最終話 遠ざかる餓島残兵回収艦隊
暫くすると島に近づく警戒駆逐艦の拡声器から声が、
『コノフネハ『日本ノ船』デアル。 誰カ居ルカ。乗リ遅レタ者ハ居ナイカ。三日後ニ、モウ一度エスペランサ岬ニ、迎エニ来ル』
『コノフ船ハ、日本ノ船デアル。三日後ニモウ一度エスペランサ岬ニ迎エニ来ル。安心シテ出テ来イ。兵ヲ救出ニ来ル』
『 三日後ニモウ一度、エスペランサ岬ニ、日本ノ船ガ迎エニ来ル』
一木支隊三上が、拡声器からの「その声」を聞いた途端に叫ぶ。
「 お~い! 迎えに来たぞ~! お~い。ここに居るぞ~! 出て来~い。皆んな出て来~い・・・」
すると船に向かって砂浜を走って追いかけて来る、数十基のAI兵達が観える。
艦上の三上上等兵が指をさして隣りに立つ水兵に叫ぶ。
「おい! あそこに残兵達が追いかけて来る。アレ、アレが見えるだろう。あそこだ。あそこに見える。あそこに居る・・・」
「? 何も見えないじゃないか。 誰も追いかけて来ないぞ」
三上上等兵は必死に指をさして、
「オマエにはあれが見えんのか。まだあんなに残ってるじゃないか」
水兵が目を凝らす。
そして胸の双眼鏡を覗く。
と、突然、驚いた様に、
「・・・あッ! アレは・・・鉄帽だ! 鉄帽だけがあんなに沢山追いかけて来る・・・」
「なッ、見えるだろう。ほら、あそこにも! あそこにも! おい・・・お~い・・・川村~、成田~、柴田~、平山~、工藤、野村~・・・」
三上上等兵が手摺を拳で叩き、号泣しながら必死に叫ぶ。
「お~~い。迎えに来るからな~、必ず・・・必ず来るからな」
三上上等兵は汚れた手拭いで泪を拭きながら、あの時上陸した『あの砂浜』を見詰めている。
砂浜の椰子の木陰に隠れている原住民の見張りが、米軍に無線機で連絡を取っている。
「A Japanese destroyer is approaching east coast !(日本の駆逐艦が東海岸に近付いて来る)」
米軍の応答が無い。
ヘンダーソン基地内の米軍キャンプでは通信兵が無線を受信して急いで上官に報告に行く。
「A Japanese destroyer is approaching east coast !(日本の駆逐艦が東海岸に接近しているそうです)」
「How many ships are seen from there ?(何隻だ)」
「One boat sir. They have come to help the soldiers who stayed.(一隻です。日本兵を救助に来ている様です)」
「Rescue?・・・ I'm made the thing which wasn't heard . Stop departure and arrival of an airplane.(救助ッ? ・・・すべての航空機に伝えろ。駆逐艦が居なくなるまで待機するように)」
通信兵は怪訝な顔で答える。
「Stand by ?・・・Yes sir !(待機?・・・分かりました。待機させます)」
次の残兵回収日を知らせに回る一隻の警戒駆逐艦。
拡声器からは艦長の涙の声。
『皆、よく戦った。戻ったらこの武運は必ず上申する。これで、この艦は島から離れる。三日後に必ず、もう一度エスペランサ岬に迎えに来る。・・・ガダルカナルの英霊を讃える・・・』
艦上の沢山の残兵(負傷兵を含む)達と水兵達が不動の姿勢でガダルカナル島に向かって『挙手の敬礼』をする。
総ての艦上の兵士達が「号泣」している。
三上上等兵が砂浜に向かって有りっ丈の声で叫ぶ。
「お~い、死ぬんでないぞ~・・・希望岬に来いよ〜。必ず迎えに来るからな~~~・・・」
全速力で帰路につく回収艦。
遠ざかる全艦隊。
静まり返った『鉄帽のAI兵』の島、ガダルカナル島。
数百人の傷病兵が残された敗残兵の島、『ガダルカナル島(飢えと戦った島)』
未だにソロモン諸島ガダルカナル島を通過する日本の船は、夜間の砂浜に沢山の故日本兵の『魂(AI兵)』を見ると言う。
※七度人として生まれ変わり、朝敵を誅して国(天皇)に報いん。(七生報国)
終わり
「戦後81年 未だ還らぬ英霊達に」
「南無妙法蓮華経 南無妙法蓮華経」
日本第二国歌「海行かば」
海行かば ( If I go away to the sea, )
水浮く屍 (I shall be a corpse washed up, )
山行かば (If I go away to the mountain, )
草生す屍 (I shall be a corpse in the grass,)
大君の辺にこそ死なめ (But if I die for the Emperor, )
かえりみはせじ (It will not be a regret. )
大伴家持(万葉集)
この作品をソロモン諸島に散った数万の英霊達に捧ぐ。
尚、『ガダルカナル戦線』で生き残った兵士達は「転進」と称し、この直後、『東部ニューギニア戦線』に投入される。
生還者は数少なく、戦後81年経った今、これ等の島で日本兵が如何に戦い、生き残ったかを語る者は少ない。
この作品は、2014年(平成26年)の執筆になります。
最終編集日 2026年(令和08年08月15日)
尚、この作品は 『東部ニューギニア戦線(壊れた兵隊・従軍看護婦の私記)』に続きます。
お読み頂ければ幸いです。
この作品は、著作権を放棄したものではありません。
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