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コン!なのでました  作者: リノキ ユキガヒ
Route:14「こんなのでました」
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69/69

こんなのでました。④

「高くつくわよ」

 おケイと呼ばれたBMW・Z3のドライバーはそう呟くとスルスルと後方へと下がって行った。

 二台の猛スピードで走るバイクとは逆にまるで一般車を遮る様にZ3は車線を無視してど真ん中をチンタラと走行する。当然後続の車両からはクラクションの嵐だ。

「ハッハー!盛り上がって来たー!!」

 ヨシの12Rは高らかに排気音を響かせる。新宿のビルの谷間にそれが反響すると、招かれざる客がクラクションの嵐からサイレンを鳴らしながら現れた。

 白と黒の緊急車両。良からぬ連中の隠語で『パンダ』と呼ばれるそれは。

「前方を走行するオープンカー!進路妨害だ!!直ちに車両を左端に寄せ…」

 しかし、その招かねざる客は拡声器越しではあるが明らかに動揺した様子を見せる。

 おケイはその動揺を感じ取ると挑発するようにワザと後ろを振り向いた。

 白黒の緊急車両に乗車する二名の乗員はおケイの容姿に気付くとその度合いを更に深めた。

「き、きみ!危ないから事故を起こす前に自動車を止めなさい!」

 まるで女児がオモチャで悪戯をするのをたしなめるような口調。それは当然の様におケイのカンに触った。

「ふん。人間風情が私をあやそうとするなんて千年早いわよ!」

 彼女は運転席でそう叫ぶと何かをシート脇から取り出した。おケイはそれで夜空を指す。鈍い黒い光沢を放つそれは、彼女手に余る大きさではあるが何か王者めいた品格を表し始めた。

 パンパンパンと乾いた破裂音が辺りに響き渡ると白黒の緊急車両は一瞬だがギクシャクとその車体を震わせた。

「おーほっほっほ!流石軍用銃の王様。モーゼルC96。空に向けて撃つだけでご覧の有り様」

「き、貴様―ッ!」

「おい、こりゃ応援要請だ!前を走るバイク二台とオープンカーの女は只者じゃないぞ」

 ステアリングを握る乗務員は助手席で冷静さを失いつつある相棒にそう告げた。

「お、おう」

 彼はその一言で我に帰ると無線機のマイクを握った。

「至急至急。只今代々木にて外国製オープンカーに乗る女が大型の拳銃を乱射しながら明治通りを二台の暴走バイクと共に渋谷方面に向け逃走中。応援を乞う」

 追跡の手が不自然に緩んだ事をサクラは敏感に察知した。

「ヨシ!彼ら応援呼んでるわよ!」

「そう来なくっちゃ」

「何言ってるの細い明治通りよ、道を封鎖されたらお終いよ」

「都内の連中にそんな装備はねーよ」

「ったく、アンタはいつもそう。何にも考えてないんだから」

「ポジティブシンキングと言って欲しいね」

 二台のバイクと一台のオープンカーは明治通りを縫うように爆走していたが、それに聞き耳を立てる怪しげな外国人がその先には潜んでいた。


「こちら、追跡車。当該車両はなおも明治通りを暴走中、間もなく渋谷を抜けて恵比寿へ!白金辺りイチコクに入られたら追跡は困難になるぞ!それまでに何とか封鎖してくれ!」


「相変わらず日本の暗号管理はザルですねー」

 そう言うと無線の音声に耳を傾けていたブロンドの女性はニタリと口元を歪めて、自身のバイクの始動ペダルに足を掛けた。

 明治通りに面する路地からサイレンの音が聞こえてくると彼女はゆるゆるとマシンを走らせ明治通りへと合流した。

 そしてミラーで後方を伺うといくつかの光点と赤い回転灯の瞬きが目に入った。

「It‘s show time!」

 そう叫ぶと鉄馬にフルスロットルの鞭を入れた!

「アン?」

 ヨシが前方に見える腰の低いバイクを捉えた。

「あのバイクまさか…」

 サクラの問いかけに。

「あのアメリカ人のハーレーね」

 と、おケイが少しウンザリした口調で言い放った。

「おーしこれでメンツは揃ったな!」

「ハーイ♪おケイちゃーん会いたかったデスヨー」

「相変わらず御転婆ね」

「そういうおケイちゃんも」

「ふん」

 おケイは鼻から息を抜くと運転席から起ちあがった。

「こんな程度で御転婆呼ばわりされるのは心外ですわ」

 そう言うとそのまま振り向いた。Z3はおケイの妖力で自ら意思を持つように走り続ける。

「さぁニンゲンさん。これでトドメです」

 そう言うとおケイは夜空を仰いだ。彼女の頭上に一本の鉄パイプみたいなものが浮かび上がる。

 それは徐々に姿を露にするとおケイの両腕に収まった。

「おい、マジかよ」

 白黒の緊急車両の二人は自分達の血の気が引くのがわかった。助手席の彼は思わず腰にある拳銃に手を掛けたがそれでとても制圧できる気はしなかった。

 彼女の手にあるものそれはかつて

「総統閣下の電気鋸」

 と恐れられたものだった!

 

 

「火を吹く機関銃MG34の銃弾は瞬く間にパトカーを蜂の巣にしたのでーありました!

 意気揚々と薬莢を路面にブチ撒けながら駆け抜けていく二人の人間と二匹の妖。

 銃弾をしこたま撃ち込まれたパトカーは?と言いますと、これが摩訶不思議な事にどこをどうみても銃弾はおろか。弾痕一発すら車両には無かったのであります。

 二人の警察官は思わず顔を見合わせます。

「おい、どういうことだ?」

 一人の警察官が相方の方を見ると

「どうも、こうも」

 と、要領の得ない答えが帰って来ただけでありました。

 二人の警察官は無傷のパトカーの前に呆然と立ち尽くすと、夜空を思わず見上げるのでありました。

 その表情。正に狐につままれた。狸に化かされたと言わんばかりでーあります。

 さてさて、二人の人間と、二匹の妖は無事にお江戸の捜査網を切り抜ける事ができたのでしょーか?

 それは次回の講釈で…」

 


 講談はヨシでぇーございました!

 それでは皆さんまたどこかで!!

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