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第09話 偵察から攻撃へ

 眼下に日本軍が造った 「ルンガ飛行場」 が広がる。


早坂と木原少尉、佐々木AI兵、野村伍長が小高い丘の上から飛行場を見ている。


遠くに『ゼロ戦の残骸』が見える。


早坂が双眼鏡で敵の位置を確認する。

木原少尉に双眼鏡を渡す。

木原少尉も双眼鏡で周囲を確認し、佐々木AI兵に渡す。

最後に野村伍長が双眼鏡で「敵の配置」を確認する。


飛行場には米軍が急仮設した、数本の鉄板滑走路が広がっている。

四方に米軍の見張り塔が建っている。

塹壕が空港の周囲を囲む。

塹壕には銃火器が設置されている。

滑走路の隅に米軍戦闘機(F4Uコルセア)が八機、整然と並んでいる。

営舎の右左には各一両、計二両の戦車(M4)が配置してある。

米兵達は破壊された滑走路の窪みの中で作業をしている。

上半身は裸である。


早坂は腕時計を見て、


 「十六時二五分か・・・。もう少し暗くなるまで待とう。木原! 兵を配置に着かせてくれ」

 「はい!」


木原少尉が下がって行く。

佐々木AI兵が、


 「野村、ちょっと俺と一緒に来てくれ」

 「はい」


早坂は二名を見て、


 「おい、何処に行く!」


佐々木AI兵が、


 「あの戦車を分捕れるかどうか見て来ます」


早坂は驚いて、


 「センシャを分捕る?・・・気を付けろ。無理はするな」

 「大丈夫です。死にませんし、段取りは全て解っていますから」

 「なにッ!」


早坂はまた、佐々木AI兵の全身を見る。

佐々木AI兵が、


 「あ、兵を一人連れて行きます」

 「それが良い。大宮を連れて行け」

 「はい!」


佐々木AI兵は野村伍長を見て、


 「野村、大宮を此処に呼んで来てくれ」

 「はい」


野村伍長が急いで大宮上等兵を呼びに行く。

暫くして野村伍長が大宮上等兵を連れて来た。

佐々木AI兵が大宮上等兵を見て、


 「これからあそこの戦車を分捕りに行く。いいか、無理するな。十分、気を付けろよ」


大宮上等兵は驚いて、


 「えッ! あの戦車を? ・・・はい!」


早坂は三名を見詰めている。


佐々木AI兵が、


 「ヨシッ、行くぞ!」


佐々木AI兵と野村伍長、大宮上等兵が丘を駆け降りて行く。


 三人が椰子の木陰に身を潜めている。

米兵の話し声が聞こえる。

交代の米兵は戦車の脇を素通りして、窪みの奥の重機銃に配置する。

佐々木AI兵が戦車(M4)のハッチにめがけて石を投げる。


 「カ〜ン・・・」


反応が無い。

戦車(M4)の中には米兵は居ない様である。

佐々木AI兵が、


 「おい、野村。車の運転は出来るか」

 「勿論です。内地ではトラックの運転手をやってましたから」

 「そうか。じゃ、戦車の運転はオマエに任せる」


野村伍長は驚いて、


 「ええッ! 戦車の運転ですか?」

 「外車だと思えば簡単だろう」

 「・・・まあ」

 「大宮、これから攻撃をかけると中隊長に知らせて来い」

 「はいッ!」


大宮上等兵が椰子林の中を全速で駆け戻る。


 大宮上等兵が息を切らせて早坂の前で報告している。

早坂は驚き、


 「何ッ! たった二人でか?」

 「はい」

 「・・・。木原! 全員に知らせろ。攻撃の準備だ」

 「ハイ!」

 「あの世に行くのに、時間を選んでる暇はない」


 丘の草むらに中隊全員が伏して、『その時』を待っている。


飛行場にちらほらと灯りが点(トモ)る。


