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67話 ある意味危機

 命は助かったが、これはこれで不味い。


 エルフに、アルテミス達に見つかってしまった……。


 まだ地図を盗んでないので、逃げる訳にも行かないし、命の恩人を攻撃して逃げたことを無かったことにするほど外道にもなりきれない。……ごまかせるか?


『大丈夫ですか?こんな所で何を……』

『一週間もいれば一人で指定場所に戻れると思ったんだろう。だが、迷った。そんでウロウロしてたら外に出ちゃったってわけ……』

『あなたって意外と記憶力が無いのですね』

『いや、エルフの里が右を向いても左を向いても似たり寄ったりなのが悪い。俺は悪くない』

『すごい言い訳ですね……』

『というわけで、夜のうちに元の場所まで送ってくれ。逃げたと思われたくないし、そもそも逃げるなら一日目に逃げてる。荷物も無いし食糧も森で十分だからな』

『まあ、そう言われてみると、逃げるなら一週間も大人しくしてる理由は無いですね』

『そういうことだ』


 では、送りますね。というアルテミスに着いていくと、すぐに指定された場所に着いた。俺が言った「バレたくない」という言葉を汲んでくれて、後ろからこっそり入れてくれた。


 これで、なんとでもごまかせるだろう。朝までにここに居たという事実が重要だ。


 エルフは夜が苦手そうだが、夜勤というか、夜の巡回もあるんだな。夜行性のモンスターも居るだろうから、当然だけど。


 いや、本当に見つかったのがアルテミス達で良かった。……ルナが余計な口をきかないことを祈るばかりだ。


 ……これで逃走用のルートの下見は諦めるしかないな。少なくとも、もう一度外で見つかったら言い訳がきかない。次は、次はというか、最初に行くべきだった城だが、明日挑戦するか。


 翌日、夜までやり過ごし、またこっそり抜け出す。


 城の警備だけあって厳重だろうと思っていたが、感知には殆ど反応が無い。ハイエルフ達の大きな反応は奥の方から動いていないし、動き回ってるエルフの反応は随分と少ない。


 なんでだ、城の警備がこんなに薄いことあるか?やはりソフィアに誘われてるのか?


 ハイエルフの策略を訝しみながらも、更に城に近付くと、城の中の反応が一気に慌ただしくなる。


 しまった!侵入者対策用の魔法か!?


 この世界に警報装置は無いだろうと考えていたが、警報の魔法はあったようだ。


 防御に秀でたハイエルフの居城を侮っていた……。


 確か、ハイエルフ達に謁見した時、城の中を通った時、花のレリーフや花が植えてあるところが、あちらこちらにあったはずだ。自然を愛するエルフの城らしく緑に溢れていた。


 そうと決まれば、まだ慌ててるだけにしか見えない反応が配置に着く前に、さっさと中に入ってしまおう。


 柵や高い壁に意味は無く、長い触手と小さな体でスルスルと抜けていく。自然を愛し過ぎたためか、神王樹に極力手を加えたく無かったためかは分からないが、一階の高い天井の所々には穴が有り、俺のサイズと触手なら、自在に行き来できそうだ。=


 触手大活躍だな。なんなら、触手しか活躍してないまである。


 異世界のアルセーヌ・ルパンと行きますか……!


 軍事物資って、どの辺にしまい込んでるんだろう。地図だから、書物と一緒にという可能性もあるか?いや、作戦会議室的な所に壁に掛けてあるとか?映画でもよく見るし……いや、あれは映画だしな。倉庫とか探した方が良さそうだ。


 倉庫ってーと下だよな!多分。


 しかし、あれだな。いくら異世界とはいえ、木の中に城を造って人が住めるとか、どんだけデカいんだよ神王樹……。


 一階の下にもエルフの反応が多数。時間的に見張りや巡回も、警報のせいで完全に増員された後だろうから、いつもより多いと仮定しても多いな。


 あっちこっち、下もうじゃうじゃしてる。つーか下何部屋あるんだよ。エルフの反応が固まってる所多過ぎるだろ。

 まさか神王樹の根の数だけ部屋が有るとか言わないよな?


