⑵ エリア5
あの施設に連れて来られた時、私と詩織は外の景色が見えない状態で連れて来られた。
あの場所が特定されない為であろう。
しかし今は目隠しされる事もなく、私と詩織はヘリに乗って外の景色を見ている。
ただ、上空から見下ろす景色は、樹木が立ち並ぶ森林で、ここが何処なのか解らない。
しばらくすると、森林の中に開けた所があった。
このヘリは、そこへ着陸するようだ。
大きさは、東京ドームぐらいだろうか。
いくつかのプレハブのような建物と、大砲のような筒……ああ、ここは例の実験場だ。
私たちの乗ったヘリはそこに着陸し、私と詩織はヘリから降りた。
私たちを連れて来た初老の男性が、ここで初めて挨拶された。
「アリーナのエリア5へようこそ。改めまして、私の事は112とお呼び下さい」
そう言って右手を出された。
「はい、よろしくお願いします」
そう返して、私と詩織は112さんと握手した。
どうやら、この特務機関の名前は、アリーナと言うようだ。
そしてここは、エリア5。
つまり、他にもこのような基地があるのだろう。
127さんの127というコードネーム。
このアリーナという組織の中での1課、そして個人番号が27を意味するのか?
しかし、127さんにとって112さんは、格上に見えるが別組織のようにみえる。
つまり、第1部2課で個人番号が7?
そして112さんは、第1部1課で個人番号が2?
そんな事を考えていた。
その時、私たちの前に作業着を着てヘルメットを被った1人の男性が現れた。
政治職の感じがする112さんとは、少し違う感じを受けた。
私と詩織に、彼は挨拶をされた。
「私は、ここでは311と呼ばれています。科学技術の分野を担当しています。よろしく」
そう言って、右手を差し出された。
「はい、こちらこそよろしくお願いします」
私と詩織は、311さんとも握手した。
112さんと127さんも、311さんと同じ、薄いオレンジ色のヘルメットを被った。
通常の、工事現場で被っている折り畳み式のヘルメットだ。
そして私と詩織に、ヘルメットが渡された。
ここではヘルメット着用との事。
私と詩織に渡されたヘルメットは、薄い緑色だった。
私たちは実験棟の内部を案内して頂いた。
そこでは、多くの人が水色のヘルメットを被り、作業している。
そして、私と詩織が被っている緑のヘルメットを見ると、驚いた表情を浮かべて会釈される。
この緑のヘルメットは、どんな位置付けなのだろうか?
その事を127さんに訊いてみると、緑のヘルメットはvisitor(訪問者)との事。
ただ、アリーナでの訪問者とは、極秘任務に関わっている重要人物との事で、少女が緑のヘルメットを被っている事に、驚かれているようだ。
そして、実際の電磁波動砲を見せてもらった。
電界によって磁界は生まれる。
電界の向きを変える事で、磁界の向きも変わる。
磁界の向きが変わる事で、新たな電界が生まれる。
これが伝搬していくのが電磁波である。
電磁波は、距離の2乗で減衰する。
それは広がる為であり、その電磁波を広がらない1本の電磁波動線にして放出する。それが電磁波動砲である。
一通り、実験棟を見学したのち、私と詩織は打ち合わせ室のような部屋へ案内された。
私と詩織、そして127さん、112さん、311さんの5人は、大きなテーブルを囲って着席した。
詩織にノートパソコンが渡された。
そして、311さんは話された。
「そのパソコンには、浅野博士のパソコンからサルベージした2つのファイルと、隠されていた3番目のファイルが入っています。そして、博士から送られたビデオメールが入っていますので、まずはそのビデオを見て下さい」
詩織は、そのビデオメールを再生した。
私は詩織の横から、そのビデオを一緒に見た。
先生の顔が映り、先生の話しが始まった。
『詩織、このビデオメールを見ている時、私はある国の研究機関で電磁波動砲の開発に取り組んでいる。この3番目の論文は、私が導いた余剰次元物理学によるものだ。詩織には、私の余剰次元物理学を教えて来た。詩織なら理解出来るだろう。核弾頭ミサイルの矛に対して、盾としての電磁波動砲を日本でも完成させて欲しい。核兵器を無力化させる事で、この世界から、核兵器廃絶の流れをつくっていきたい』
ビデオメールは、ここで終わった。
次回:矛と盾




