100話 火山調査録3
クラウンの『ウィンドブレス』と冷気の腕輪のおかげで、調査は順調だ。クラウンが居なければ、碌に調査にならずに、撤退していたかもしれない。
ドンドンと、アルネアお嬢様達は俺の触手椅子で休憩しつつ、山を登っていく。
最初からこうしてればよかったな。俺の感知範囲ならモンスターも迂回できるし。
そんな順調だったはずの登山に、アレクが口を開く。どうした勇者様?
「……もしかして、モンスターを避けながら進んでくれてるのかな?」
「ええ、さっきからあまり遭遇しないわね」
こんだけクソ暑いんだから、体力は温存できるだけしといた方がいいと思うんだが?不味ったか?
「これじゃ調査にならないよ。普段街から街へ移動する時とかは、すごい役に立つ能力だけど、今は調査だからね」
あ、そうか。すっかり忘れてた。山頂に着けば、ボスモンスターかなんか居るもんだと勝手に思ってた。さっきアリアが調査依頼って具体的にどうすればいいわけ!?みたいな話してたのに、適当に聞き流してたかも。まあ、人間なんだから、そんな事もあるよね。……許せアレク。
そういや、どうでもいいけど、アニメや漫画の主人公達ってよく昔の事覚えてるよな。いや、話のテンポが悪くなるから、思い出す時間を省いてるだけなんだろうけど……。仮に俺達に主人公がいるとすれば、勇者のアレクだろうし、俺はざっくばらんでいいか。そもそも、一般人でしかない俺に高度な記憶力を求めんなって話だよな。
大丈夫うちは意外と真面目なの多いから、大事な事は俺以外が覚えてる!
『大事な事は俺以外が覚えてる』
ちょっとセンチな映像をバックにすれば、名言キャッチコピーっぽくない?ちょっとカッコイイじゃん俺。
「モンスターの大量発生や、通常時は存在しない個体の出現だったかしら?」
「そうだね。モンスターの仕業じゃないってなれば、火山が活動を止めるまで待つしかないから、今はモンスターが原因であった方が有難いかな」
やーやーアレクさん?火山を噴火させるほどの、超常の力を持つモンスターなんか勝てないよ?火属性の精霊やモンスターの異常活動とかならいいけど……この場合敵が多ければ勝てる。処理できると言った方が正しいかな?もし、敵が一体や極小数だった場合は、どうにもならない。
火山を噴火させるほどの超常の生物。それは森王なんかに匹敵する存在だろう。もしくは、居るとされながら、未だに一度も姿をあらわしていない、産まれながらに最強を約束された種族。
『ドラゴン』
ついに、龍種とまみえる時が来たのか……?王種ですら手も足も出ないのに、神話に謳われる最強の生き物なんて、どうすりゃいいんだ?出てきた瞬間にゲームオーバーだろ。
敵がドラゴンじゃない事を祈るしかない。
取り敢えず、そんなに見た目が強そうじゃないモンスターを、一通り倒しに行くか。
広大な感知範囲に、ちょうどいい数のモンスターが見えたので、そちらに向かう。
見た感じ同じモンスターが三体と言ったところ。
「レッドトーポ?」
相変わらず、スキルの翻訳は雑だな。英語+イタリア語って。レッドラットやレッドマウスじゃアカンのか?スキルにケチつけてもしょうが無いか。混ざってる分有難いと思うべきだな。全部ドイツ語に翻訳されてたりしたら、一切分からんもんな。
「いや!一体違うのが混じってる!あれはスカーレット!変異種だ!」
えっ、どの辺が?色違うの!?
所詮ネズミだしな……。そんな変異種とか言われても、緊張感持てないわ。
「げぇ!?あれは例の!『弦炎様』に伝えなくては!」
ネズミが喋っ!?!?いや、元の世界でもネズミは喋る「ハハッ!」ってな。だから、驚くようなことではない。
スカーレットと呼ばれた個体が、凄まじい速さで駆け、あっという間に見えなくなった。
ネズミでも、モンスターになるとあんなに速いし喋るのな。やっぱ、モンスターって危険な存在だわ。
「何?減塩?塩?」
「うん。まあ、それだけはないと思うよ」
健康かっ!
思ってても言わなかったのに……!口ねぇけど!
