第一章:メデューサかな?
電車の中で思いついた文章を書いてみました。妄想が止まらなくなるまで男の娘を書きます。
俺の名前は小鳥遊博人。
もう高校 2 年生になり、2 回目の夏を味わっていた。
懐中電灯のように照りつける太陽は、肝試しのようなスリルを与えてくれるわけでもなく、青春に影ばかり残すのだった。
「どうしたら可愛い彼女ができてイチャイチャできるんだろうか…。」
「おーい、なにいつも通り冷めた顔してんだよ、赤点取った?」
「そんなんじゃねぇよ、いや、彼女欲しいなぁって…」
「無理だろ、アニメとかで忙しいじゃん俺等」
そういって俺と非モテライフを過ごすのは高山光輝、通称『てる』と呼んでいる。
いつも通りのしょうもない会話をしているともう一人やってきた。早乙女碧、本人は下の名前が恥ずかしいらしく、『さおちゃん』と呼んでいる。
「お、さおちゃん!さおちゃんは彼女欲しい人?」
「いや、まあそうというかなんというか…恋人が欲しいには決まってるじゃん。」
「へぇ〜、まぁ俺も欲しいけど、二次元相手に勝てる女なんぞおらんしな〜」
「(こいつ卒業までに彼女とか無理そうやな…)」
そんな会話をしつつ、帰りの準備をしていると、クラス委員長がクラスにやってきて
「ちょっと、てる〜!先生がプリントないって言ってるけど、あんたちゃんと持っていった!?」
委員長がてるのミスを指摘しに来た。
てるは、いつもやらかしてるけど、それをいちいち訂正しちゃう委員長も健気だよな〜。
「あ、やっべ、委員長悪い!今からそれ持っていくから手伝ってくれない?帰りジュース奢るからさ!」
「はいはい、いつも奢ってるじゃん…しっかりしないと全部私に使ってお金なくなっちゃうよ…」
「わりいな…でもまあ委員長が喜んでくれるから悪い気はしないっていうか笑」
「へ、へぇ〜…そうなんだ…早く持っていくわよ!」
「委員長、顔赤くね?熱中症か?」
どうやら、てるは委員長と一緒にやることがあるようなので、さおちゃんと二人で帰ることにした。
夏の通学路はさながら、現代の砂漠といった様子だ。
打ち水をしても 5 分で干上がってしまう。
そんなところにずっといたら俺等がアスファルトプレートでステーキになっちまう。
だからこそこいつらとコンビニのアイスを帰りに食うのがワクワクするんだよな〜。
「なあ、さおちゃん。そのアイスどんな味?」
「え、なんかレインボーアイスとか言って良く分からないけど美味しいかな…?そっちは何味?」
「えーとバニラ、普通のやつだよ。気になるからそっちちょっと食べさせてよ。俺のもやるからさ。」
「え!?あ、いい…よ。」
なんか最近さおちゃんの様子がおかしい。
さおちゃんもしかして熱中症で無理してるのかな?よくよく考えたらさおちゃんは結構華奢で色が薄い、それに少食で運動部ってわけでもないから元々そんなに体は強くないから尚更だろう。
去年の時点ではこんな感じではなかったんだけどな…。
---
------
---------
--去年の今頃--
「俺は高山光輝、よろしくな!」
「こちらこそ、俺は小鳥遊博人。ひろとでいいよ」
ごく普通の挨拶、超緊張したけど、いい人そうで良かったわ~!
しかし女子で仲良くなれそうな人は、わからないなぁ…。あ、あれ女子だけど、もしかして一人!これは話しかけるチャンス!
「はじめまして!俺は小鳥遊博人。君は何ちゃんっていうの?」
「あの…僕は早乙女葵です。」
「葵ちゃんね!可愛いね、ボクっ娘」
次の瞬間、すごい形相で睨まれ、てると俺は固まってしまった。メデューサかな?
