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第07話 増えるAI兵

 早坂の号令。

 

 「此処で夜営をする。各自、糧秣(リヨウマツ)を出せ」 


兵士達は背嚢を解いて、早坂の前に糧秣を並べ始める。

早坂は並べられた糧秣を見てため息を吐く。


 「・・・兵が十八でこれだけか。これからは喰う事も戦いだな」


最後に糧秣を置いた渡部二等兵が、


 「戦って死ぬか、空きっ腹で餓死するかか」


その言葉を聞いて早坂が怒る。


 「バカ者! キサマ、気合が入っておらん。前へ出ろ!」

 「はいッ!」


渡部二等兵が一歩前へでる。

早坂は渡部二等兵の頬に平手打ちで喝(カツ)を入れる。

渡部二等兵はふらつく体勢を整え、


 「すいませんッ!」

 「今日は今日、明日は明日だ! 一日一日を精一杯生き抜き、死して百鬼と変わり朝敵を討つッ!」

 「はいッ!」


兵士達の気合いの入った返事が返って来る。


 早朝の草原に三名の日本兵と二名の米兵の死体が転がっている。


一名の米兵の死体は小さな『背嚢』を背負っている。

背嚢の蓋が開き、中の食糧が散らばっている。

兵士達は藪や岩陰に隠れてジッと死体と食糧を見ている。

早坂が、


 「おい、佐々木」

 「はい!」

 「ちょとここに来い」


佐々木准尉は背を低くして早坂の傍に来る。

妙に静まりかえった草原。

早坂は横たわる敵と味方の死体を見ながら、


 「どう思う」

 「・・・罠(ワナ)かも知れませんね」


早坂は暫く考えている。

佐々木准尉が、


 「ジブンが先に行って見て来ます」

 「待て。右に三、左に三、廻せ」

 「あッ、はい!」


佐々木准尉は指で兵士達に合図する。

六名の兵士が右と左に匍匐で配置に着く。

佐々木准尉は背を低くして死体に向かう。


死体から五メーターほど近づいた瞬間、

一発目の爆発が起こる。


暫くして、もう一発。


早坂が驚き、


 「罠だ。地雷があるぞーッ!」


暫くして硝煙が消える。

いつの間にか上空には極楽蝶(ドローン)が乱舞している。


岡田一等兵の下半身が無い。


佐々木准尉が見える。

佐々木准尉は片足を飛ばされて、上半身だけで必死に後退している。


右側に隠れた鈴木一等兵が急いで佐々木准尉を助けに走る。


するとまた爆発が起こる。


鈴木一等兵も片手と片足が飛ばされる。


二人とも負傷して身動きが取れない。


地上の煙を見付け、米軍の偵察機が上空を旋回し始める。


早坂が叫ぶ。


 「砲撃が始まるぞ、撤収! 撤収~ッ」


兵士達は我先にと逃げる。


 佐々木、鈴木、岡田の三人は着弾の中に取り残される。



 『忠魂碑』に刻まれた名前

佐々木 誠 享年二三歳 陸軍上等兵 ガダルカナル島にて戦死

鈴木平蔵 享年二十歳 陸軍一等兵 ガダルカナル島にて戦死

岡田卓巳 享年二五歳 陸軍一等兵 ガダルカナル島にて戦死



三基の鉄帽のAI兵が佐々木准尉と鈴木一等兵、岡田一等兵の傍に立って居る。


一基のAI兵が佐々木准尉の飛ばされた足に触れる。

佐々木准尉の全身に鋭い閃光が走り、足は元通りに戻っている。


佐々木准尉は『佐々木AI兵』と変わった。


もう一基のAI兵が鈴木一等兵の体に触れた。

閃光と共に、鈴木一等兵の手と足も元通りに再生し、鈴木一等兵は『鈴木AI兵』と変わった。


最後に一基のAI兵が岡田一等兵の下半身に触れた。

岡田一等兵の下半身も閃光と共に再生され、『岡田AI兵』に変わった。


立ち上がる三基のAI兵。

三基のAI兵の軍装は全て新しいモノに変わっている。

三基は何も無かったかの様に砲弾の中に消えて行った。


 空中の極楽蝶(ドローン)の黄色い眼が三基の鉄帽を見詰める。

鉄帽が不気味な光を放っている。