しかし、ラッキーだな。
「思いもかけない収穫だったわね」
「何がですの?」
「弦炎様よ」
「?」
「要は、そいつを倒せばいいんでしょ?」
「なるほど!そういうことですのね!」
弦炎は二つ名だろうから、代表的な技か、見た目に由来するんだろうが、一切想像つかないな。マジ醤油。
「何を持ってその弦炎様とやらは、火山を噴火させたのかしら?」
「さあ?モンスターだし、人類に仇なすためとかじゃないの?」
「恐ろしいですわね」
俺の予想が正しければ、その理由も有り得なくはないんだよな。
「上位個体が居なくなったからか、レッドトーポは動かないね」
「倒すなら今じゃない!」
「どんなモンスターですの?見たところ、ただの赤いネズミですけど」
「火属性に強い以外は、殆ど普通のネズミだよ。ネズミ捕りで取れるぐらいさ」
弱いな。だからと言って、スカーレットまで弱いとは限らない。一つ進化しただけで、どれだけ強くなるのかは、俺が1番よく知っている。
見た目が似てる下位種に上位種が混ざってるなんて、ゾッとする話だ。
「ねぇ、さっきのどう思う?」
「待ってれば来るんじゃないかな?」
「私もそう思う」
「わわわたあしわ〜あは〜そう、思いませんなあす〜」
「アンタには聞いてない」
「わざわざ伝えに行ったのであれば、逃げたのではないですの?」
「逃げる理由が見当たらないわね」
「自分の用意したステージを、侵入者相手に放棄するとは思えないな。普通なら迎え撃つと思うけど……」
「そうね。私なら悪質なトラップを満載にして、最奥で待ち構えるわね」
アルネアお嬢様ならそうだよな。敵が消耗したところを叩くなんて、戦闘の基本みたいなもんだしな。地の利があるなら尚更。
しばらく談笑して待っていると、遠くから声が聞こえた。
「ほう?お前らか。ん?あーなるほどな。魔王様にも一応報告をしておけ」
「ただちに!」
一通り俺らに視線を飛ばした後、俺を一瞬睨めつけると、何かに納得したようだった。
「俺が植物系モンスターに負けるとは思えんが、どうしてこんなやつを?火を放てば一瞬で方が着いてしまうだろう」
何だこの不快な感じは。現実世界で、まま味わったことのある不快感。そう、面接、いや相手を値踏みするような、もっと悪意のある……。
「モノリが狙いなの?」
「何故ウィウィを狙うのでしょう?初対面……ですよね?」
「こんなのに、私のレルレゲントが負けるとは思わないけど」
ハッキリと口にした、明確な俺狙いのモンスターは初めてかもしれん。
……嫌な想像が二通り思い浮かぶ。
ひとつは、魔王が植物系モンスター育成ゲームをしている場合。
もうひとつは、俺のように魔王から称号を授けられたモンスター達による、魔王軍入団バトルロイヤルテスト。
どちらも十分に有り得る。モンスターなら、魔王の力を感じれば、一も二もなく従うだろう。俺が魔王に恐怖や不快感、不安などを抱いてるのは、俺の中に人間の部分が有るから。そこが、魔王という存在を否定しているだけで、モンスターの身体自体は、魔王の恩恵をしっかりと受け取っていたしな。
もしかすると、このステータスって……。
創世の存在なら有り得る……か?
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名前:モノリ 性別:不明
種族:ラークスフォッグ(霧の湖)
Lv49/70
HP421/693
MP16/593
状態:怒(小)・魔力残量低下
常時発動:《共通言語理解》《隠形Lv.7》《触手Lv.10》《触手棘》《上位感知Lv.6》
任意発動:《調べる》《薬草生成Lv.10》《植物成長速度Lv.10》《植物鑑定》《水汲みLv.10》《血液吸収》《猛毒Lv.4》《噴霧Lv.6》《情報開示Lv.7》《指し示す光》
獲得耐性:《恐怖耐性Lv.10》《斬撃耐性Lv.9》《打撃耐性Lv.9》《刺突耐性Lv.10》《火耐性Lv.3》《風耐性Lv.5》《水耐性Lv.10》《土耐性Lv.8》《雷耐性Lv.5》《氷耐性Lv.10》《邪法耐性Lv.8》《不快耐性Lv.3》
魔法:《土魔法Lv.6》《水魔法Lv.7》《氷魔法Lv.5》《魔導の心得Lv.5》《魔力の奔流Lv.6》
称号:意思ある卵 従魔 絞殺好き 逃走者 雑用係 危険な棘 馬車馬 耐性植物 読書家 急成長 近親種殺し 魔法使い 看破せしもの 上位種殺し(氷) 奪われしもの 凶性植物 狼の天敵 上位モンスター 魔王の誓約 エルフの盟友 殺戮者 看破の達人 導かれしもの 光を集めるもの 斧の精霊(?) 罠師 害鳥駆除 鳥類の天敵 虐殺者 怨敵を討つ者 復讐者 亜龍の天敵
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