯。

王国から大河で隔てられたこの地は、長年開拓されることもなく、

「主なき地」と呼ばれている。



「主なき地」には人間あるいは亜人種が住んでいない訳ではない。

国家を名乗れるほどの都市が存在しないのである。


大森林の中にはあちこちに小規模の町や村、集落が点在しており、

それぞれが街道と呼ぶにはささやかな道で繋がっている。


人口が少ない、という事は人間や亜人種「以外が」多いという事。

必然的にゴブリンをはじめとした敵対種族や害獣、魔獣は多く、

安全な場所ではなかったが、様々な理由で移り住む者はいた。


中には、未知の領域に好奇心を抱いた者もやって来る。



「こういう場所にこそ竜がいると思うのよ」


「あやふやな思い込みで連れてこないで欲しいわ」


そんな会話をしながら、二人の女達が細く長い道を歩いている。

彼女のうち一人は吟遊詩人。もう一人は作家である。

大公国出身だが二人とも冒険者資格を持っている訳ではない。


一応は友人と呼べるこの二人は、最近創作活動に行き詰っていた。

大公国から教国、王国、都市国家同盟も小国群も歩き回り、

果ては政情不安な共和国にまで足を延ばして話の種を探したが、

旅立ってから三年、どこを訪れてみても頭にぴんと来ない。


帝国へ安全に訪れるには、大回りして旅をしなければならない。

あるいはあの険しい山脈「死霊の霊峰」を超える必要がある。

命などどうでも良いが、辿り着けずに息絶えるのは御免である。


残りは南方大陸か「主なき地」か。

都市国家同盟なら南方大陸の噂も集まるかと聞き込みしたが、

沿岸以外は砂漠が広がるだけで、その奥地はひたすら暑いと。

胸をときめかせるような話は全く聞けなかったのだ。


ならば「主なき地」へ行ってみよう。

害獣、魔獣が多いのは過去の情報からも確かなようだ。

伝説の生物や霊獣などがいるとすればここではなかろうか。


そんな根拠で二人は進む。いや、三人である。

金払いの良さについ頷いてしまった「冒険者もどき」。

元三つ星の女、斥候のリーリオである。



リーリオも「もどき」とは言え、中途半端な仕事はしない。

「主なき地」で最低限活動出来るように、情報は仕入れていた。

今は大河を小舟で渡り、情報にあった町へ向かう途中である。


リーリオも、なりたくて「もどき」になった訳ではない。

組んでいた連中の恋愛沙汰に巻き込まれ、冒険者資格は剝奪。

人を殺すの殺さないのという話だったから、まあそれは分かる。

但しリーリオは恋愛沙汰の当事者ではなく傍観者であった。

なのに何故か問題の中心人物扱いされていたのだ。

今でも思い出すと大声で叫びたくなる。


ようやく目的の町に着く。聞いていた通り随分小規模だ。

情報収集の前に、宿を取ることにして二人にも了承を得る。


小ぢんまりした宿を見つけ、中で出迎えてくれた女将に、

女三人、夕食付一部屋でとりあえず三日間宿泊すると告げた。

二人に情報収集をしてくると説明し、顔を繋ぎに外へ出る。


事前に聞いていた小さい建物に「もどき」の連絡員がいるはず。

扉を一定間隔で叩く。三回、三回、二回。


「入れ」


中に入ればそこには…リーリオが二度と会いたくない顔があった。


「もどき」にならざるを得なかった原因。

恋愛刃傷沙汰の原因。髪型は変わったが、女魔術師カメリアだ。

こいつが大胆にも仲間内で四股したせいで、とばっちりを食った。

仲間だった男達は本気で殺し合い、冒険者は続けられなくなった。

リーリオは思わず殴りかかりたくなったがその寸前、


「連絡は受けているわ。この周辺では聞かないようよ。

 南の大湿地帯のリザードマンなら竜の伝説があるみたい」


と先に切り出された。こいつ…わたしだと気づいてない?

今は仕事優先、と引きつりながら情報の礼と質問を返す。


「そ…そう。ありがとう。

 リザードマン相手に気を付ける事とかあるのかしら」


「彼らなりのしきたりが色々あるそうよ。

 まとめておいたから依頼主に渡してあげて」


リーリオは紙の束を渡された。本気で気付いていないのか。


疑問に思いながらも礼を言い、

リーリオは連絡の報酬を支払って建物を出る。



リーリオが去ると、カメリアは長い溜息をつく。

意外と気づかれないのねぇ、と。


カメリアも彼女が元の仲間だったリーリオだとすぐ気が付いた。

彼女まで冒険者を辞めざるを得なくなった事には、

これでも責任を感じていたのだ。


実のところ、さっきは殺される事も覚悟していた。

いや、殺されてもいいと考えていた。親友だと思っていたから。


逃げてしまってここまでたどり着いたけれど、

後から仲間の男達は全員半死半生、彼女は逃亡したと聞いた時、

罪悪感で自ら命を絶とうかとも考えた。度胸がなかったが。


今回の仕事が終わり、もしもう一度ここにリーリオが来た時は。

その時は打ち明けよう。そしてどんな選択でも受け入れる。

けじめとして。

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