83話 穏やかな一時
「お父様、お母様。お話があります」
家に帰っていきなりか……。
「アルネア、少し待ちなさい」
「そうですね。こんな所で話さずとも良いでしょう?」
まあ、そりゃパパンもママンも驚くよな。街に行った娘が帰ってきたと思ったら、モンスターと身なりの良い獣人を連れて、突然玄関先で話があるっているんだから。
ムム。流石アルネアお嬢様のご両親。母親は少し細過ぎるが、若い頃は大層美人だっただろう。父親の方も腹は少し出ているが、太りきってる訳では無い。中年ならではの太り方と言った感じだ。勿論顔は大変整っており、若い頃は大層モテた事だろう。
後、屋敷に反応は……女性が一人に男が三人か。見た感じだと、使用人の中では女性が一番偉いんだろう。格好や年齢的に女性は乳母兼メイドで、いかにも農民みたいな男三人は、下男と言ったところだろう。
流石にこんな所にまで、変なローブ野郎共が居たりしないようだ。一息着けそうだな。
「アルネアのお客様か。さぁ、こちらへどうぞ。私はアルネアの父で男爵のカッヘバン・アッシュ・アーヴェンスだ。こちらは妻のルミネ」
「お招きにあずかり光栄ですわ!氏族のルンフォード・アーリントですわ。人間風に言うなら、私も貴族になるのかしら?」
「大したもてなしもできずお恥ずかしい限りですが、歓迎いたします。ようこそ我が家へ」
「当然の訪問にも関わらず、歓迎痛み入りますわ」
「と……アルネア。そこのモンスターは?少なくとも襲っては来ないみたいだが……」
「モンスターなんて大丈夫なの貴方?」
「安心してください。この子はモノリ。私がテイムしたモンスターです」
「なら、大丈夫だろう」
「でも、モンスターですよ?」
「この子は賢いので、お母様がご不快でしたら私の部屋で待たせておきましょう」
はいはい。まあ、部屋の外どころか、皆が屋上や地下で話してたとしても聞こえるけどね。
「モノリ。突き当たりの部屋よ」
両親を警戒させないように、非常にゆっくりと触手を動かして、承諾する素振りを見せる。
「ふむ。賢いと言っていいのかな?」
「ええ、お父様。ご心配なさらないでください。大人しくさせておきます」
仕方が無いので、さっさと部屋から出て、アルネアお嬢様の部屋らしき所へスルッと入る。
別段綺麗でも汚くも無いな。しかし、まあ、貴族にしては物が無い。哀しきかな貧乏貴族。簡素な宿屋だと言われた信じるレベル。ベットとクローゼット、後は鏡台ぐらいしかない。
現代日本で泊まるなら、素泊まり数千円と言ったところだな。旅費を安く抑えたい時に使うホテルって感じ。
ここに居ても特にすることがないので、無い耳を澄ませる。
おー聴こえる聴こえる。盗み聞きはいけない?それは人間の倫理観だな。俺はモンスターなので適用されない。
「アルネア。話の前に聞かせてくれないか?逃げてきた時に、テイムしたモンスターは失ったと聞いたが、どうして今頃になって……」
「モノリは賢いから、自ら主である私を探したのでしょう」
「ふむ。テイムされていない状態で人を攻撃しないモンスターなどあまり聞かないし、アルネアにテイムされたモンスターであることは確かなのだろう。にわかには信じ難い話ではあるがな」
アルネアお嬢様のお父上は、物分りが良さそうだな。
「それで……!」
「私は許しませんよ!」
「おいおいまだ何も言ってないじゃないか」
「いいえ。テイムしたモンスターが帰ってきて、すぐに話があるなんて、大体の察しが着きます。私は許しませんよ。大事な一人娘を危険に晒す気はありません」
モンスターには詳しく無さそうだから、俺の前では不安そうだったが、芯のあるしっかりした人っぽいな。これは……説得できなくて飛び出しそうである。
まあ、そうなったら、俺が滅びてでも生きて返すので許して欲しい。
それでも、相手は親だしアルネアお嬢様には、是非ともマシな対応をしていただきたいところ。
「聞いてください。私は家が決めた結婚相手とは、結婚したくありません」
「……貴族としての務めを放棄すると?我々が暮らせているのは、ここに住む皆のおかげなのだぞ。それを理解していて、尚、投げ出すというのか。私も自身が平民であれば、何処となり誰となり好きにしろと言っただろう。しかし、貴族として産まれた以上、民の為に好む好まざるに関わらず、貴族として果たさなければならない義務がある。故に罷りならん」
「そうです。あなただけの問題では無いのですよアルネア」
「ここは辺境の地。後ろ盾が無ければ、私達だけでなく領民が飢えやモンスターに苦しむ事になるのだぞ。それを分かって言ってるのか」
「必ず、お父様達が選んだ方よりも良い人を見つけてみせます!」
「その保証が何処にある!」
優しそうなお父様が声を荒らげて立ち上がった。
アルネアお嬢様も珍しい経験らしく、目を一瞬丸くしていた。
領民想いの良い領主が、娘にとって良い父親であるという訳では無いらしい。俺は貴族の義務とか知らんし、お嬢様が絶対に嫌だと言うなら、攫って森に逃げるつもりだ。正直、ここの領民にも、お嬢様の両親にも思い入れは無いしな。
……おっと、これはモンスター的な思考だな。親は大事だよな?