流石にこのままでいるのはいけないので、質問してみる。
「その…なんかまずいこと言っちゃったかな…?」
「まずいも何も、僕のこと馬鹿にしています?」
「ん?いや、女の子なのに僕って珍しいなって」 「あぁ…そういう…すみません。あのですね…」
なんと葵ちゃんは、男の子だった。普通に可愛かったので気づかなかったが、同性に異性として相手にされるのは、確かにいい気持ちではないかもしれない。人によっては、屈辱的とも言えるので、めちゃくちゃ謝った。
どうやら昔からちょこちょこ勘違いされるようなので、下の名前は呼ばれたくないらしい。そもそも男なのに可愛い名前なのが恥ずかしいとか。
だから、さおちゃんと呼ぶことにした。しかし、さおちゃんとは初っ端の出会いがあまりよろしくないので、ちょっとクールで落ち着いた雰囲気だった。氷の女王様かよ!
それから少し一ヶ月程度経過して、
「ところでひろとくん、次の授業では水泳なんだってさ。嫌だよね。見学しようかな。」
「え、なんで?冷たくて気持ちいいじゃん」
「いや、その…人に肌見せたくないから」
「別にそんなん気にしないけどな。そんなに嫌なら俺と見学する?」
「え、でも水泳好きって…」
「さおちゃん一人で見学は辛いだろ、それに今日は暑いし、さおちゃん体弱いんだから、一人は危ないしさ」
その瞬間、さおちゃんの雰囲気が変わった。というか空気が変わった気がする。
するとさおちゃんがか細い声でこう言った。
「ひろきは、僕の裸見たい?」
「え?それってどういう…?」
予想外の言葉に動揺してしまった。いや、相手は男だぞ、冗談で言っているのに真に受けるやつがいるかよ、しかも同性だぞ。
「…ごめん、冗談、そんな顔しないでよ笑」
「なんだよ、冗談かよ…。ちょっと心臓がバクバクでどきどきしちゃったじゃんか…」
「…え?いや、なんでもない。早くいかなきゃ遅れちゃうよ」
---------
------
---
それから時々、そういう言葉を冗談で言ってくるのだが、時々冗談に聞こえなくなる時があって、心臓に悪い。
そんなことを思い出しつつ、アイスを食べているさおちゃんに熱中症かもしれないと思い、声をかける。
「ごめん、さおちゃん辛かったよな。」
「え、何が!?急にどうしたの…?」
「いや、俺が気づかなくて悪い。無理させて悪かったなって」
「それってどういう…」
「早く帰って休もうぜ、さおちゃん顔赤いし、外にいすぎたな…」
「あ、いや…うん、そうだね」
そうして俺等は、それぞれの家に帰った。
さおちゃんは気遣いの人だから、せめて俺だけでも気づいてやらないと倒れちゃったら困るしな。
そもそもうちの学校は、女子もズボンを選べるので、なおさら制服による性別判断が難しいのだ。
加えて、さおちゃんは気遣いもさながら、体が華奢すぎるので女子向けの制服しか体に合わなかったのである。
それも相まって、どういうわけは母性本能的な庇護欲が出てしまうのである。
それはそうと各々家について、早速シャワーを浴びる。
実は家に親はいない。
というのが、地元の高校は少し荒れた学校が多く、進学を考えた時、都内の少しまともな学校に通いたかったからである。
そもそも地元の高校で同性に対する悪戯があったと聞いた時は、正直引いた。
いくらなんでもそういうのはまずいだろと。
女性であっても駄目だが、同性はもっと違うベクトルでアウトというか、とにかく無理なのだ。
そんなわけで俺だけ都内でマンションに一人暮らしをしている。
親からの仕送りで勉強に専念し、楽しくやっているわけだが、もう少し彩りにあるキラキラした青春がしたいよなーと思いながら、自炊した飯を口に運び、スマホを眺めてため息をつく。
この部屋の中では、太陽に蒸発させられず、こだまするばかりであった。
そうだ、明日は土曜だからスーパーに行くか。
そうして俺は眠りにつく。
次も書きます