⑴ 置き手紙
次の日、いつものように私と詩織は本部へ向かった。
アノンさんは既に来ていた。
BMさん、B子さんも来た。
朝食の準備をしていた時、C子さんが血相を変えて走って来た。
手に何か握っている。
C子さんが震える声で言った。
「CMさん、出て行っちゃった」
みんなは声を出さずに固まった。
C子さんは、握っていた紙を見せてくれた。
CMさんからの置き手紙だった。
『私の勝手な行動を許して欲しい。私は妻と子の所へ行く。どのような現実が待ち受けているのか、それを受け止める覚悟が無かった。しかし、いつまでも目を逸らせてはいられない。困難な旅になる。私1人で行かせてほしい。みんなには本当に世話になった。感謝している。最後にC子、今まで本当にありがとう』
C子さんが目をはらして言った。
「どのような現実が待ち受けているのかって、その時はCMさん、奥さんとお子さんの後を追うつもりです!」
……本当に?
しかし、C子さんの訴える目を、軽く捉えてはいけない。
そうなのか?
B子さんが言った。
「みんなで一緒に行動するって、決めたじゃないですか!」
私はC子さんに訊いた。
「奥さんとお子さんが住んでいるのは?」
「東京です」
アノンさんが割り込んだ。
「時間がありません。すぐに決めましょう。我々はどうするか。CMさん1人を行かせるか。それとも……」
今からCMさんを追いかけて、捕まえる事ができるだろうか?
東京へ向かったとしても、どうやって行くつもりなのか解らない。
仮に追いついたとして、CMさんを連れ戻す事は出来るだろうか、おそらく無理だろう。
ならば、CMさんの向かう先へ、我々も一緒に行くしかない。
だが、女性4人を連れていたら、CMさんに追いつけない。
では、私とBMさんが先に追いかけ、女性達とは後で合流する。
しかし、連絡の取れない状況で合流するのは、ほぼ無理だ。
どうしたら良い。
その時、詩織が発言した。
「CMさんが向かった先は、おそらくシェルターです。携帯ろ過器や保存食料などを持って行くはずです。その後、南西へ向かうと思います」
「その根拠は?」
「以前CMさんは、ここの2階の書籍コーナーで地図を見ていました。CMさんが向かう先が東京であるなら、シェルターから南西へ向かえば、東京へ繋がる高速道路とぶつかります」
「なるほど」
「今は日の出が6時頃、実際は日の出前から明るくなり始めますので、CMさんが出発したのは視界が得られる5時半頃。つまり3時間前と推察します。CMさんの足なら、今頃白い砂のエリアでシェルターへ向かっている頃ではないでしょうか」
「……たしかに」
「そこで、AM(玲)さんとBMさんは、トランシーバーを持って、先にCMさんを追いかけて下さい」
「しかし……トランシーバーで通話できる距離はせいぜい百メートル、役に立つだろうか?」
「私たち女性4人は、シェルターへ向かいます。そこでモニターシステムを起動してトランシーバーの周波数とフォーマットに合わせます。モニターシステムの送受信能力なら10km近く届きますので、AMさん達と連絡が取れると思います」
「なるほど」
「AMさんとBMさんは、白い砂のエリアからシェルターへ向かわず、西へ向かって下さい。CMさんがシェルターで準備する時間を含めますと、今から追いかければ南西の焼けた木々のエリアあたりで、CMさんに追いつけると思います」
「だが、仮に追いつけたとしても……CMさんは我々と行動を共にしてくれるだろうか」
「CMさんには、女性全員向かっていると伝えて下さい。CMさんなら私たちを置いては行かないでしょう」
「なるほど……CMさんを脅す訳ですね」
「私たち女性4人は、シェルターで食料等の準備を行い、トランシーバーで打ち合わせた場所へ向かいます……と、いうのは、いかがでしょう」
そう言って詩織は女性達を見ると、女性達はみんな、嬉しそうにうなずいた。
という事で、地図と方位磁石、マスクと携帯食料、それとトランシーバーを持って、私とBMさんは自転車を飛ばした。
次回:つれてって




