①
で、さっきのAMGにのってたフリフリなのがタヌキなわけね」
「そう」
行きすがらのガソリンスタンドでサクラは給油をしながらヨシに問うた。
「まー、あんた達がどういういきさつでそうなったかは知る気もないけど、戦闘機で追っかけ回すなんてそうとうなもんね」
「そういう事にしといてくれる」
「ふうん」
正直ヨシの含みを持たせた言い方が少し気になったが、サクラは短く返事をするとバイクにまたがった。
「ねぇねぇ、四国に行こうよ」
ヨシがリアシートからソワソワした感じで問いかける。
「四国ねぇ…」
サクラはそう呟きながらエンジンを起動させた。ズオンという音と共に鋼鉄の忍者は息を吹き返した。
フルタンク。満タンになった燃料タンク、どことなく機嫌よくエンジンも回ってるような感じがする。
「ここが関西であることは間違いないないけど…」
サクラの独り言のような呟きと共にバイク・ニンジャはガソリンスタンドを後にした。
彼女はとりあえずバイクを走らせた。四国に向かうというのはうすらぼんやり決めていたのだが、そこに至るルートをどうするか思いあぐねていた。
「う~ん。風が気持ちいいね~」
リアシートのアイツが午前中のまだ朝の清々しさ残る空気を満喫していた。実はサクラも
そう思っていた。
ヘビーチューンをしているから常に限界ギリギリのライディングをしなければいけないということはない。のんびり、まったり走ってもなんら問題はない。いや、むしろそういう雰囲気を楽しめるかどうかも重要な要素だ。
バイクを乗るにあたって乗車ポジションも重要な要素になりうる。いくら早くてもポジションが辛ければそれは拷問に他ならない。
サクラとヨシを乗せたバイクは軽快に道路を走り抜けていく。
バーハンドルのおかげで前傾姿勢は意識しない限りはそういうふうにはならない。ライダーの体はほぼ直立でバイクを楽に転がせる。
こういう場合のライディングポジションは実に気持ちがいい。
それと、エアマネジメントを司るカウル。独特な形状をしているがニンジャのアッパーカウルはライダーへの走行風を十分和らげてくれる。
これはなにも高速走行時だけのものではない。
疲労の主な原因となる走行風は通常の速度域でも十分体力を奪っていく。
サクラ達を乗せたバイクは時に海岸線を。時に稜線を軽やかに駆け抜けていく。
ヘビーチューンのニンジャでもこういうツーリングシーンは様になる。
フューエルゲージが三分の一位減った所でとりあえず一服をいれた。どちら共、特に言いだすわけもなく。
サクラは適当な路肩にバイクを停めた。
防波堤があり丁度海を見渡せる気持ちのいい所だった。
「よっと」
ヨシは一足先にシートから降りていた。
「ん~」
彼女は背伸びをして凝り固まった身体をほぐしている。
サクラは脱いだシンプソンのヘルメットをニンジャのミラーに引っ掛けるとヨシの方へと寄っていった。
眼前に広がるのは太平洋。青く広く拡がる海原はこれからのツーリングに何かおこる予感がしてならない。
それが果たして楽しい事かどうかは別にして。
「で、どうよ」
ヨシが唐突にサクラに話しかけた。
「どうってなにが?」
「氏神様とのツーリング」
「ふうん」
サクラは一旦ヨシの目を見ると再び海原に視線を戻した。
「やだ、なにか考えちゃってる系?」
ヨシが珍しく不安気な様子を見せる。
「ちがうわよ」
「そっ。それならいいけど」
「その自信はどこからくるの?」
「ん?だって私神様だよ。神様が自信持ってなくてどうするのよ」
「ハハハ。確かに」
サクラは満面の笑みで笑い飛ばしすと「さ、ボチボチいこうか?」と言ってバイクの方に身体を向けた。
バイク・ニンジャはそんな彼女達を迎え入れるように午後の光を弾いていた。




