↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
17/17

飛雨

 雨が降ってきた。真っ黒な雲を従えて、ぼたぼたと大粒の雨が山に降り注ぐ。賑やかしいというよりかは騒がしい。雨の襲来に潤晴來(ほとはな)は空を見上げた。

「おや、こいつは珍しいのが来たものだね」

 夏の神が陽気に笑む。空からの来訪者に、潤晴來の腕に囲われていた白宵(しらよい)もまた、つられて上を見た。

「おや、お二方ともお揃いで。お久しゅうございます」

 真っ黒な雲に馴染む、真っ黒な衣装に朗らかな笑みを浮かべた男神だ。

「流黒(なこく)、お前が来たと言うことは、長く酷く降るのか、この雨は」

 秋の神の凛とした声が問いかけた。二神の前に足を下ろした雨の神はひょいと肩をすくめる。

「わたくしが来ようが来まいが、雨の様子は変わりませんよ。付いて歩いているだけですから。お日さまだって知っています」

「それでも、なんだか土砂降り続きになりそうな雲じゃあないか」

 ゆったりと応答する潤晴來の手のひらに雨が弾いた。もの好きだとそれを眺める白宵に濡れた様子はない。

「えぇなるでしょうね」

 のんびりと流黒は言った。激しく降り続ける雨とは真逆な物言いは、何の感慨も含んでいなかった。

 凪いだその声に、探りを入れたのは潤晴來だ。

「また急だね。あんまり降られても、こちらも困るのだが」

 朗らかな声音と裏腹に流黒を見る目は鋭い。

「しかし雨の季節でもございましょう?」

 くつり、流黒は喉を鳴らしてそれに言い返した。

「ほぉ。なら、大神は何と? これは季節を変える雨なのかい?」

「ではそちらの大神は何と? いつ夏は秋へと巡るのですか?」

 ――おっと。

 大袈裟に、潤晴來は肩をすくめる。

「いけない、いけない。これは藪蛇だったか。あーこわい、こわい」

 それから、白宵に回した腕の力を強めクスクスと笑んだ。白く柔らかなその腕を、秋の神は優しく叩く。

「潤晴來、おやめなさいな。流黒とて私たちと同じでしょう」

 分かっているよ、とは夏の神。雨の神はそんな女神たちへ、芝居がかった仕草で胸に手を当て頭を下げた。

「そう、あなた方と同じく雨を見守るそれだけの存在でございます。全ては在るが儘に。わたくしたちが成せることなど、それ以外にございません」

「して、この先は何処へ行く」

 夏の神は静かに問いかけた。

「さて、ただ流るるままに。全てを見届けましょう。それが役目にございますので」

「あまり、長居はして下さいますな」

 秋の神は、願うようにそう告げ。

「えぇ。叶うものならば」

 和顔を浮かべた雨の神は、深く一礼を返したのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。