046⚫️’生きる力’
「先生、すみません。’生きる力’をなくしました。」
昨日、学級開きで教科書も配布したばかりだ。
新任のオレが中2の学級担任って、校長先生、ほんとにいいのか?
と、危惧していたら、早速、生徒がひとり、終礼後に教卓までやってきた。
うーん、これはタイヘンだ!
「そうか・・・。辛いことがあるもんな。先生はまだ新米だが、君と年齢が近い分、何か力になれるかもしれん。よく言いに来てくれた。ありがとう。で、どうしたんだ?」
やさしく問いかけると、彼はにこやかに言った。
「はい、なので’生きる力’、くれませんか?ムリを言ってすみません。」
こいつ・・・このオレを頼って、生きる力をくれ、というのか・・・。
そこまで、初対面といっていいオレを頼ってくれるのか?
よし!なんでもやってやる!
酒!・・・はイカンな、14歳にもなっていないぞ!
夜遊びや、綺麗なお姉さんたちのところへ・・・イカン、もっとイカン!
うーん、そうだ!アミューズメントだあ!
明日はマリンパークのフェスティバル!
連れて行こう!潜水艦が一番人気!
海風にあたって大海原に漕ぎ出せば、きっと気持ちも晴れる!
いいぞ、オレ!サイコーのアイデアじゃないか!
先生?あれっ?
あの、’生きる力’って、
昨日、配布してもらった、道徳の教材本のタイトルなんですけど・・・。
まだ、この市独自の配布物、わかんないんだろうなあ・・・。