 警備を掻い潜りながら虱潰しに探したら、何ヶ月かかるか。警報装置も魔法だから、壊せば解除できるってもんでも無いし。


 ………………。


 やめだやめ。ソフィア様とやらに直談判しか無いな!……という訳にも行かないんだよな。口が無いしモンスターだし。助けたアルテミスや西や南のに、実はハイエルフ様がいて取り成してくれる!なんて都合のいい事が有ればいいんだけど、助けた中にハイエルフ様がいて、アルテミスと西の有力者のあんなにクソみたいな話し合いが起こるかよ。


 チート。チートが足りない。探し物の場所が一瞬で解るチートか全体マップのチートと、森を傷付けずに魔王軍を一掃できるチートが欲しい。


 どうやればハイエルフに恩を売れる?いや、そんなものが無いから、盗んで逃げようって考えたはずだ。


 詰んでんな〜


 アルテミスに相談してみるしかないか。現状会話できる相手がアルテミスしかいないもんな。


 まだ見つかってないし、こっそり抜け出すか。


 まだ、見つかってな……?感知反応がおかしい。なんか上手く言えないけど、縮んでるというか、狭い?反応が近い訳では無いか。反応は上だもんな。


 移動移動っと。確かこっちから来て〜

 そうだ。この壁だな。壁に俺の触手が引っ掻いた後が薄らと残ってる。


 登おぉおお!?危ねぇ!壁の向こう側に反応があった。ん?いや、そんないくらエルフっつても瞬間移動するかよ。さっきまで無かったんだから行けるはずだ。


「いたぞ!捕まえろ!」


 はぁ!?いや、後ろに反応は無かった!いや、急に反応が出てきた!どうなってんだ!俺の感知が効かないなんてそんな馬鹿なことあってたまるかよ。こちとら、最高レベルの感知能力を持ってんだぞ!


「早く捕まえろ!ソフィア様の前に引っ立てるんだ!急げ!」


 やっぱりソフィアか!クソが!


 攻撃する訳にもいかないし、触手で足元を掬って縛り上げるしかないか。


 触手を床に這うように走らせ、絡め取ろうと巻き付ける。


 しかし、相手は植物系モンスターと戦い慣れてる身軽なエルフの軍人。簡単なステップで触手を次々と躱していく。


 厄介だなまったく!


「あの触手が脚の役割なのか!速いぞ!回り込め!」


 クッソ!軍人だけあって統制が取れてやがる!これじゃ逃げるのは無理だ。攻撃するか?いや、ソフィアの前に連れてかれてから処分が決まるのか?攻撃したら、今ここで殺されてもおかしくない。大人しく捕まっておくか……。


「捕まえたぞモンスターめ!」

「手間掛けさせやがって」

「しかし、なんで急に大人しくなったんだ?」

「観念したんだろ」

「逃げてたモンスターが、呼び掛けたからって止まるか?」

「俺に言われても知るかよ」

「おい、お前アルテミスさんを呼んでこい」

「なんで?」

「アルテミスさんは、こいつと意思疎通が可能らしいんだ」

「そりゃすごい」

「すぐ、連れて来ます」


 異世界のアルセーヌ・ルパン。神妙にお縄につく……。


 ~完~


 って、なってたまるか!


 幸いアルテミスが来てくれるらしいので、弁解の余地はあるな。

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 名前:モノリ 性別:不明


 種族:ラークスフォッグ(霧の湖)


 Lv5/70


 HP554/554

 MP498/498


 状態:普通


 常時発動:《共通言語理解》《隠形Lv.4》《触手Lv.10》《触手棘》《熱感知Lv.10》《魔力感知Lv.9》


 任意発動:《調べる》《薬草生成Lv.7》《植物成長速度Lv.7》《植物鑑定》《水汲みLv.9》《血液吸収》《猛毒Lv.1》《噴霧Lv.4》《情報開示Lv.3》


 獲得耐性:《恐怖耐性Lv.10》《斬撃耐性Lv.6》《打撃耐性Lv.5》《刺突耐性Lv.6》《火耐性Lv.2》《風耐性Lv.2》《水耐性Lv.7》《土耐性Lv.5》《雷耐性Lv.2》《氷耐性Lv.8》《邪法耐性Lv.6》


 魔法:《土魔法Lv.2》《水魔法Lv.3》《氷魔法Lv.4》《魔導の心得Lv.2》《魔力の奔流Lv.3》


 称号:意思ある卵 従魔 絞殺好き 逃走者 雑用係 危険な棘 馬車馬 耐性植物 読書家 急成長 近親種殺し 魔法使い 看破せしもの 上位種殺し(氷) 奪われしもの 凶性植物 狼の天敵 上位モンスター 魔王の誓約 エルフの盟友 殺戮者 看破の達人


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― 新着の感想 ―
[一言] 相手にも知能と実力とがちゃんとあるのがいいですね。テンプレだと実力者的地位にゐる人たちですらな、なんだってーとなるので異世界人に敬意が無いなとか感じてしまひますね。
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