タンタンと
コッコッ。
平らな面で割った方が良い、っつったってさあ。ボウルの縁んとこで割るほうがカッコ良いじゃん。
パカッ、プルンッ。
耐熱ガラスのボウルに、全卵がポツン。卵黄は少し揺れている。
それにしても。
どう見たってこりゃオレンジもオレンジで、もはや卵黄じゃなく卵橙だろう。
栄養的にどうなのかは知らんが、親鶏の食べたもんが影響してるらしい。前に米とか食べてるとかで、白っぽい卵黄を見た。
何にしても、色なんて特に重要じゃない。
何々、あー。これは粘つくな。
分量より気持ち多めの水を、計量カップに入れた。
メスシリンダーだっけ?
水平に見なきゃなんだよな、確か。
けどそんなんしないし、何となく線のとこ来てりゃ良いっての。
ボウルに投入。
牛乳牛乳、って冷蔵庫開けてみりゃ。……あー。
低脂肪だが、まあ良いか。これはこれで独特の味が好きだが、牛乳かと言われると何だか納得はいかない。
まあ、今回は本当にどうだって良い。飲むわけじゃなし。
こいつも計量カップに入れてから、ボウルへ。
ちょっと糖分が悪さするかも知れないが、ヨーグルトも入れるか。
4つ1セットんなった加糖のヨーグルト。1つだけ残っちゃってたんだよな。なーんか、飽きちゃって。
プレーンのデカいの買って、ジャムとか混ぜて食べる方がむしろ残らなかったり。水切りしてみたり、色々やれるしさ。
ヨーグルトをボウルに入れる。使ったスプーンは舐めて、シンクに。
カランッ。金属音。
泡立て器でシャカシャカっと。
卵と水と低脂肪乳とヨーグルトが、撹拌されて一体となる。
これ……、一体となってんのかな。なんかヨーグルトの欠片がプカプカ漂ってんですけど。……まあ、良し。
さて、いよいよ粉。1回分が小分けんなってんのね。
今日の粉はホットケーキミックス。必要ないっぽいが、ザルでふるいつつボウルにイン。
順番ミスったか。ミスったな、これ。
完っ全に粉が乗っかっちゃってる。卵と水と何やかんやの液体の上にオンしちゃってる。いや、ライドか。
ライドオンしてるよ、完全に。あー、混ぜにくいぞこれは。
案の定ってヤツですけど、そこは開発担当者さんの汗と涙の結晶。きちんと混ざっちまいましたとさ。めでたしめでたし。
めでたしじゃない。途中だっつうの。
おハーブ入りのソルトを少々、本当に少々。黒コショウ、粗挽きで。割と多めに。ペッパーミルをガシガシ回してさ。
で、グルグル混ぜます。使うのはレードルなんてオシャレなもんじゃない、お玉よ。
って名前ちゃうだけやないかーい。
……はい、衣は完成。
なんちゅーかね、フライドチキン的な感じになるのでは無いかと考えたわけですよ。なんちゃってフライドチキン。
とか言いつつ揚げるのは芋。
アイエムオーの芋ですわ。薩摩藩の芋。薩摩はん、やないでっせ。
サツマイモとか言っておきながら、ナルト金時さん。
ちょいと斜め切り。
トントントントン。
デンプンがどうとか、アクがどうとかはどうでも良い。下味も要らぬわってことで塩水にさらしたりもせず、ボウルへダイブ。
アシスタントが用意してくれていた熱い油ん中に、甘き衣纏いしサツマイモをぶち込んでやるぜ。
あ、アシスタントなんざいないです。コソコソっとスタンバっときましたです、ハイ。
ザクザクさせたい。
それでいてカチカチにゃしたくない。
当然、焦がすなんてあり得ねぇよ。
タイミング見極めて、これまたスタンバらしといたトレーに変則芋天を乗せてく。菜箸からも衣のザクザク具合がビンビン伝わってくるぜ。
さてさて、紙敷いといた皿に乗せますか。
俺用のと、タンタン用のと。2枚。
タンタンはまぁあれで本来的な意味で畜生だし、あんま揚げ物は良くないよな。少なめにしとこうか。
ガラガラガラ、ガッ、ガララッ。
ベランダの引き戸、アルミサッシのガラス戸を開ける。建付け悪いのかスムーズさに欠けるな、相変わらず。
土埃のせいかも知れないし、今度の休みにでも掃除するか。
なんてことをもう何年も思ってる気がしないでもない。
タンタンの分の皿を置いて、戸を閉めた。閉める時は割とスムーズなのが謎だぜ。
さ、食べよ。
おほっ、思っていたとおりにザクザクだ。
あー、けど甘みが強いかな。日和らず、もうちょいハーブソルト入れるべきだったかも。こりゃ、芋が当たりだったな。普通に蒸すなり焼くなりしても美味いはず。
当たり外れは仕方ない。工業製品じゃないんだから。たとえ工場で色々と管理されて作られてたって、バラつく気がする。
タンタンは、あー。見逃したかな。
いや、いるな。
モゾモゾ、丸まった背中が動いてるのが少し見える。
あいつ、ずっと小さいんだよな。未熟って感じではないし、元気そうだから良いんだけど。
二十年ぐらいずっとあのままなのは不思議。
それとも俺が知らないだけで、いつの間にかタンタンの子とか孫だったりするのか?
タンタンがタンタンらしく、ムシャムシャパクパクやってりゃそれで良いか。考えても分かることじゃないからな。
……おっと、昼寝しちまってたか。
タンタンは、いないっぽいな。どれ、食べきったろうか。
ガラガラ、ガラッ、ガッ、ガラガラ。
舐めたみたいにキレイじゃんか、皿。良い食いっぷりだな、タンタン。
18時23分、皿を回収。
スッ、サッ、ササッ。
プルルルルル。
あー、俺だ。今日もまた、カラスに何か食わせていたぞ。
ああ、そうだ。
ベランダに皿を置いていた。恐らく何か、揚げ物だな。
フライドチキンの衣のような、何か粉以外の黒い点がポツポツと混じって見えた。
ああ、しかしフライドチキンには見えなかった。そぎ切りした鶏肉という可能性は捨てきれないがな。
あれだけカラスが食いに来たんだ、肉じゃない方が可能性としては低いように思うが。
おいおい、3羽や4羽じゃない。今日は下手すりゃ2桁届きそうだったぞ?
うるさいに決まってんだろ。うちのマンションの方まで普通に聞こえたんだからな。カァカァカァカァ。あれはそのうちクレーム入れられるんじゃないか?
余計なこと、ね。
いや、別に。
いや、それはそうだろ。アンタがストーカーじゃなきゃ何なんだ?
サンプル?
あー、例のタヌキだろ?
前から思ってたんだがな、イマジナリーフレンドなら俺だって聞いたことはある。しかし、イマジナリータヌキって何だ?
いや、どんな生活をしていたらそんなものを生み出すのかが分からないんだよ。普通に友達や恋人もいるようだし、一人暮らしの家に呼ぶぐらい家族仲も良い。
会社? 俺はあくまでも家での動向調査しか、受けてないぞ。報告した以上のことは知るか。やるなら別の奴を雇え。
ああ、はいはい。とにかく、金をくれたらそれで。
毎度あり。じゃあ、次は明後日にでも。
おう。




