憧れの魔法少女5
ナミ先輩との話し合いを終え、放課後の時間。
わたしたちは学生寮に帰る前に、街に寄ってみることにした。
「まさか、今の学園にいる光の魔法少女がヒカリはんだけとはなぁ……これはちょっと意外な展開や」
「意外って、どうして?」
頭で腕を組むミヤナちゃんに、わたしは問いかける。
「いやな、昼間の話の続きになるんやけど、<フィランソロピア>には同じ属性の魔法少女同士でしか行えへん特殊な契約……みたいな、まあそんなことをやるカリキュラムがあるんよ」
これについては知っているようで、レディーナちゃんも話に参加する。
「別に強制されている訳ではないのですけれど、魔法少女として強くなりたければ必ず通らなければならない道だと言われていますわ!」
「割と最近に出来たもんやけど、今のクラス3の有望株たちはみんな、この道を進んで強くなっていったんや」
「ほへぇー」
わたしはまるで内容のない返事をした。
よく分からないけど、面白そうだし興味はあるかもしれない。
「わざわざ転入してくるくらいやし、ヒカリはんは絶対に通ることになると思ってたんやけどなぁ」
「……ああ、そっか! 同じ光属性の魔法少女が居ないから……!」
「やりたくても出来ませんわね。こればかりは、どうしようもないですわ」
気づいたわたしに、レディーナちゃんもそうだと頷く。
となると、あれ、わたしが<フィランソロピア>に来た根幹が揺らぐことになってしまうんじゃないかな……?
だって……。
「光属性のヒカリさんを教えられるのは、同じ光属性の魔法少女だけですわ!」
「せやけど、今の<フィランソロピア>にはそれが居ないっちゅーことは……」
「何か、理由があるってこと?」
「ウチはそう思っとる。ことこの問題において、上層部がくだらんミスをするとは思えんしな」
光属性は魔物への特攻効果を持つため、日本の安全のためには是が非でも大切に育てたい存在である……というようなことを、クラス2になった頃に説明を受けた。
なのに、今のこの状況はどういう……。
「……そういえばヒカリさん、ヤミ先輩と面識でもお有りでしたの?」
「いや、ない、はずだけど……」
「まあ、そうですわよね」
「そういう反応やったしな」
レディーナちゃんもミヤナちゃんも納得した感じだ。
最も後者は少し別で、レディーナちゃんは些細なことに対してときどき鋭い指摘をすることがあるので、それが起こったうえで自分の見識とも一致する、と納得した訳なのだが。
そんな時だった。
「……?」
「ん?」
「おや?」
ぐらり、といきなり地面が揺れた。
道路にはヒビが生まれ、それがどんどん広がっていき……。
「オチロォォォー!」
化け物が、飛びだしてきた。
「うわぁ、なんだアレぇ!?」
「まさか、魔物か!?」
「こんな街のど真ん中にですの!?」
それは、全身が真っ黒な闇で覆われた異形の存在だった。
わたしたちからしてみれば見上げるほどに大きく、それが拳を打ちつければそこは黒い染みで覆われ、じわじわと侵食するように広がっていく。
「戦闘課のやつらはどないしたっちゅーんや!」
「あの魔物! もしかして、先日行われた悪の組織掃討作戦の残党ではありませんこと!?」
「なに!?」
言われてみれば特徴は一致する、かもしれない。
取り逃がしがいたなんて情報はなかったけれど、攻撃が謎の黒をばら撒き、それらが侵食していく様はまるで同じだ。
「ミヤナちゃん! レディーナちゃん!」
パニックになりかけるみんなのために、大して情報を持っていないわたしだからこそ声をあげる。
「とりあえず、今やらなきゃいけないことをやろう! わたしたちは、そのための魔法少女なんだから!」
「! せやな、その通りや! レディーナ!」
「ええ! 教習で飽きるほど繰り返してきましたもの! スムーズにやり遂げて見せますわ!」
三人は魔物を囲むように位置取り、それぞれの懐から輝く宝石——変身アイテムたる「魔宝石」を取り出した。
胸の前で握りしめ、強く意識する。
魔法少女としての自分の姿を。
「「「——光昇変身!」」」
魔宝石が輝き出す。
三人はそれぞれ白、黄緑、空色の光に包まれ、そして——
「——天照らす輝きの光! 魔法少女ルクシア・ソラーレ!」
「——未知なる音が道を示す! 魔法少女ルクシア・アリア!」
「——雪よ、優雅に美しく舞いなさい! 魔法少女ルクシア・ネージュ!」
三人の魔法少女が、姿を現したのだった。




