009⚫️下町サブマリン
「って言っても、海中の潜水艦にどうして近づいたらいいんだ?」
オレはボートに乗る前に独りごちた。
「やり方はあります。ま、わたしに任せて置いてください。」
ジンは軽やかに言う。相変わらず、笑顔が爽やかなヤツだ。
町工場で建造された潜水艦。キャッチフレーズは’下町サブマリン’。
現役を退いた連中が、’夢とロマンと冒険を!’
とクラウド・ファンディングで集めた膨大な資金で造り出された。
設計者は、その道で名高い小鳥遊信玄。だれも’タカナシ’とは読めないがな。
加えて、実際の組立は、これもニッチな技術で有名なワタヌキ工業所。
小さい企業だが、確かな腕前で有名だった引退した先代、
四月一日源蔵が心血を注いだらしい。
だれも’ワタヌキ’とは言わず、
エイプリル・フールさん、略称エイプルさんと呼んでいるらしいが。
そして実際の航行を指揮するのが、スゴイ!
潜水艦部隊で40年以上勤め上げた、’魔海のシャチ’こと、文殊五郎独歩!
成果や功績を他人に譲ってばかりしなければ、
参謀総長就任者の最年少記録保持者になっていたはず、という、伝説の名艦長だ。
だれも’モンジュゴロウ’が姓だと思わず、五郎さんと周囲は話しかけている。
そんな彼らが、同年代の’夢見る仲間’と建造した、’サブマリン808’。
進水式のあと、そのあまりの性能の高さに気がついた裏社会が、
乗っ取りを計画しているのだ。
様々な公的機関が跡を追って、安全確保をしようとしている。
だが、どこに潜ったものやら、さっぱりわからない。
巡り巡って、オレたちも動員されてしまった。
出港から一週間。
地球を何周もできる航行能力に加えて、たっぷり食糧を積んでいる。
浮かれたジイさんたち、どこまで行ったのか。
ジン、やっぱり無理なんじゃないかあ?




