⑷ 結婚しよう
詩織の父、浅野先生が行っていた研究と、私の行っていた研究。
この2つの研究成果を合わせる事で、核ミサイルを撃ち落とす事を可能とする電磁波動砲が、造られるかもしれない。
しかし、それは実現可能だろうか。
問題となるのは、電磁波に指向性を持たせる為の電磁波レンズ。
果たしてこのレンズ、超高出力の電磁波に耐えられるのか。
核ミサイルの破壊を可能とする電磁波出力と、電磁波レンズの素材データから、実現性を検証する。
この検証、かなり複雑な計算となる。
誤っていたら大変な事になる。
私1人では不安な為、詩織と別々に計算する。
同じ答えが出れば、その答えは信頼出来る。
計算結果として、正の値が出れば電磁波動砲は実現可能。
負の値が出れば実現不可との結論が得られる。
私と詩織は計算した。
紙と鉛筆と関数電卓による計算である。
結果を出すのに4時間掛かった。
そして、私と詩織の計算結果は、2人とも同じ負の値だった。
よって、この電磁波動砲、実現出来ないとの結論に至った。
詩織が言った。
「今は実現不可の結論に至りましたが、いずれ誰かが完成させます。軍事利用されない為に、この研究論文、一刻も早く発表して……」
それから2人は沈黙した。
同じ事を考えていたのだろう。
浅野先生は、それをしようとした。
そして行方不明となった。
今思い起こすと研究発表、自分1人で行くと言っていた。
先生は、何かを覚悟していたのかもしれない。
私は詩織に言った。
「この論文、簡単に発表出来ない。軍事利用されてしまう」
「はい」
詩織もうなずいた。
浅野先生は研究発表に行く前「私に何かあった時は娘を頼む」と言っていた。
詩織に対しても「何かあった時には私の所へ身を寄せるように」と言っていたとの事。
先生は、この研究によって生まれてくるものを、私と詩織に託したのだろう。
「この論文、人類80億人の生命を脅かす」
「はい」
「この論文、私と詩織さんは知ってしまった」
「はい」
「この論文、外部に漏れてはいけない」
「はい」
「私と詩織さんは……もう、他人ではいられない」
「はい」
私は詩織に提案した。
「結婚しよう!」
詩織は、真剣な眼差しを私に向けて応えた。
「はい!」
・・・・・・
しかし、私と詩織は気付いていなかった。
ネックレスに仕込まれたカードの中に、表示されない3番目のファイルが収められている事を……。
なんという事でしょう。
全世界を揺るがすほどの力を、2人は持ってしまいました。
もう、2人は、他人ではいられない!
そこで2人は、結婚する事にしました。
ここまでお付き合い頂いた読者さま、本当にありがとうございます。
次回からの第2章では、玲さんと詩織さんの甘々な生活を覗いてみましょう。
『世界を揺るがすほどの力を持ってしまった2人』の、この先のお話しは、第3章からとなります。
今後とも、お付き合い頂けますよう、よろしくお願いいたします。
次回:通い妻