「あの、少しよろしいでしょうか?」
「お恥ずかしいところをお見せしました。しかし、これは家族の話ですので」
「いえ、提案がございまして」
「……どうぞ」
「アルネアさんを、獣人の国へ留学させるという形ではどうでしょうか……そうですね、交換留学という形で人間と獣人の友好関係の構築という名目です。魔王は既に復活しています。手を取り合うべきですわ」
「あなた……」
「アルネア。ワガママで強気なお前のことだ、昔のように禁止すれば、家を飛び出してしまうのだろう」
流石パパン良く分かってらっしゃる。
「……はぁ。一人娘を勘当する訳にもいかん。アーリントさん。すまないが、あなたにそれだけの権限があるようには見えない」
「お父様に直接お願いすれば大丈夫ですわ!」
ルンフォードの父親って、あの猛獣みたいなのだろ?人間嫌ってたよな。しかも、直接戦う事が誉だと言っていた。テイマーなんて他力本願に見えるだろうから、滅茶苦茶嫌いそうなんだが、本当に大丈夫なのか?
まあ、ルンフォードは多少世間知らずっぽいところはあるが、頭が悪い訳じゃないしな。多分大丈夫だろうけど……。
「では、アーリントさん。お願いできますか」
「良いんですかあなた?」
「家を飛び出したや、一人娘を勘当したと言われるよりはマシだろう。それに、アルネアの性格を知っているだろ。無闇に部屋に閉じ込めておくよりはいいさ。何をするか分からないからね」
「……そうですね」
お嬢様昔怒られて、外出禁止をくらった時に、相当無茶したんだろうな……。
「アルネア。獣人の国への留学とするが、必ず帰ってくると約束しなさい。今はそれだけでいい」
優しいな。アルネアお嬢様が少し羨ましいぐらいだ。
「はい。約束します。ありがとう……お父様、お母様」
「名目は留学だ。数年が限界だぞ。分かっているな」
「はい。失望させたりしません」
「あのモンスター襲撃事件から生きて帰った娘が、また目の前から居なくなる親の気持ちを少しでも汲んでくれるなら、家にいてくれてもいいんだぞ?」
「意地悪を言わないでくださいな」
「はは、悪かった。行ってきなさい」
「いつでも帰って来て良いのですよ」
「ご飯はちゃんと食べなさい」
「夜更かしはお肌に悪いですからね」
「あまりそう子供扱いをされると、恥ずかしいです」
「心配ぐらいしかしてやれることが無いのだ。このぐらいはいいだろう」
「そうです。本当は行って欲しくないのですから」
「……本当にありがとうございます」
キュプロクスに襲われた街から逃げてきた娘を、両親から引き離す。いくら俺でも、多少の罪悪感はわくな。
お嬢様の意思は固いみたいだ。どうしても、結婚したくないんだろうな。お嬢様の顔にもハッキリと罪悪感が浮かんでいるが、申し訳なさそうな顔をしてるだけで、意見は変えないみたいだ。
「今日はアーリントさんも泊まっていくだろう?」
「私としては早く行きたいのですけど」
「一日ぐらいいいだろう?」
「ええ、是非泊まらせてくださいな」
「ああ、ありがとう。アーリントさん」
ルンフォードって意外と空気が読めるんだな。
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名前:モノリ 性別:不明
種族:ラークスフォッグ(霧の湖)
Lv17/70
HP602/602
MP521/521
状態:普通
常時発動:《共通言語理解》《隠形Lv.5》《触手Lv.10》《触手棘》《上位感知Lv.3》
任意発動:《調べる》《薬草生成Lv.9》《植物成長速度Lv.8》《植物鑑定》《水汲みLv.10》《血液吸収》《猛毒Lv.2》《噴霧Lv.4》《情報開示Lv.5》《指し示す光》
獲得耐性:《恐怖耐性Lv.10》《斬撃耐性Lv.8》《打撃耐性Lv.7》《刺突耐性Lv.8》《火耐性Lv.2》《風耐性Lv.2》《水耐性Lv.7》《土耐性Lv.5》《雷耐性Lv.2》《氷耐性Lv.8》《邪法耐性Lv.7》
魔法:《土魔法Lv.2》《水魔法Lv.3》《氷魔法Lv.4》《魔導の心得Lv.3》《魔力の奔流Lv.3》
称号:意思ある卵 従魔 絞殺好き 逃走者 雑用係 危険な棘 馬車馬 耐性植物 読書家 急成長 近親種殺し 魔法使い 看破せしもの 上位種殺し(氷) 奪われしもの 凶性植物 狼の天敵 上位モンスター 魔王の誓約 エルフの盟友 殺戮者 看破の達人 導かれしもの 光を集めるもの 斧の精霊(?)
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