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『シンデレラの足跡:ガラスの靴を履き潰すほどの努力で、私は世界の中心へ』   作者: たい丸


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第十六章:午前三時の熱線

合宿五日目、運命の選別が行われる朝まで、残り数時間。  二十人に絞られるという非情な「振るい」を前に、合宿所の個室では多くの候補者が不安に押しつぶされ、眠れぬ夜を過ごしていた。

 午前三時。静まり返った合宿所の中で、ただ一箇所、地下の練習室だけが青白い光を放っていた。

 そこには、レオタード姿で一心不乱にステップを踏み続ける陽葵ひまりの姿があった。  鏡のない壁に向かい、自らの影だけを追いかけるその動きは、もはやダンスというより、何かに取り憑かれた儀式のようだった。空腹と疲労で膝は震え、荒い吐息が冷たい空気の中で真っ白に弾ける。

 その様子は、赤外線カメラを通じて全世界に生配信されていた。


深夜の【Re:BURN】公式実況掲示板

810:名無しのプロデューサー ……おい、陽葵がまだ踊ってる。三時だぞ。

815:寝落ち寸前のリスナー さっきまで寝落ちしかけてたけど、画面の中の音が凄くて目が覚めた。この子、一時間以上ずっと同じフレーズを繰り返してないか?

820:ダンス経験者 ステップの音が正確すぎて怖い。普通、この時間なら集中力が切れて足がもつれるはずだ。彼女を支えてるのは、技術じゃなくて文字通りの「執念」だな。

825:深夜のファン ボロボロのマフラータオルを床に置いて、それを踏まないように踊ってる……。あのアミュレット(お守り)が彼女の限界を押し上げてるみたいだ。


 陽葵の順位は、二十二位という当落線上で停滞していた。  だが、この深夜の光景がSNSで拡散され、「#午前三時の陽葵」というハッシュタグがトレンドを駆け上がり始めると、潮目が変わった。

「……あと一回。あと一回、昨日までの自分を超えれば……」

 陽葵は呟き、崩れそうになる体に鞭を打った。  彼女には見えていなかったが、モニターの中の投票カウンターは、深夜にもかかわらず爆発的な勢いで回り始めていた。

二十二位、二十一位、二十位――。

 夜明けの光が練習室の小さな窓から差し込む頃、ひびきはモニター室で、最後まで動きを止めなかった少女の姿を静かに見つめていた。

「死線の上で踊り続けるシンデレラ。……魔法の解ける朝に、あなたは何を掴むのかしら」

 午前七時。ついに、三十人を奈落へ突き落とす運命のゴングが鳴らされようとしていた。


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