数分間の砲撃が終わる。

散らばって頭を抱えている兵士達。

早坂が穴から顔を出し周囲を見回す。


 「おい、野村。大丈夫かッ!」


野村伍長が穴から顔を出す。


 「大丈夫です」

 「兵を集めろ」

 「はい。集合ッ! 集合~ッ!」


早坂の周りに集まる十四名の兵隊達(内、一基は濱田AI兵)。

早坂が叫ぶ。


 「負傷兵は居ないか」


高橋軍曹が、


 「中隊長! 岡田が居ません」

 「岡田はさっき地雷でやられたじゃないか」

 「ああ、そうでした」

 「しっかりしろッ!」

 「はい!」


兵士達の形相は空腹でヤツレ、軍装は破れて汚れている。

早坂は俯(ウツム)いて、


 「クソ~、佐々木と鈴木もやられたか・・・」


気を取り直して、


 「よし。とにかく飛行場に行こう」


兵士達は気合の入った声で、


 「はいッ!」


 野村伍長が太陽を見上げ、地図と見比べて居る。


 「・・・中隊長殿」

 「何だ」

 「変な事を言ってもよろしいですか?」

 「ヘンナコト?」


野村伍長は早坂に近付き地図を見せる。


 「あの・・・、前から変だなあと思っていたんですが。この島の太陽・・・」


早坂は夕陽を見上げる。


 「うん? あれ~・・・? あッ、そ~うか。ここは南半球だ。俺達は北に進んでるんだ。と言う事は・・・この地図はこう見るんだ」


早坂が地図を回す。

野村伍長を見て、


 「バカ者! 何故、それを早く言わないかッ!」

 「いえ、ま、はい!」

 「おい! こっちだ」


早坂は目指す方向を指差す。

また後戻りして足を急ぐ兵士達。


陽がだいぶ傾く。

前方、ジャングルの先に山が見えて来る。

野村伍長の騒ぐ声が、


 「中隊長、山です! 山が見えます」

 「よし! アレだ。あの山の下に飛行場が在る。頑張れ! もう直ぐだ」

 「はいッ!」


すると、シンガリの斎藤上等兵が早坂の傍に駆け寄り『奇妙な事』を言う。


 「中隊長殿。自分の後ろを誰かが付いて来る様な気がするんですが」

 「誰かが付いて来る? 敵か?」


早坂は立ち止り兵士達に手で散開の合図を送る。

兵士達は木陰に隠れ銃を構える。


すると三基の鉄帽のAI兵が中隊を追って来る。


早坂と兵士達は眼を疑う。


 「さッ、佐々木? 鈴木と岡田?・・・」


早坂が木陰からそっと出て来る。

気持ち悪そうに、


 「佐々木、・・・オマエ生きていたのか? キサマ等あそこでヤラレタんじゃないのか? ・・・ま、まさか・・・幽霊・・・」


佐々木AI兵と鈴木AI 兵、岡田AI兵が早坂の前まで来て挙手の敬礼をする。


 「三基のAI兵の軍装は汚れてない」。


『佐々木AI兵』が、


 「遅れてすいません」


早坂は佐々木AI兵を見詰めて、


 「遅れてすいません?」


他の兵士達も呆気に取られて三基のAI兵を見詰めている。

野村伍長が三基の足を見る。


 「足は有るな。オマエ等・・・生きているのか?」


三基が、


 「この通り。元気です」


早坂が、


 「そんなバカな。俺はハッキリと見たぞ。あの時、オマエ達は手や足を地雷で飛ばされた筈だ」


早坂は『佐々木AI兵・鈴木AI兵・岡田AI兵の三基』の全身を舐めるように見る。


 「・・・どうなってるんだ?」


佐々木AI兵が、


 「くっ付いてしまいました」


早坂が、


 「クッ、クッツイタ!? バカ言ってるんじゃない! キサマ等は幽霊だ」


佐々木AI兵が、


 「そうかも知れません。死にません! いや、死ねません」


早坂は気持ち悪そうに、


 「死ネナイ??・・・?」

                          続く

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