野村伍長は戦車(M4)のエンジンを駆動させた。

米兵達はエンジン音を不審に思わず配置を崩さない。

・・・砲塔がゆっくりと回る。

佐々木AI兵が仮設滑走路上の戦闘機(F4Uコルセア)に狙いを定めた。

砲身が固定される。


 「よ~し。・・・テーッ!」


七五ミリの戦車砲から砲弾が発射される。

米兵達は砲の発射音と戦闘機の破壊音に驚く。

戸惑う米兵達。

急いで機銃の配置を戦車(M4)に向ける。

佐々木AI兵が戦車(M4)の機銃ボタンを押す。

猛然と火を拭く重機関銃。

米兵達がバタバタと倒れる。

佐々木AI兵が砲塔を回転させる。


戦車砲の二発目が発射。


二機目の戦闘機(F4Uコルセア)に命中する。

戦闘機は破壊された。


更に砲塔が回転し、佐々木AI兵は米兵達を狙う。

佐々木AI兵が叫ぶ。


 「テーッ!」


一発の砲撃で米兵達が飛び散る。

更に回転する砲塔。

佐々木AI兵は奥に控(ヒカ)えるもう一台の戦車(M4)に狙いを定める。


 「テーッ!」


発射された砲弾はわずかに戦車を掠め、椰子の木に命中する。

米兵が二人、砲塔のハッチを開けて急いで狙われた戦車(M4)に乗り込む。


佐々木AI兵の乗る戦車(M4)の砲塔が回転し四発目の砲弾を放つ。

戦車(M4)に命中するが、ビクともしない。

戦車の覗き窓から外を覗く野村伍長と佐々木AI兵。

佐々木AI兵が、


 「クソ~!」


叫ぶ野村伍長、


 「准尉! キャタベラ、キャタピラを狙って下さい!」

 「ヨッシャ!」


砲塔が回転し固定される。

戦車砲が火を拭く。

破壊音が響きキャタピラが飛び散る。

野村伍長が叫ぶ。


 「ヤッター! 命中~ッ!」


佐々木AI兵も叫ぶ。


 「ヤッタゾ~!」


敵の戦車(M4)が擱坐(カクザ)する。


 丘の上で早坂と木原少尉が飛行場内の凄惨な戦い見ている。

早坂は鉢巻をきつく締め、覚悟の抜刀する。


 「よ~し。いまだッ! 全員、トツゲキ用〜意・・・トツゲーキッ!」


絶叫しながら、真っ先に丘を駆け下りる早坂。

続いて木原少尉と兵士達も一斉に突撃をかける。

米軍陣地はハチの巣を突いた様である。


日下AI兵と緒方AI兵、他のAI兵達も兵隊達の影となり突進して行く。

上空には無数の極楽蝶(ドローン)が飛び交う。


 夜、飛行場内では激しい戦闘が行われいる。

戦車(M4)内で佐々木AI兵が叫ぶ、


 「野村、右に行け!」

 「ハイ!」


野村伍長はハンドルを右に切る。

佐々木AI兵が、


 「違う! 左だ、右!」

 「えッ? あ、はい!」

 「速度を上げろ!」


アクセルを踏み込む野村伍長。

戦車(M4)が急に後退し始める。

佐々木AI兵が叫ぶ。


 「バカッ! ギヤを変えろ! 前だッ!」

 「ハ、はいッ!」


米兵がバスーカ砲を佐々木AI兵の戦車(M4)に向ける。


戦車(M4)に狙いをつけ、トリガーを引く米兵。


弾が砲塔に命中する。

戦車(M4)は一時、停止する。

佐々木AI兵は落ち着いて、


 「・・・野村・・・」

 「はい」

 「・・・踏み潰せ」


野村伍長は驚き、


 「えッ!? ハ、はいッ!」


野村伍長は思い切りアクセルを踏み込む。

唸るエンジン。

佐々木AI兵が砲塔のハッチを開き機銃を猛射する。

次々に倒れる米兵達。


佐々木AI兵に数発の敵の銃弾が当たる。

佐々木AI兵は何も無かった様に戦車(M4)の機銃を撃ち続ける。


戦車(M4)が容赦なく米兵達を踏み潰して行く。


飛行場内では多数の米兵が倒れている。


