第20話 剣聖への道 〜真剣〜 その1
妹には何故それが出来てしまうのか、俺にはさっぱり理解出来なかった。
そりゃ。元ネタはあるにしても俺が頭の中でテキトーに考えた修行方法ですよ。まぁ、第一層、第二層、なんて言い方なんかは、もちろん俺も『イカしてる』って思ってるし、テキトーとは言いつつも修行の内容だって一応理屈は通してみたつもりだ。
一層は見る力。脳内にバーチャル空間を構築してそれに瞬時にアクセスする……だっけ?
そして二層は確か……精密機械の様に正確に体を動かす力。身体の全筋肉を完全に制御して、目を塞いでいても考えた通りの動きが出来る……だったと思う。
でもね。それが本当に出来るなんて俺はこれっぽっちも思っていなかったわけです。だってこの修行の本来の目的は――それっぽいこと言って妹を諦めさせるためだったんだから。
だから――
「ホント。理屈だけでそんな事が出来るんだったら、この世の中に『科学者』なんてものは必要無いって話ですよ。」
「……」
「ん?待てよ……」
今、俺。ちょっと大事な事言ったよな。科学者なんていらないとか、なんとか。
あの……。俺、ちょっと思い出したんですけど……
「良く考えたら、こっちの世界には科学者なんて――俺の知る限り一人もいねぇわ。」
そう言えばこの異世界には『魔術師』だとか『錬金術師』だとか――まるで個人の思念が物体に作用しているようなデタラメな技術を使う奴らがいる……いわゆる手品師かペテン師みたいな奴らだ。でも、そんなの異世界から転生してきた俺にしてみりゃどれも理屈にかなっていないんだよ。
だって、それってさ。
「うぐぐっ~」ってそれっぽく念じたら、なんか力が「ぶわー」って溜まって、「うりゃ~」ってやったら火の玉出た。みたいなレベルじゃないですか。知らんけど……
だったら、はっきり言って――万有引力?質量保存?この世界は、そんなの全くお構いなしになってしまうじゃないか。
この前、冒険者のおっさんに見せてもらった『ファイヤーボール』の魔法で一気に台無しになった俺の知ってる物理法則。ならば、この世界でそう言った『物理法則』に変わる物は何だ?
確かにこっちの世界でも、リンゴは地面に落ちるし、沸かしたお湯は消えちゃうんじゃなくて、水蒸気となり雲となり雨を降らせて大気を循環する(多分)。
しかしこの異世界って場所には、その物理法則さえ捻じ曲げてしまう上位の存在があるのだろう。うん。そうに違いない。
やっぱり、『マナ』か?
それとも『魔素』か?
でも俺が思うにそれは『意志』もしくは『意思』に作用する力だと思うんだ。妹が見せてくれた、信じる力。どうしても修得したいと言う努力と根性。
多分それだよ。絶対それ。
もちろんその中には怒りや悲しみって奴らもいれておこう。
だって俺がよく知ってる、超宇宙人とか海賊王になりたい奴とかさ……。他にもたくさんいるけれど。不可能を可能にするヒーローの力ってのは、いつだって理屈より『信じる力』だろ?
まぁ……。
なんて戯れ言を約半日くらいで考えついた俺は――
突然バカバカしくなって、この異世界の理について考えるのを止めた。
凡人の俺がごちゃごちゃ思索を巡らしたところで、結局のところ出来るものは出来る。出来ないものは出来ないのだ。
ただ言えることは、今までの『俺流修行法』は間違ってはいなかったと言うこと。誰が何と言おうが、それは既に俺の妹が証明してくれているのだから。
と言うことで――
ついに俺は妹の修行を本格的な剣術へとシフトしていくことに決めた。もちろん、そこにはついさっき半日かかって新たに解き明かした、『やればできる!』の超俺理論ってやつをふんだんに盛り込んでね………。




