第一話「未知の足音」
「ここは……?」
目が覚めると見たこともない場所にいた。
何がどうなっている?
記憶を辿る。
今日の私のコンディションが絶好調だったのは、ハッキリと覚えている。
そして、別に車やトラックが突っ込んできても構わん、などと思っていたら本当にトラックが突っ込んできたのだ。
そこまでの記憶しかない。
バカな、最高のコンディションだった私の筋肉がトラックごときに遅れをとったというのか?
にわかには信じられなかった。
以前、トラックを引っ張ったときは容易だったというのに。
(自信亡くすな……)
少し落ち込んだ。
となると、ここは一体何処なんだ?
病院でも霊安室でもない、ということは筋肉天国か?
恐らく筋肉の神に導かれたのだろう。
(まあ、そうなるよな)
そこは、祠のような場所であり天井が高かったが、上から少し光が差し込んでいた。
そして、冷えた空気が澄み渡っていて、水の音が静かに響きわたる神秘的な雰囲気を帯びている。
「とりあえず、筋肉の神に謁見をしなければならないな」
男は祠の中央から出口へ向かう。
!?
「なっ……なっ……ひっ、ひぇ〜〜〜」
祠のすぐ外にいた貧相な男が、大変驚いた様子で薄暗い通路を駆け出して行った。
「?」
事情は分からないが、とりあえず男が走って行った方へ歩いていく。
♢♢♢
バタンッ!!
ビクッ!!
玉座に鎮座する人物、その隣の老人、文官、兵士たち、まるでJRPGに出てくるような広間。
突然、隅にある地下への扉が大きな音を立てて開いたので、広間にいた全員が驚いた。
「た、た、大変です。ほ、ほこらに人が……勇者様が現れました!!」
!!!
勇者。
この国に何世代も前から伝わる伝説の存在。
この国が窮地に陥った際に、祠より現れる異世界の者。
この国の者は皆、子供の頃から聞かされているおとぎ話に出てくる人。
「なんと、それは誠か!?」
立派な髭を蓄えた玉座の人物が質問する。
「まさか、あの話が本当だったとでもいうのか」
隣の神経質そうな老人が驚愕する。
「おい、嘘だろ。あれっておとぎ話じゃなかったのか?」
広間の兵士たちがざわつきだす。
「お、おそらくは。祠から人が出てくるなんて、それ以外に考えられません」
動揺を抑えようとしながら、貧相な男は回答する。
「ふむ、それは確かめて見れば分かるだろう」
玉座の人物が一番冷静だった。
ヒタ、ヒタ、ヒタ。
皆が好奇心に満ちた視線を向ける先から、未知の足音だけが近づいてくる。
ギィィ……。
ビクッ!!
突然、193cm 89kg タンクトップ、短パン、ランニングシューズという異様な姿の大男が現れたので、大広間にいた全員は再び驚いた。
ここで双方が選択したのは沈黙。
この場面、このタイミング、恐らくはこれが最適解。
暫くこう着状態が続いた。
「お、おお、異世界の勇者殿、よくぞ参られた!」
沈黙を破ったのは、玉座の人物。
他の者とは、胆力が違うようだ。
(勇者殿?私のことだろうか)
「あ、ああ……、見るからに強そうだ!これが異世界の勇者様か!」
他の者たちも勇気を振り絞り後に続くが、動揺と期待が入り乱れている。
(異世界?勇者?一体何の話をしているのだろう)
「私には何の話か分からない。ここは一体どこなのだ?」
「ああ、勇者殿は事情をご存じないのですね。それでは説明いたしましょう。どうぞ、こちらへお越しください。」
ひとまず、テンプレートな説明スタイルとして玉座の前に来てもらい、事情を説明する。
「なんと、ここは筋肉天国ではないのか!」
(どうりで、優れた筋肉を見かけない訳だ)
(異世界や勇者というのはよく分からないが、ここの者たちは私に助けを求めている。
ああ、なんということだ。
これは、トラックごときに遅れをとってしまった私に対する罰に違いない。
ならば、この試練、なんとしても筋肉で解決せねばなるまい。
筋肉の敗北は筋肉で返す!)
「筋肉天国って何だ?」
「分からん。勇者様の世界の話だろう」
「まさか、勇者様は全ての世界を自由に行き来できるとでも言うのか?」
「この方がいれば、中級国家いや上級国家が相手でも敵ではないだろう」
皆、好奇心が抑えられない様子だった。
「そういう事ならば仕方あるまい。この国に力に貸すとしよう」
「「「おおー!!!」」」
安堵と期待が1ミリもズレることなく、綺麗に重なり、膨らんでいく。
「挨拶が遅れました。私はこの小国ぺシミールの王、ガルド・フォンブル・ぺシミールと申します。勇者殿のお名前をお伺いしてもよろしいでしょうか?」
「私の名前は、ベルナルド・マクシミリアンだ!よろしく頼む!」
本名、針金道行。
日本人。
35歳。独身。
193cm 89kg 体脂肪率8%。(ベストコンディション!!)
握力120kg。
ベンチプレス 240kg。
デッドリフト 350kg。
元パーソナルトレーナーである。
前提として、この作品で繰り広げられるものは喜劇となります。
ナレーションの部分は、ですます口調とである口調が入り混じっていますが、それぞれ女性と男性のナレーションで脳内変換してもらえることを想定しています。
分かりにくかったらごめんなさい。
Web小説ならではの1話ごとの体験や、入りと引きを意識しました。
ユニークな味わいや喉越しを感じてもらえたら嬉しいです。
文章ならではの面白さというものを考慮し、読んでいて平坦にならないようにしているつもりです。
読みにくかったらごめんなさい。
グローバルに通用するユーモアというのも考えながら書いているので、思わず笑ってしまったり続きが読みたくなったり、表現の面白さや個性を感じてもらえたり、読み返しても面白いと感じてもらえたら嬉しいです。
そして、コミック化や映像化で表現を拡張可能な作品になっていれば、更に嬉しいです。
設定に関しては、細かいところは気にせず読んでもらえることを希望しますが、色んな意味でツッコミ歓迎です!
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