早坂と河野上等兵が、奪った重機関銃を夢中で窪みから撃ち続けている。


突然、頭上に偵察機(小型ヘリコプター)が現れ、サーチライトを照らし旋回し始める。

早坂は我に返り、


 「あ、来るぞ! 河野、逃げろ!」


早坂と河野上等兵が窪みを飛び出る。

早坂が叫ぶ。


 「撤収~! 急げ、来るぞ~」


必死に逃げる兵士達。


遠雷の様な砲声が聞こえて来る。


暫くすると砲弾が飛行場内に着弾し始める。

佐々木AI兵が叫ぶ。


 「野村、逃げるぞ!」

 「はいッ!」


二人はハッチを開け飛び出す。

途端、戦車(M4)に砲弾が命中する。

砲塔が飛ばされ、同時に佐々木AI兵と野村伍長が飛ばされる。


 『忠魂碑に彫られた名前』

野村晋介 二八歳 陸軍伍長 ガダルカナル島にて戦死


 暫くして佐々木AI兵が目を醒ます。

倒れた野村伍長の傍に鉄帽のAI兵が立っている。

緒方AI兵である。

緒方AI兵は野村伍長に触れる。


野村伍長の身体(カラダ)を無数の閃光が覆(オオイ)い被(カブ)さる。


暫くして、野村伍長の身体は再生され『野村AI兵』に変身した。

野村AI兵が眼をさます。

佐々木AI兵が、


 「気が付いたか・・・」

 「あッ! は、はい。・・・自分はどうしたんですか?」

 「うん? 生き返った。・・・もう死なない」


野村AI兵は驚いて、


 「エッ! 生き返った? ジブンは死んだのですか?」


佐々木AI兵が頷(ウナズ)く。

野村AI兵は諦めた様にため息まじりで、


 「・・・そうですか。死んだのですか・・・」


野村AI兵は気を取り直し、近くに落ちた『鉄帽』を被る。

極楽蝶(ドローン)の黄色い眼から、青白い閃光が鉄帽を包み、上空に上がって行く、



 「よし、戻ろう。皆んなが待っている」


野村AI兵は淋しそうに。


 「え? 皆んなが・・・。はい」


佐々木AI兵と野村AI兵は走って部隊に戻って行く。


二基のAI兵の傍に砲弾が着弾する。

平然と走り去る佐々木AI兵と野村AI兵。


 戦闘が終わり、兵士達が息絶え絶えにジャングルの中を避難して来る。

砲撃はまだ続いている。


 暫くして、砲撃が止む。

茂みからそっと顔を出す早坂と木原少尉。

静まり返るジャングル。

月明かりの中、硝煙が漂う。

兵士達の鉄帽が所々に見える。

早坂が小声で、


 「おい、皆んな集まれ」


木原少尉も声を繋ぐ。 


 「集まれ・・・」


散開した兵士達が小声で声を繋いで行く。


 「集合・・・集まれ・・・。集合・・・シュウゴー」


早坂の周りに木原少尉と兵士達が身体(ミ)を低くして集まって来る。

兵士達の軍装は爆裂の凄(スサ)まじさでボロボロである。 

早坂が、


 「各自、隣の兵を確認しろ!」

 「はい!」

 「全員居るか?」

 「ハイ、居(オ)ります」


早坂は驚いて


 「何? 全員居(オ)る?・・・佐々木は?」

 「はい! 此処に居ます」


佐々木AI兵の軍装は上陸当時と変わってない。

早坂は驚いて、


 「 オマエ、まだ生きているのか?」

 「死にません!」

 「死にませんて、そんな~・・・」


木原少尉は不思議そうな顔で佐々木AI兵を見詰め、


 「キサマは何者だ」


佐々木AI兵は黙って居る。

早坂が、


 「で、野村はどうした!」

 「はい! ここに居ります!」

 「居(オ)る?」


野村AI兵は上陸当初の軍装で綺麗な鉄帽を被っている。

早坂は気持ち悪そうに野村AI兵を見て、


 「オマエ・・・」


