⑤
「じゃぁ帰るね。お姉ちゃん」
ツナギの彼女はそう言うと軽トラに乗り込んだ。
「おぅ、ありがとな」
ヨシは軽くそう言うと手を振った。
「妹さん。ありがと」
サクラもそれに合わせた。
ツナギの彼女を乗せた軽トラは軽やかなエンジン音を響かせて製麺工場の駐車場を去って行った。
「さて…と。私達も行きますか」
ヨシは軽く背伸びをするとサクラの方を向いた。
「行くってどこによ」
ヨシの背後から刺すような口調でおケイがヨシに問いかける。
「あぁ?どこでもいいでしょ」
ぶっきらぼうに言い返すヨシ。
「まさか、あなた達夜通し走るつもりじゃないでしょうね」
「なにかいけねーの」
「別に私達は大丈夫よ。仮眠程度ならその辺の公園のベンチで間に合うし」
「公園のベンチィ!?」
夜空におケイの叫び声が響く。
「もう少し女性である事を自覚しなさい」
おケイはそういうと軽くため息を吐いた。
「塚本。この二人を今晩、四国の別荘に案内しなさい」
「かしこまりました」
彼はそう言うとサクラとヨシに近づいてきた。
「それでは、お手数ですが私が運転するZ3のあとから付いて来てください。ご案内いたします」
塚本はそう言うとクルリと二人に背を向けた。
「どーするよ」
ヨシはサクラの顔を見る。
「まぁ、急ぐ旅でもないし」
彼女は言葉を濁らせた。
「ま、来いって言ってるんだから行きゃいいんだよ」
「あなた、少しは遠慮って言葉覚えなさい」
おケイはヨシにそう言い放つとZ3の助手席のドアを開けた。
「じぁ、お世話になろうかしら?」
サクラはそう言うとニンジャに跨りヘルメットを被った。
「キツネと違って賢明ね。塚本出して」
おケイの言葉を合図にZ3はスルスルと動き出した。そのあとを追うサクラとヨシを乗せたバイク。
リアシートのアイツのホッペは膨れていた。
月明かりに照らされてZ3とGPZ900Rのランデブーは続く。
そして曲がりくねった山道を進んでいくと見事な御殿が二人の目に入った。
「変わり映えのしねー景色だな」
ヨシは独り呟いた。誰に向けてでもなく放たれたその言葉。聞いたサクラはバックミラーに僅かながら写るヨシの様子を伺った。
彼女にしては珍しく憂いを帯びた表情をしていたのが少し気掛かりだった。
やがて玄関と、いうか正面口と言った方がしっくりくる所にZ3は停止した。
すると正面口のような玄関からメイド姿の女性達が五、六人ほど小走りに出てきてZ3と平行になるように整列した。
塚本は颯爽と運転席から降りると助手席のドアを開けた。
おケイの足がZ3のフロアから地面に付いた瞬間にメイドたちは一同に最敬礼で頭を垂れた。
「急で悪いけどよろしく」
おケイはそう言うと玄関の方へと歩き始めた。
勿論、メイドが一人玄関のドアを開けて彼女を待っている。
「ほほー。おケイちゃんってもの凄いお嬢様なのね」
サクラはバイクから降りながら周りの様子を見ながら言った。
「ま、昔から金だけは持ってんだよ」
ヨシは吐き捨てるように言うとヒョイとバイクのリアシートから降りた。
「あなた、何か知ってそうね」
サクラは屋敷を見上げるヨシの横顔を見ながら質問を飛ばす。
「まぁ、永い事神様やってると色々あんのよ」
ヨシは溜息混じりにそう呟いた。




