(111)エルフと消失
俺がご飯の後片付けをしていると、白装束に着替えたフィリアが姿を現した。
その姿を見て、思わず目を奪われる。きっと本当は荘厳な衣装のはずなのに、大人の服を無理やり着ているため、ぶかぶかでどこか滑稽だ。袖はひたすらにまくり、裾は何度も折り返して腰のあたりでひもで縛り上げている。その姿が、どこかテレビで見たファッションショーのモデルを思い出させた。
フィリア自身も、恥ずかしそうに頬を赤らめている。
「少し大きいですが、これが今の私にはぴったりですわ」と彼女は微笑む。
もう雨が止んでいることもあって、俺たちはサンダルを履いて裏庭に向かった。
ただ、そこに広がっていたのは、台風の影響で見るも無残に形を崩した石の召喚魔法陣だった。
「フィ、フィリア……これって大丈夫なのか?」
俺の声に、フィリアは一瞬戸惑いながらも、自信ありげに頷く。
「もちろんですわ。もう形は覚えておりますし、あとは石を元あった形に組み直すだけ……」
そう言って、彼女は白い装束の裾が濡れた地面に触れないよう慎重に歩き、崩れた石に手を伸ばす。
しかし、彼女の表情がみるみる青ざめていくのに気づいた。
「ま……」
「ま……?」俺は不安を抱えながら聞き返す。
「マナが……吹き飛んでおりますわ……」
フィリアの声は震えていた。
「まさか、その台風とやらが、月と同じように強大な力を持っていて、マナそのものを風や雨と共に奪い去ってしまったのでしょうか……」
「と、ということは……?」俺は恐る恐る尋ねた。
「こ、これでは戻ることができません……もちろん月の力を借りることで魔法を発動するものの、本来必要なマナを私が持っておりません。毎日少しずつマナを石に込めて準備してきました……それが全部吹き飛んでしまったということは……また、次の満月までに……」
フィリアはその場に崩れるように座り込み、悲しげに下を向いた。茜色に染まり始めた空が、ますますその光景を切なく彩る。
俺は喉元まで出かかった「もう一カ月ここに滞在すればいいじゃないか」という言葉を、必死に飲み込んだ。
夏休みは残り一週間もない。彼女の相手をし続ける時間は取れないだろうし、ばあちゃんにも説明がつかない。それに、彼女自身が帰るべき場所に戻らなければならないと語っていた。
「残ればいい」というのは俺の勝手な願望であり、無責任な言葉だ。
何か方法はないか。俺は必死に考えた。これまでの一カ月間、彼女との日々を振り返りながら、どこかにヒントがないかと記憶を巡らせる。
そして、ふと脳裏に浮かんだ。
「ビーチで見つけた、桜貝…!」
その言葉を口にした瞬間、胸の中に希望が灯る。
「フィリア、まだ可能性はある!少し待ってて!」
俺はそう言い残し、俺は家の中へと走り出していた。この状況を打開するために――信じるべき答えを手にするために。
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