野村AI兵が、


 「はい。生き返りました」

 「生き返った?」

 「もう、死にません」

 「もう、死なない? そんなバカな・・・」


早坂は集まったボロボロの軍装の残兵達を見る。

山本AI兵の軍装も汚れてない。


 「おい、山本。キサマあの時、腹を撃たれたな」

 「ハイ! でも、大丈夫であります」

 「大丈夫であります? いや、オマエはあの時、絶対にヤラレタはずだ!」

 「でも、・・・生きているんです」

 「どう云う事か! 説明しろ」

 「説明出来ません! ただ・・・」

 「ただ、何だッ!」

 「ハイ!・・・ 生き返りましたッ!」


木原少尉は二人を見て、


 「そんなバカな」


早坂はもう一度、佐々木AI兵達の顔を見て、


 「佐々木、・・・やっぱりキサマ等は化け物だ!」

 「化け物じゃありません。死ねないのです」


木原少尉は不気味そうに佐々木AI兵を見て、


 「死ねない? ナンダ? それは」

 「私達は幽霊に変わりました」

 「ユウレイに変わった?」

 「たぶん早坂中隊の兵士達には『仏の盾』が憑いているのでしょう」

 「ホトケのタテ?」

 「亡くなった戦友達の『魂』です」


木原少尉は怪訝な顔で佐々木AI兵と生き返ったAI兵達を見る。

木原少尉が、


 「俺達は守られてるとでも云う事か?」

 「違います」

 「違う?」


佐々木AI兵が訥々と喋り始める。


 『兵隊達は目的を完遂する為にこの島に送り込まれたのです。上陸して敵も見ず、戦いもせず銃弾や砲弾に倒れるなんて不条理じゃないですか。そんな絶望を求めて兵隊に成ったのでは有りません。我々は何の為に生れて来たのですか。たとえ戦争に反対しても、現実は戦時下に生み落とされたんです。これは宿命です。宿命で生み落とされたなら祖国の為に戦果を上げ、命令を完遂する事は兵隊としての義務であります。死しても七度生き返って朝敵を討つ! その気概を持たなくては戦に勝てません。国に残した家族に申し訳が立たないのであります』


早坂は腕組をして怪訝な顔で佐々木AI兵の話を聞いている。

そして怒った様に、


 「キサマッ!・・・キサマは佐々木准尉かッ!」


佐々木AI兵は微動だにせず、


 「私は・・・。私は佐々木 誠でありますッ!」


佐々木AI兵が姿勢を正(タダ)し、怒鳴(ドナ)る。


早坂と木原少尉は、軍装の整ったAI兵達を信じられない表情で見詰めている。

早坂は残兵達を見回し、


 「おいッ! ・・・この中で幽霊(AI兵)でない者は挙手をしろ」


ボロボロの残兵達十七名が手を挙げる。


 「これだけか。残りは皆、幽霊(AI兵)だと云うのだな・・・」


早坂は残りの七基のAI兵を見て、


 「俺はキサマ達を対等に扱っても良いものか・・・」


佐々木AI兵が、


 『残った兵隊達もおそらく再生して行くでしょう。我々は少しでも長くこの飛行場から敵の航空機を出撃させないように時間を稼ぎます。もし、この中隊の誰かが、生きて故国に帰れたら、我々が如何(イカ)に、このガダルカナル島で戦ったかを家族に伝えて下さい』


早坂は佐々木AI兵をジッと見て、


 「・・・我々はもう、キサマ達の様な神仏の力を借りなければ勝てないと云う事か」


早坂の眼から涙が滲み出て来る。

そして何かを決断した様に唇を噛みしめて、


 「よしッ! 頼む。キサマ(AI兵)等の力を貸してくれ」

                          続く

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