消えそうなあなたへ贈る言葉
目を覚ますとそこには白い空間が広がっていた。
雪よりも白く、修正液を部屋中にぶちまけたような何もかもが白く塗りつぶされた景色。
ここが外なのか、部屋の中なのか、それともそういう世界なのかすらもわからない。
頭の中は霧がかかったようにはっきりしない。
自分は何者なのか、自分がどうしてここにいるのか、今まで何をしていたのかそれすらも曖昧になっている。
「あなたはこの世界における鍵」
突然声が聴こえてきた。
顔を上げるとそれはいつのまにか、そこにいた。
景色に溶けるぐらい白い服を見に纏い、金色の目と景色に溶け込まないほどの存在感を放つ長い黒髪の女性。
あなたは誰?と言葉を発しようとしても声がでない。
まるで薄い防音の幕を被せられたような、麻酔で口が動かなくされたようなそんな不思議な感覚に襲われる。
頭の霧がより濃くなっていくのを感じた。頭が回らなくなり、目の前にいる女性のことすら考えられなくそうだ。
「私は世界における光であり、影である」
不思議と女性の言葉はすらすらと頭の中に入ってきた。
「私は世界における傍観者であり、観測者」
女性の声はどこか懐かしいような、安心するような奇妙な心の安らぎがあった。
「私は世界における異物であり、中立である者」
まるで脳に言葉を突っ込まれているような、情報をアップロードされているような感覚。
「私はゲームマスターであり、ゲームチェンジャー」
脳が溶けそうになる声が響き渡る。夢なのか、現実なのかもわからなくなるような感覚。
「そして私は■■■■■■■■である」
今まで頭の中に聴こえていた女性の言葉に突如ノイズのような物が入り、言葉が聴き取れなかった。
だがそんなことはすぐにどうでもよくなった。
まるで深い谷底に思考を落としたように、疑問と雑念はすぐに思考の海へと消えていった。
「あなたは今後の人生にとっての英雄であり、反逆者」
顔を上げると女性は無表情でこちらを見ていた。
なのにその目はなんだが悲しそうであり、嬉しそうであり、懐かしい物を見るような眼差しを向けていた。
「あなたは今後の人生にとっての被害者であり、加害者」
その女性の顔を見ていると、何故かこちらも懐かしさと心地よさを覚える。
まるで昔から知っていたかのような、安心を覚える家族のような感覚。
「あなたは今後の人生における剣の役目でもあり、盾の役目でもある」
しかし、それと同時に不気味さも感じる。思考を操られているような、心の中に別人の心を捩じ込まれているような感覚。
「そしてあなたは■■■■■■■である」
また女性の言葉にノイズが走った。
だがそれもすぐどうでもよくなった。まるで頭の中で誰かが言葉をゴミ箱に捨てているような。
パソコンの情報を削除するように言葉を消してしまったような感覚。
「あなたの道は作った。あとはあなたが歩くだけ」
女性の言葉が終わると、白い空間が光に包まれた。
女性の姿はまるで世界が透明になっていくように、眩い光の中に消えていった。
光の中で最後に見たのは悲しそうに笑う女性の顔だった。
異世界転生系始めて書きました。毎週土曜の昼に更新していこうと考えていますので何卒よろしくお願いします。




